ウルトラマンゼロ サーヴァント(完結)

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「でもさ、魔法が使えるようになって…その後どうする気なんだ?」
「き…決まってるじゃない!我がヴァリエール家の名をさらに高め
…」
「それは本当にお前の意思か?」
ルイズの言葉を遮るように、サイトは口を挟んだ。
「…え?」
「他人に言われるがまま、そんなのは、俺は嫌だな。だからお前に
も逆らう時は逆らう。使い魔とか、貴族や平民やどうこうなんて、考えたくない。人形みたいになってたまるかよ」
(人形…!?)
なら自分は、国や家に都合のいい人形だと言いたいのか?
「俺はさ、ずっと見たいと思ってる景色を実現しようと思うんだ」
「見たかった景色?」
「ああ…」
サイトはそこから長く話をした。
自分は産みの親を亡くした後、違う人に引き取られて暮らしてたこ
と。
ウルトラマンと呼ばれる光の戦士が、宇宙からの侵略者や怪獣から
地球を守ってくれたこと。
地球の人々も、その熱意に応えようとしたこと。
「でも、戦争でしかなかった。結局誰かが傷つき、誰かが違う人を
憎み、また争う。俺は、ウルトラマンに倒された連中にも大事な人
はいたんじゃないかって思ってきた。
だから、俺は決めたんだ。いつか地球防衛軍に入って、地球の人も、
宇宙人や怪獣も仲良くできる、そんな世界を築いていくって」
ルイズは正直理解しがたいものに感じた。だが少し理解したことは
ある。敵と馴れ合う?
「あんた…何考えてんのよ!?ちょっと理解不能なとこあるけど、
少なくとも争ってた敵と仲良くなれってことでしょ!?冗談じゃな
いわよ!そんな野蛮な連中と仲良しこよしなんて夢物語…」
トリステインも以前は戦争していた。戦いの歴史も、ルイズは学ば
されている。だが、彼女にとって戦争で戦う敵は、単純に悪と割り
きっていた。
「確かに、夢物語だって言われるだろうな。でも俺はマジだ。よく
よく考えてみろよ。戦争してる相手は、階級の低い兵まで悪なのか
?」
「………」
「…悪い、ちょっと熱くなりすぎたかな。でも、これだけは言いたい。自分の意思で、夢を持つんだ」
サイトはそう言って教室を出た。

「…」
自分の意思で、夢を持て。ルイズはサイトが言ったことを思い返し
ていた。
食堂でサイトは、シエスタの頼みでケーキを配っていた。するとそ
の時、
「君のせいで二人のレディが傷ついた。どうしてくれるんだ!?」
「もっ申し訳ありません!!」
ルイズの同級生で学園のギザな色男、ギーシュはシエスタが、床に落ちていたモンモランシーというガールフレンドからもらった香水を拾ったのが原因で、二股がバレていた。もちろん、その二人に「「嘘つき!!」」とビンタをくらったようだ。だが自分のせいなのに、香水を拾ったシエスタに八つ当たりしていた。
「お許しください…」
「ふん、これだから平民は「おい」なんだい君は」
そこにサイトが見てられず割り込んできた。
「二股かけたの自分なのに、関係のない女の子に八つ当たりなんて
最低だな」
「そうだギーシュ、お前が悪い!」
「平民の癖にさすが!もっと言ったれ!」
生徒たちはそれを聞いて大笑いする。自分がいかに孤独な状況なの
か身に染みて思い知らされたギーシュだが、平民なんかにしっぽを
巻いて逃げたら貴族の恥、そのプライドもあってまた言い訳する。
「君い、もし彼女が知らないふりをすれば二人のレディが傷つくことはなかった。話を合わせるくらいできただろう!」
「話を合わせる?笑わせんな!嘘の幸せなんか、不幸となんら変わらないだろ!」
ギーシュはサイトの言い分にムカムカと目を血走らせた。
「君はゼロのルイズの使い魔だな。貴族にそんな態度をとっていいと思っているのかい?」
「お前が貴族?だとしたら貴族ってのも知れたものだな」
その言葉でギーシュの堪忍袋の尾がプチン!と切れた。
「いいだろう、決闘だ!君に決闘を申し込む!!」
「決闘?ケンカってことか。どこでやるんだ?」
「ヴェストリの広場だ。逃げるなよ」
ギーシュは食堂を出た。
「あなた…殺される…」
シエスタは恐怖に怯えて逃げ出した。
そこにルイズがカンカンに起こってやって来た。
「何してるのよあんた!!今すぐ謝りなさい!!平民は貴族に絶対勝てないのに!!」
「ヴェストリの広場ってどこだ?」
サイトはルイズの話をさらっと無視した。
「あっちだ」
太っちょの生徒が校庭のある場所を指差した。
「無視しないでよ!!マリコルヌも何案内してるの!!」
太っちょの生徒、マリコルヌに怒鳴り付けるルイズを尻目に、サイトはヴェストリの広場へ向かった。
「もう、勝手なことして!使えない使い魔なんだから!」
ルイズはサイトを追いかけて行った。

