ウルトラマンゼロ サーヴァント(完結)

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ヌゥーーーーン…
ゼロは、昭和のボクサーマンガで活躍した主人公のように、真っ白
に燃え尽きていた。
あの後、レオに通常の何倍もの重さがあるトレーニング用プロテク
ター『テクターギア』を装着され、そこからレオとマジ勝負を強い
られたため、エネルギーが違う意味で尽きかけていた。
「またサボって罰を喰らったのか?相変わらずアホな奴だ」
そこに現れたのは、宇宙警備隊大隊長と同世代のウルトラ戦士がや
って来た。
「ベリアルの、おっさんか…今話しかけんといて…」
「ったく、お前は親父と違って本物のバカだな。罰を喰らいたくな
きゃキチッと課題や修行をこなせばよかったんじゃないか」
「だってよ〜レオの奴容赦ねえんだぜ。この前骨折られたし」
ゼロは右腕をぶらぶらさせて言う。以前右腕をへし折られたようだ。
光の国の医療技術がすぐれてなかったら、全治何ヵ月になったこと
か…。
「その分お前が未熟なだけだ。もっと精進しろよ。お前はいつまで
もガキでいるわけじゃねえんだ。
俺だって、今だにケン(ウルトラの父の本名)を越えられず、あい
つの影を追ってるままだ。でも、めげたって仕方ねえから、真面目に修行してんだ。歳を食いまくった今でもな。
だからな、お前も無限の可能性に賭ければいい。お前の名前『ゼロ』
はその可能性があると信じた父親からもらったもんだ。だからセブンやレオ、警備隊のみんなの熱意に応えてみろ」
「へ〜へ〜、真面目ですこと」
ゼロは説教嫌いなものだからベリアルの話を半分くらいしか聞かなかった。
「ん?」
ゼロの真上に、ウルトラ戦士独特の暗号『ウルトラサイン』が浮か
び上がる。
「『地球圏内の警備に当たれ』…か」
「ほら、行ってこい」
「へ〜い」
ベリアルに背中を押され、ゼロは父からもらったウルトラゼロブレスレットを左腕の手首に装着、地球付近の警備に当たった。
「可能性…か。私ももっと進化したいものだな」
ベリアルは空を見上げて、一人黄昏ていた。
「えっと、ここが地球…か?」
セブンや他のウルトラ兄弟たちに言われた通りの方角を頼りに、彼
は宇宙へと飛び立ったが、
「あれ?地球って…月が二つだったか?」
妙だ。確か話では月は一個だけだったはずだ。
でもその他はちゃんと緑に覆われ、青い海が澄んで見える美しい星。
聞いていた通りの地球だ。多分…
「せっかくだ。いっちょ立ち寄ってみるか」
だか、ゼロはそのアホで単純な性格が災いとなったせいか、全く気づいてなかった。
なぜなら、その星は地球と似て非なる星なのだから。

そして今に至る。
(参ったな…多分ミスったな。ここやっぱり地球じゃなさそうだ…)
ゼロはやっと勘違いに気づいた。他のウルトラ戦士から、地球にはすでに機械文明が発展して、各国に防衛チームがパトロールしてい
て守りは固く、平和な一面が強いと聞かされていたのに、この星に
機械なんか全く見当たらなかった。
だかそこで見かけたのが怪獣バードン。人々に危害を加えるのを放っておくわけにいかない。
「ジュア!」
ビシッ!とファイティングポーズを決めて身構えるゼロ。
「ガアア!」
バードンはゼロに向けて翼をバタつかせて、突風を巻き起こした。
「デュ!?」
「うわ!」
その凄まじい突風のせいで火は消滅したが、ありがた迷惑な消火活
動にも程があるその風は、ゼロの姿勢を崩してしまう。
「グゥゥ…」
ゼロは頭に装着された二本の宇宙ブーメランを手にとり、バードン
に投げつけた。
〈ゼロスラッガー!〉
「ジュア!」
ゼロスラッガーは風を切ってバードンに近づき、バードンの体にぶ
つかった。
「キェェエ!!」
(よし…このまま一気に…!)
