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□最終回2
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時空の歪みのうねる、どこかさえもわからない空間。そこにはいるはずのないはずの二人の人物が互いににらみ合っていた。
「なぜだ…なぜ俺は貴様などに…!!」
「まだわからないのか、俺より長く生きておきながら情けない奴だな」
ダークザギと、シュウヘイの意思を持ったウルトラマンノアだ。あのワームホールに飲み込まれた直後、二人はこの空間の歪の中で戦い続けていた。
勝負は、最終的にノアの勝利に収まっていた。
「どうして、俺は勝てないんだ!二万年前も、6000年前も、四年前も!」
「…あんたは確かに強いさ、個人で戦えばあんたが勝っていたかもしれない。だが俺にあってあんたになかったものが俺にさらなる力となった。それだけの話だろ」
「また愛だの友情だの…そんな陳腐なものを語るか!自分からその愛を捨てて一人の女を消した貴様が!」
「あんたこそそれを認めず捨てたじゃないか。俺が入隊する…いや、あんたが俺たちのいた地球でその姿を取り戻す以前、平木隊員はあんたを見てくれていたはずだろ?」
「奴は…詩織は『高槻』の代わりとしてしか俺を見ていなかった。来訪者どもだってそうだ!奴らにとって俺は『ノア』の代わりでしかない!
そうだ、俺は結局偽物だ!お前を殺さない限り、俺は永久に影なんだ!」
もし自分が偽物だと、もう一人自分がいると、あなたがたはそう思うだろうか?自分の何かもがすべて誰かを元に作られたらショックを受ける者もきっといるかもしれない。
だが、ノアは首を横に振ってそれを否定した。
「…違うだろ」
「なに…!?」
「たとえあんたが偽物であっても、あんたはあんたじゃないのか?あんたにはあんたしか持っていないものがある。それが、あんたが『ザギ』という存在の証になるんじゃないのか?」
たとえ誰かの偽物であっても、結局本物とは別の存在でしかない。ノアはザギに、自分の偽物としてではなく、他のなにものでもない『ザギ』という存在であることでいるべきだと言っているのだ。
「俺が俺とでも言わせたいのか?じゃあ、貴様はなんなんだ!『ウルトラマンノア』なのか!?それとも『人形』か!?」
「…そもそも自分が何者かだなんて、気になるにしてもどうでもいい話じゃないか?
俺もあんたと同じように、最初は生み出されておきながら失敗作だからという理由で捨てられたから、自分の存在について疑問を抱くこともあった。でもテファや平賀、それ以前に憐や孤門と関わりあて、あいつらと過ごしていくうちにわかったんだ。俺が何者であろうが関係ない。俺はここにいる。こうして生きている。それだけでよかったんだ。
あんたも手を伸ばしてみるといい。誰かに認めて欲しかったら、今までとやり方を変えて行けばあんたを見てくれる奴が必ず現れる」
「…」
ザギは一時無言だったが、すぐ反発の言葉を投げつけた。
「…今更どうしろというのだ…。こんな血塗れの俺がどうやってこの宇宙で生きていけると思っているのだ?」
「それはあんたが決めることだ。だが、あんたがまた俺の大事なものを奪いに来るというのなら、俺は二度と復活できないように葬るしかなくなるがな」
「…はははは」
薄ら笑い声を上げるザギ。
「やっとわかったぞ、人形。お前は自分の体が『生命』の虚無魔法で体がウルティノイドとなった影響で、同化していたノアの光と完全に結合したのか。
本物になれて図に乗って、いい気なもんだな…」
「石堀…いや、ザギ?」
「ふざけるな、貴様の施しなど受けてたまるか!たかが俺が作り上げた失敗作の人形が!道具の分際で偽物の俺と違って本物になれた貴様が!虫唾の走る言葉ばかり並べるな!」
この時のシュウヘイは、彼自身も生命の魔法の影響で体がウルティノイドとなったこととノアと同化していた影響で彼自身とノアの光が結合し、ノアと完全に一体化していたのだ。その事実がザギの逆鱗に触れた。自分の手で生み出した人形がノアそのものとなったことがとてつもなく許せなかった。
自分もうボロボロの状態なのに、なおも自分の我を通そうと戦いを挑む姿勢をみせるザギ。
「それでもノア、貴様が正しいと言うのなら、この俺を二度と復活できないようにしてみせるんだな!」
「…」
ノアも無言でザギに向かって身構えた。
「これで今度こそはっきりさせようか。どちらが本当の『ウルトラマンノア』なのかを!」
「…この分からず屋め」
一度沈黙を通そうと思っていたノアは、ザギに向かってぼそっと呟いた。

あの戦いから二年経った今でも、未だにテファはシュウヘイの帰りを待ち続けていた。
あの戦いのあと、彼女はハーフエルフであるが故にハルケギニアでもかなり重要な役割を担うこととなり、エルフと人間の架け橋として、今も表世界で活躍するようになった。
ハルケギニアに移住するエルフ、サハラに研究しに向かう人間が多くなった今もなお抜けきれていない差別意識。それを撤廃すべく彼女はルクシャナやアリィー、そしてファーティマたちエルフの仲間や、主にアンリエッタやタバサたちハルケギニアの王族たちと協力している。
彼女がハーフであることで、差別意識の強い者からの非難も大きいが、次第に彼女の人柄に触れて意識を改めていく人々が度々でてくるようになり、彼女は箱入り娘だった頃と比べて今や世界中で有名になっていた。彼女に影響され、さらに以前タバサが翼人の女性と人間の男性の愛の架け橋となった事実もあって、まだ少数だが人間とエルフの恋愛も増えていた。
しかし、一つだけ足りないものがあった。

愛する人。その存在だった。
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