ヴェストリの広場にて、サイトとギーシュの決闘が始まろうとして
いた。生徒たちは、それを観戦しようと周りを囲んでいる。
「逃げずにきたことは誉めてやろう!」
「誰が逃げるか!ギザ野郎」
「ちょっとギーシュ!決闘は禁止されてるじゃない!」
二人の会話にルイズが割り込んだ。
「禁止されてるのは貴族同士の決闘。だが彼は平民。何の問題もない。それともルイズ、君はあの平民にその乙女心をときめかせているのかい?」
ギーシュに変なところを突かれたルイズは顔を赤くした。
「へっ?ばっ馬鹿言わないでよね!使い魔がボロクソやられるのを止めにきたのよ!」
「君が何を言おうとすでに決闘は始まっているんだ!」
ギーシュは薔薇の杖をふった。すると地面から、鎧を身につけた女性の、青銅の人形が出現した。

「な、なんだこれ!?」
「僕の二つ名は『青銅』のギーシュ。君の相手はその『ワルキューレ』だ。やれ!」
「卑怯よギーシュ!平民相手にワルキューレなんて!」
「黙って見てろ!」
サイトは無理やりルイズを観戦者の方に突き出した。
「あっ馬鹿!前見て!」
サイトが振り向くとワルキューレがサイトの腹を殴った。
「ぐっ…」
青銅は金属の中では脆い方だ。だが人間を殴り倒すには、十分な堅さを誇る。サイトは腹を殴られた痛みのあまり膝を着いた。
「サイト!」
ルイズがサイトに駆け寄った。
「わかったでしょう。平民は貴族に勝てないの」
「やっと名前呼んだか…」
サイトは立ち上がる。だが今の一撃は半端なものではなく、体が少しふらついている。
「でもさっき言ったよな?貴族だからって立場の弱い人間を見下していいのかって。こいつ見てると、ムカつくんだよ!」
「ちょっと待って!止めてー!」
それ以降、サイトはワルキューレに殴られまくった。何回も何回も…骨がイってしまうほど。
「終わりかい?ごめんなさい、と謝るなら許してやってもいいぞ」
ギーシュは、ボロボロの状態で地面に座るサイトを見下すように言った。
「ぐっうるせえ。ちょっと休憩だ」
サイトはワルキューレを見た。
(どうする…あんなの殴ったら腕が砕けちまうし…)
その時だった。
「!?」
サイトの目の前に、銀色に輝く剣が落ちてきた。
「せめてものハンデだ。もし君に戦う意思があるのなら、その剣を取りたまえ」
「ダメよ!それを手にとればギーシュは容赦しないわ!」
「…」
だが、サイトは剣の方に手を伸ばしていく。
「止めなさいって言ってるでしょ!どうしてわからないの!?」
サイトは彼女の目を見た瞬間、少し動揺した。
目尻に涙が溜まっている。
「泣いてんのか?」
「な、泣くわけないでしょ!」
ルイズは恥ずかしくなってサイトの顔を殴った。
「った、殴んなよ…」
それでも、サイトは剣をとろうと手を伸ばす。
「さっきお前に言った夢、俺はまだ諦めちゃいない…」
「いいから、もう止め…」
必死に止めようとするルイズを、サイトは手で払った。
「誰かを傷つけるだけの力に、頭を下げらんねえ…俺には…」
サイトは剣の柄を掴み、剣を引き抜いた。
「命をかける夢があるんだ!」
手にとった瞬間、体の痛みがすっかり引いてしまっていた。
「あれ?痛みが…」
よく見ると、左手の「ルーン」と呼ばれる刺青のようなものが、青く光っている。
「だがそんな武器では僕に勝てないぞ!いけ、ワルキューレ!」
だが次の瞬間、サイトの武器の一振りでワルキューレは砕け散った。
瞬間、周りから歓声があがった。
「おお、すげえな!」
「あの平民速っ!」
「ぐっまだ終わってないぞ!!」
ギーシュは新たなワルキューレを作り出すが次々とサイトの攻撃によって砕け散っていく。
(すげえ…ずっと昔から慣れたようなこの感覚…)
体が自然と、思い通りに動いていく。サイトは不思議な心地よさを感じていた。
「う、うわあああ!」
そしてサイトの武器の剣先がギーシュに向けられた。
「あ、ああ…あ…」
ギーシュは腰を抜かして座り込んでしまった。
「続けるか?」
「まっ参った…」
観戦者から驚きの声が上がった。
「どうなってるんだ!?」
「ギーシュが平民に負けるなんて…」
(…どうなってるの、ホント?)
ルイズもポカンと口を開けていた。
サイトは武器を地面に刺すと、武器は自然と消えていった。そしてどこかへ歩いていった。
「どこ行くのよ!?」
「傷冷やしに行くんだよ。あの野郎おもいっきり殴りやがって…」
キュルケはサイトの後ろ姿を見て、
(ああ、素敵…)
と見とれていた。
タバサは表情を変えないままサイトを見ていた。

