ウルトラマンゼロ サーヴァント(完結)

□File3
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─えすた、シエスタ!

「シエスタ、起きてくれ」
その声で、シエスタは目を覚ました。真っ先に目に飛び込んだのは、サイトの優しさに満ちた眼差しだった。
「サイトさん…?」
「怪我はない?」
「は…はい。大丈夫です」
シエスタは服についた砂を払いながら立ち上がった。
「サイトさん、来てくれたんですね…」
「当然だろ。飯くれたお礼でもあるんだし。さあ、一緒に帰ろう」
「はい…」
シエスタは顔が赤くなっていた。
「やっと見つけたわよこの馬鹿犬!!」
真上から、誰かの声が聞こえてきた。それに反応したサイトは空を見上げる。
「ルイズ、キュルケ!!それにタバサまで!?」
シルフィードに乗ってやって来た三人がいた。
「さあ帰るわよ。犬、後でお仕置きだから覚悟しなさい」
「はあ…」

しばらくして学院校庭に着いた。シルフィードは五人を降ろし、ル
イズたちは先に部屋に戻っていった。
「サイトさん、その…ありがとうございました。
助けられちゃいましたね…」
シエスタは赤くなりながら礼をいった。
「いいんだよ。気にしなくて」
サイトがそう言うと、シエスタはサイトに近づき、サイトの頬にに
キスした。
「しっ、シエスタ!?」
「じゃあ、おやすみなさい…」
恥ずかしそうにシエスタは使用人の寮に去っていった。
サイトはその後、ルイズから翌朝まで正座させられた。
その正座の間、思い返していた。


(『冥王』ってなんだ?それに、あの巨人は一体…?)


時間はサイトがシエスタを起こす前に遡る。
「デュア!」
「ギイ!」
ウルトラマンゼロと、アパテー。
ぴゅう…と静かな夜風を浴びて身構える二体は、じっと互いを睨んだまま動かない。
しばらくして先制をとったのはゼロだった。ゼロはラッシュパンチを繰り出す。
「ジュワ!ダアッ!」
そして空中に飛び立ち、
アパテーに炎を纏った蹴り技を食らわせた。
〈ウルトラゼロキック!〉
「オラアアア!」
「グオッ!」
アパテーは思い切り吹き飛ばされた。だがその強靭な鉄の体で耐え抜き、再び立ち上がる。新たに肩と腰に、鎧武者のような装甲を加えた。
「ジュ!」
鉄拳を放つゼロだったが、アパテーは軽々とその拳を掴み、その腕を捕まえゼロをぶん投げた。
「ウワ!」
ドスン!と音を立ててゼロは地面に激突する。
アパテーは右腕をレイピア状に研ぎ澄ませ、ゼロに切りかかろうと走ってきた。
〈ウルトラゼロランス!〉
ゼロはブレスレットを槍に変化させ、アパテーの剣を防ぐ。
その時、ギーシュとの決闘の時のようにルーンが光だした。
(武器を握ると、心地よく感じる…何でだ?身も軽くなった感じだ)
そう思ってる隙に、アパテーはゼロの胸を斬りつけた。
「グッ!」
ゼロは怯みはしたが踏ん張り、身軽で素早いやり捌きでアパテーを突き刺す。
「デュア!デヤ!ダアア!」
「ギイ!?」
悲鳴のような金属音をたててアパテーは後退りする。すると、アパテーは直立して再びドロドロに溶けだし、数本の鉄の槍となって降り注ぎ、ゼロの周りを囲んだ。
「ジュワ!」
ランスをブレスレットに戻し、アパテーの槍に攻撃してみたが、触れた瞬間バチバチ!と電撃が走り、ゼロが逆にダメージを受けてしまう。
「ウワッ!」
そしてさらに、何万ボルトもの電撃がゼロを襲う。
もし変身しなかったら、間違いなく死んでいた。

「グワアアアアッ!」
力を振り絞り、槍の一本を倒してなんとか輪の中から抜け出した。
しかし、再び身構えた瞬間、ゼロの体から急激に力が抜け、ゼロは
倒れた。
「デュ…ア!?」
ピコン、ピコン、ピコン…
ゼロのカラータイマーが点滅し始めてしまった。さっきの電撃でのダメージで、エネルギーを一気に奪われてしまったのだ。
アパテーは再び元の状態になってこちらを見る。
(く、一か八かだ!エネルギーを一気に使って決めてやる!)
ゼロは立ち上がって残り少ないエネルギーを絞り込み、L字型に両腕を組み、破壊力抜群の必殺光線を放った。
〈ワイドゼロショット!〉
「ダアッ!」
渾身の一撃がアパテーに直撃、アパテーは屋敷の瓦礫にのし掛かるように倒れた。
……………………
しばしの沈黙があった。
倒したのか?とゼロは思ったが、その予想は見事に裏切られた。
瓦礫から這い出るように、アパテーは再び立ち上がった。右手に鉄の槍を作り出し、こちらにゆっくりと近づいてくる。
「ぐ…」
今のワイドゼロショットは通常よりも使うエネルギーを使ったため、立ち上がるだけの力がなくなりかけている。膝を着くゼロに、アパテーは容赦なく槍を振り上げてきた。
ここまでか…
だが、次の瞬間…
バシュン!
「ギイ!?」
アパテーはどこからか放たれた閃光に胸を貫かれ、そのまま爆発四散した。
一体何が起こったのか?
ゼロは立ち上がって光線の発射された方を見ると、衝撃的なものを目にした。

「!?」

夜の闇の向こうに、白く輝く眼を持つ巨人が見える。
その胸には、Y字型の赤いクリスタルが埋め込まれていた。
(もう一人の、……………ウルトラマン!?)
しかも、ゼロの記憶の中でも、サイトとしての記憶の中にも見たことのない巨人だった。
そのウルトラマンは、以前タバサを化け物から救ったものと同じだった。
謎のウルトラマンはゼロに背を向け、夜の闇に消えていった。
しばらくの間、ゼロはその場に呆然と立ちすくんでいた。
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