アンリミテッドデザイア(完結)

□#4
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とりあえず憐地が落ち着いたので…。
「えっと、お二人は『エメラダ星』という、地球と交流が盛んになった星でそれぞれ研究者と防衛軍の戦闘員という形で活躍していた…」
「そして、お二人は友達だったんですね」
エリオとキャロがソラに言うと、憐地は調子よく頷く。
「そ〜そ〜。こんな堅物野郎だがよろしく頼むぜ」
「よろしく頼むのはこっちだ。このアホで間抜けで女ったらしな宇宙一の愚か者が迷惑するかもしれんが、扱いに関しては煮るなり焼くなり君たちに任せる」
「ぼろくそ言うな!」
ソラのすごいもの言いに憐地は怒鳴る。
「そうやな、こんだけ美女が集まった部隊やから、遠慮なく煮たり焼いたりさせてもらうわ」
どうやって料理しようかと、はやては怪しい笑みを浮かべながら憐地を見る。
「さすがに、そんな顔で見られるのは勘弁だぜ…」
「でも、クロサキさんはなして自分の世界から去ったんですか?」
はやてはソラにふと疑問に思ったことを尋ねる。憐地が四年も探した男。彼が何の目的で自分の世界から旅立ったのか気になった。
「…いや、ちょっとした研究中に急に緑色の光が俺…私を包んで、気が付いたらこの世界に漂流したんです」
「!」
緑色の光、と聞いてフェイトはあることを思い出した。
自分が当時、奇妙な石柱付近で拾ったあの石の輝きも、緑色の光だった。あの時からギンガにあの石を手渡したきりだが、当時異形の魔物に襲われた時のギンガは石を握りしめて必死に助けを呼んでいたが、まさか…この人は…。
いや、確か夢で見た時もこの人は…。
「え、じゃあ四年間もミッドチルダを彷徨ってたってことですか!?」
「そうなりますね。おかげで苦労しましたよ。ま、この先も苦労するでしょうが…」
「研究って、ソラさんは何を研究されてたんですか?」
今度はリインが尋ねてみる。
「エネルギー開発や、自然と共に在ることができる機械などの研究だ。最近は光量子コンピュータを設計したってところだ」
「うわあ、すごい頭ええんやな。憐地君とは大違い」
「ぐさあ!何、そういうオチ!?」
はやてにソラと比較されてばっさり言い捨てられて納得できないように声を上げた。
「ものづくりに関しては、の話ですがね。さすがにこの六課の局員ほど私は戦えませんよ」
「そうは見えんが?」
シグナムが少しいぶかしむような目でソラを見る。
「私には、お前は戦いの心得を極めたように見える」
「…」
ソラは無言だった。シグナムから視線を明らかにそむけている。
「な、なあシグナム。ここは触れないであげてやってくれないか?」
すると、察知した憐地がソラとシグナムの間に割って入り、彼女に頼んだ。
「触れたら、まずいことだったか?」
「そういうことにしてくれ…」
耳元で彼はシグナムに続けて言うと、彼女も「わかった…」と納得してくれた。
「まあ、研究ではこの六課でも私は役に立てそうですから、私に何か頼みたいことがあれば何でもおっしゃってください。普通にソラと呼んでも構いませんので」
「ホンマに!?ありがとうなソラ君!じゃあ、うちのこともはやてって普通に呼んでええから、よろしく頼むわ」
「ああ、こちらこそ」
「なあ…」
憐地が何やらまた不機嫌そうに手を上げた。
「なんで俺の時は特別試験だってのに、こいつの場合は即入隊みたいな感じなんだ?おかしいじゃん」
「何もおかしくないですけど?」
リインは、憐地が何を不服に思っているのか理解できず首を傾げている。
「だって俺はシグナムの姉さんに時価じかに訓練受けて入隊試験に合格したんだぜ?なのに…」
「だって、ソラ君は戦闘員じゃなくて、研究員志望やろ?」
「うん、ヘリで乗っているときも、彼の右手のデバイスは自作だって教えてもらったから。はやてにもそれを教えていたんだよ」
はやてとフェイトが口々に理由を述べる。だが、あの戦闘になるとどこまでも暑くなってしまうシグナムのつきっきりの訓練に耐え抜き、あれだけ苦労して試験に合格したのに、こいつは試験もなく入隊できたということにどうしても納得できなかった。
なあ神様、俺に何か恨みでもあるの?と思いつつ。
「それにお前のデバイス『エスプレンダー』も、俺が作ってそのまま部屋に置いていたのをお前が勝手に持ち出したものだろ?」
「う、それは…」
「ま、そんなことは置いといて、みんなに改めてソラ君と憐地君を紹介しよ」

