ウルトラマンゼロ サーヴァント(完結)
□無印編(ゼロ)/File0
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皆さんはウルトラマンという存在をご存知ですよね?
彼らは宇宙の正義と平和の為に命がけで戦い続けている。時には正義や自らの力の葛藤に悩みながらも、宇宙全体の数々の星で生きる多くの命を救ってきた。
この物語は、「光の国」のウルトラマンたちの中で英雄として名を轟かせた「ウルトラ兄弟」の仲間入りを果たしたウルトラマンメビウスとエンペラ星人の戦いが終結して約4年後の2011年 3月、東京の秋葉原から始まる。
「はあ、学校が終わったら次は塾か…」
ごく普通の高校生、サイトはため息をついた。正直ここ最近ダルい。実は彼は、定期テストで赤点をとったので追試を受けることになっていた。親からも厳しく言われ、塾にまで強制的に通わされることに…
サイトは真っ赤な通信簿を見た。
「今こんなんじゃサラリーマンになることすら難しいなぁ…」
彼は地球防衛チームに入ることが将来の夢である。しかし今の成績ではその夢も雲の上の存在だった。
「せめて、あ!っと驚くようなことないかなぁ…。平凡な高校生活にも飽きてきたし…」
そんな愚痴を言う彼にも少しだけお楽しみがあった。ひとつめはゲーム、ふたつめはネット、そして…
「高凪さん、最近忙しそうだよなあ…」
彼は高凪ハルナというクラスメートと交際している。クラスの委員長をつとめ、成績も優秀だった。サイトは彼女に教えてもらうこともあった。
しかし彼女はいつも忙しく頼る時間が長く取れず,結局サイトはまた赤点だったという…。
「はあ…」
またしてもため息をつく。
「平賀君」
「ん?」
後ろから、噂をすれば影、ハルナがやって来た。
「ごめんね。時間少しでもとれたら勉強に付き合ってあげられたのに」
「いいって。俺がバカなだけだし…」
「じゃあ明日、日曜日でしょ?家に来る?」
「え?家にって、もしかして…」
「うん、私の家」
「マジで!?いいの!?」
サイトの声が嬉しさのあまり裏返っていた。
(ああ〜彼女いない歴17年、やっと女の子の家にあがれるんだあああ!!)
嬉しさを通り越しすぎて涙まで流してる。
「んで、何時にこればいい?」
「えっと…朝の十時に校門前に」
「十時、わかった。ぜってー来るから!んじゃ!」
平賀は張り切って家へ超特急、走って行ってしまった。
「もうちょい話したかったのに…」
ハルナはちょっぴり残念そうな顔をしていたのをサイトは知らない。
「ただいま」
サイトは夜の十時、自分の家へ帰ってきた。
先に向かったのは、和室にある仏壇。
サイトは写真に映された二人組の夫婦を見て合掌し、黙祷した。
「あら、お帰り」
出迎えてきたのはサイトの母、アンヌ。かつて地球防衛軍のエリート「ウルトラ警備隊」の隊員だった女性である。
「母さん」
「偉いのね…亡くなったお母さんたちに」
アンヌは、サイトの実の母ではない。四年前、両親がウルトラマンメビウスと戦っていた怪獣による事故で亡くなり、身寄りのない彼を彼女が引き取ったのだ。母とは今も名字が違ったままだ。
「これくらい普通さ。それと明日、出掛けるんだ」
「どこに?」
「高凪さんの家だよ」
「あら、あんたもやるのね。コノコノ」
からかうようにアンヌはサイトに肘を軽く打つ。
「あははは…からかわないでよ。んで、今夜の飯は?」
「カレーよ。冷めたから温めときなさい」
「うぃーす」
サイトは食卓に向かった。
翌日、サイトは待ち合わせの場所でハルナを待っていた。
「早く来すぎたかな?」
今は九時四十五分。早いと言えば早い時間帯だ。
「ん?」
サイトは一瞬目を疑った。彼の前に光る丸い鏡のような物体が現れた。
幻覚かと思い、目を擦ってみたが、幻覚ではなかった。ちゃんと目の前に存在していたのだ。
「なんだこれ!?スッゲー!!」
サイトはその物体に近づいた。
「中に入れるみたいだな。ちょっと、触ってみるか」
サイトはその物体に触った。すると…
「おおー!」
入れた。のはいいが…
「なんだ。真っ暗で何もねえじゃん。つまんね……………………ってえ!?」
サイトは入ってきた方を振り向いた。出口が消えてしまっているではないか。
「おい!誰か出してくれ!!」
閉じられた扉を叩くように叫ぶが、彼の声は虚しく響くだけだった。しかも…
「あっあれ、うわあああああああああああー!!」
サイトはその空間の奥へと吸い込まれていった。
「ごめんね。おまた…え?」
少し遅れてハルナは駆けつけたが、遅かった。
「平賀君!?」
そう言ったときには、サイトの姿はどこにもなかった。
学校は愚か、日本にも、そして…
地球にも。