突風が止まったのを見計らい、ゼロはバードンに突出したその時だ
った。
バン!と小さな爆発がゼロに当たった。ダメージはなかったものの、
いきなり誰が攻撃してきたのか?バードンとは別の新手なのか?と
最初は思ったが、予想外な答えだった。
「ファイヤーボール!」
ルイズだった。ルイズはゼロを敵と見定め、彼に失敗魔法をぶつけ
ているではないか。しかし、ウルトラマンの存在が知られていない
この世界では仕方ないことだとも考えられる。だがルイズの行動は、
明らかに命知らずの無謀なものだった。
「ば、バカ!何やってんだルイズ!」
ギーシュとの決闘でボロボロになったのに、どこにそんな体力が残
ってたのか、サイトはルイズの元に走って彼女から杖を取り上げよ
うと彼女を取り押さえる。
「離せ、離しなさいよ!」
「何考えてんだ!お前、バードンに魔法が通じないのはその目で見ただろ!ましてや、ウルトラマンの邪魔なんかしやがって!」
「黙りなさい!あれがあんたの言うウルトラマンとは違うかもしれ
ないじゃない!とにかく邪魔よ!ここであいつら二匹ともやっつけ
れば、誰もゼロだなんて…」
再びルイズの失敗魔法が放たれた。次に当たったのはバードンだっ
た。
バードンはルイズの攻撃を目障りに感じ、ルイズと彼女を取り押さ
えるサイトに向けて火炎を放射した。
「きゃ…!」
しかし、ゼロが二人の前に駆けつけ、ブレスレットを硬質な盾に変
化させてバードンの炎を防いだ。
〈ウルトラゼロディフェンダー!〉
学院中の人々は、驚きを隠せなかった。得体の知れない巨人が、た
った二人の人間のために危険をおかしてまで助けに来たのが信じら
れなかった。
「あの子達を、守ったのか?」
「我々を、助けにきたのか…?あの巨人は…」
ゼロは二人を向いて、落ち着いて語りかけてきた。
「あぶねえだろ、あっち行ってな…」
「ウルトラマン、ありがとう!助かったぜ!」
サイトは礼を言ったが、ルイズは言わなかった。それどころか…
「あんたねえ、ウルトラマンだがなんだか知らないけど、貴族に向
かってその口の聞き方は何よ!?」
(はあ!?)
ある意味見事なものに見受けられるが、さすがに言われたゼロ本人は愚か、サイトもこれには呆れ返った。
「ルイズ、いいからウルトラマンに任せて下がるぞ!」
無理やりルイズを引っ張りながらサイトは、ゼロとバードンの戦場から離れた。
「シュ!」
ゼロは再びバードンの攻撃に備えて身構える。
「キェェエ!!」
バードンは炎が効かないと理解し、最後の切り札を使うことにした。
高く羽ばたき、ゼロに突撃していく。
(へっ、自分から殺られに来やがるとは…)
余裕の姿勢で再びブレスレットに手をつけようとしたが、その刹那、サイトの必死の叫び声が聞こえてきた。
「ダメだウルトラマン!そいつの嘴には毒が!」
「!」
ゼロはその声に反応し、かろうじて突出してきたバードンの嘴から
逃れきった。
それからバードンはゼロの隙を突くように牽制用の炎を吐き、それ
を回避するゼロの背後を突こうとする。その繰り返しが続き始めた。
(くそ…どうする?)
「ちょっと、どうしたのよサイト?血相変えて」
ルイズはサイトの顔を見て知らず知らずのうちに心配そうになる。
「ダーリン、何か知ってるの?あの鳥の化け物について」
「…」
キュルケとタバサもそこにやって来る。
「俺が生まれる前、あのバードンの同種族が俺の故郷に現れた。その時、タロウとゾフィーって名前のウルトラマンがバードンと戦っ
たけど、二人ともバードンに負けて、危うく命を落とすほどの重傷
を負わされたんだ」
一同の顔はサアーッと青くなった。あの巨人の同族を二人も倒した
怪獣。そいつが、最後の希望となったゼロを倒す可能性は高いこと
になる。
「しかも俺の知る限り、ウルトラマンは地上ではその姿を保つのに
多量のエネルギーを使う。だから、戦える時間はほとんどない。胸
のカラータイマーはそれを教えてくれる役割があるんだ。もし赤く
なって点滅し、消えたら…」
「ど、どうなるの?ダーリン」
「ウルトラマンは…死ぬ」
さらに絶望の風が吹いた。
「基本的に三分と持たないウルトラマンが普通だった」
「そんな、どうしようもないじゃない!そんな化け物相手にしたら
…」
自分たちは確実におしまいだ。
「いや、まだ手はある」
サイトは無理やりな作り笑いを浮かべた。
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