その後、ロビーにて機動六課の面々が集められる。そこにははやてになのはとフェイト、はやての守護騎士の面々それに前線フォワードもいた。
「今回、私…高町なのはがみんなに協力者を紹介します」
なのはが二人に自分の名前を告げ、今度はソラと憐地が自分の名を名乗る。
「ソラ・クロサキです」
「千樹憐地だ。よろしくな〜」
ソラは礼儀正しくお辞儀し、憐地は調子者らしく手を振る。
「改めて、フォワードのみんなを紹介するね」
なのはがスバルたちに目を向けると、それに応えてスバルたち四人のフォワード陣も一列に並んで、二人に向けて敬礼する。
「スバル・ナカジマです!よろしくお願いします!」
「ティアナ・ランスターです。よろしくお願いします」
「エリオ・モンディアルです!よろしくお願いします!」
「キャロ・ル・ルシエです!それと、使役竜のフリードリヒです!」
「キュクー」
「ああ、よろしく」
ソラも同じように敬礼でそれに応えた。
「フォワードのみんなはこれから訓練があるから、先に訓練所に行っててね」
「「「「はい!」」」」
返事をして、四人と一匹はロビーを出た。それを見送った後、なのははソラたちに振り返った。
「クロサキさん達も、訓練を見てみますか?」
「ああ、そうだな」
「俺も俺も」
ソラ達はなのはの案内で訓練所へ向かうこととなった。

その際、フェイトはソラに念話を送ってみた。
『えっと…ソラ、聞こえる?』
『…どうしたんです?』
『私…その…』
『…?』
なんだかうまく口に出せないようだ。
『な、なんでもない、やっぱり…』
彼女が一体何を言いたかったのか、ソラはまるで理解できなかった。

「あれが…訓練所?」
「うん、そうだよ!」
一見、六課の隊舎のすぐ近くの海辺。ここが訓練場だと言っていたが、そこには訓練できるような土地などなかった。てっきりソラは訓練するために設置された小さな人工島があるのかと思っていた。だが、その人工島スペースがあるだけで他には何もなし。ここでどう訓練するつもりなのだろうか、ソラには疑問だった。
「さあソラ君。そのお堅い目でおののきたまえ!」
なぜか憐地がバッ!と手を海辺の方に伸ばして上から目線のような言い方をする。
だが憐地もここで訓練していたそうだし、どうやらただのスペースということではないようだ。
フォワードの近くに、なのはが端末を操作している。そして最後のキーを押した後、ソラはあからさまではないものの、驚いて目を見開いた。廃墟がたちまち建ち並んでいくではないか。
「ホログラムの実体化か。見事な技術だ…!」
「ホログラムを応用して作ったシミュレーターなの。その場所そのものを再現することをコンセプトに作り上げた、私の自信作!」
えへんと、得意げになのはは胸を張る。
「面白い研究対象になりそうだな…あとで詳細を聞いても構わないか?」
「うん、いいよ。とその前に…」
「新人たちの訓練ということか」
今は訓練の時間、この話は後にすることにした。
「そういうこと。それじゃ、訓練を開始するよ!準備はいい?」
「「「「はい!」」」」
なのはが準備ができてるか尋ねると、フォワード全員が訓練所の方へと足を運んだ。
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