学院長室。そこには、緑色の髪の若い女性の秘書と、仙人みたいに髭と髪の長い老人がいた。
「オールド・オスマン。あの平民の少年、勝ちましたね」
「あの力は一体…」
そこにコルベールが大慌てで入ってきた。
「オールド・オスマン大変です!あの使い魔の少年のことなんですが…」
何かにピンときたオスマンはロングビルを見て言った。
「ミス・ロングビル。席を外しなさい」
「わかりました」
ロングビルは静かに部屋を出た。
「あの少年、実は伝説の使い魔、『ガンダールヴ』ではないかと思われます。彼のルーンとガンダールヴのルーンがご覧のとおり一致しているんです」
コルベールはサイトのルーンのスケッチと『始祖の使い魔たち』という本に書かれていたガンダールヴのルーンを見せた。
確かに、ガンダールヴと呼ばれた者のルーンと、サイトのルーンはぴったり左手に、形も一致している。
「ミスタ・コルベール、このことは他言無用じゃ」
「何故です!?千人ものメイジでさえ歯がたたなかったあのガンダールヴはまさに世紀の大発見ですぞ!」
「だからこそじゃ。王宮に知らせたらどうなる?彼は戦争でその力を利用されてしまうわい…よいな?」
「し、失礼しました!私としたことが、危うくあの少年を利用されるところでした…」
「それでよい。さて、一度外の空気を吸うとしよう」
オスマンは背伸びすると、一旦外に出た。
ロングビルは二人が学院長室から出たあと、そのすきにサイトのルーンのスケッチとガンダールヴのルーンを見た。
「!?」
それを見た瞬間、彼女は何故か驚きを隠せなかった。
「このルーン、あいつのと…まさか…」

ルイズの部屋。
「悪い、シエスタ。わざわざ包帯巻いてくれて」
傷を冷やしたサイトの治療のために、シエスタは包帯を巻いて傷口を塞ぐ。
「いえ、お気になさらないでください。私は謝らないといけないのに…」
少し顔を沈ませてシエスタは言った。
「何で?」
「だって私はあのあと逃げ出したじゃないですか。怖かったんです。
平民が貴族に勝てるわけないって思ってましたから…でももう怖くありません!だってサイトさんは勝ったんですもの!感動しました!」
「ふん。ギーシュに勝ったくらいで対偶が変わると思ってたんでしょ。めでたいわね。」
シエスタの明るい反応とは対照的に、ルイズはそっぽを向いてる。
「でも今回は許してあげる。武器も今度の休みの日に買ってやるわ。でも次は言うことはきっちり聞きなさいよ」
その時、ギーシュとモンモランシーが入ってきた。
「ルイズ、使い魔君はいるかい!?」
「ギーシュ!?」
女子寮にも堂々と踏み込むとは、さすがはギーシュ。だが今回はきちんとした理由でやって来たのだ。
「さっきはすまなかった。許してほしい」
ギーシュはサイトに頭を下げ
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