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□File9
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「なっ…!」
遠くのいくつかの街はその光の攻撃により、あっという間に消え去った。
ゼロたちは引き続き盾を用いて防ぎきり、光線が止んだと同時にゼロはザギを殴って止めた。
「酷いな…街がいくつかなくなったみたいだ」
今の光による圧倒的な破壊ぶりに、ギーシュは冷や汗をかく。
「そうか、このパワーアップのためにベリアルを利用していたのか」
だが、何もザギの驚異だけではなかった。
『こ、これは!』
ジャンボットが突然悲鳴を上げるように声を漏らした。気になってアリィーが彼に尋ねてみる。
「どうしたんだ!?」
『怪獣…主にビーストの反応が1,10…100…500!!それも世界各地で暴れだしている!』
シュウヘイの生きていた次元の地球と同じだった。その世界でザギが復活した時と同じように、ビーストだけでなく、何体もの怪獣たちが出現し、暴れだしたのだ。
証拠に、すでに宇宙から、そして地上からもビーストをはじめとした怪獣たちがまた目覚めだしたのだ。それだけではない。しかもハルケギニアで生きていた竜などの幻獣たちまでもザギのパワーアップに反応したのか、自我を失って暴れだしたのだ。
その事態は、他の軍勢にも伝わっていた。
「な、怪獣がまた!?」
「なんだってんだ!俺たちはただ普通に暮らしてくれば…」
エルフ人間関係なく、絶望の声が上がる。強い味方がいるとはいえ、一秒でも早く驚異から逃れたいという思いで戦ってた者も多かったため、不安が一気に伝染した。
おぞましい姿をした怪物たち。そしてそれらを束ねしザギ。能力も姿も、そしてその心もウルトラマンに近かったが、今や影も形もない。
今のザギは、こう表現するしかない。

まるで…

まるで…

「悪魔…」

ヴィットーリオはザギを見て、そのおぞましさを体感した。
だが、ここで逃げては元も子もない。
「恐れているのなら戦え!どのみち奴は我々を皆殺しにするつもりだ!」
とファーティマ。
「すぐ火石の用意をしろ!」
ビターシャルも同胞の兵士たちに呼びかける。
「まだ残っている武装をかき集め、攻撃をなさい!サイトさんがザギを倒せばきっと怪獣たちも収まるはずです!」
アンリエッタも自国の兵士たちに向かって叫んだ。
自分たちはせめてゼロたちがザギを倒すのを待って攻撃を耐え抜くしかない。
「この、止めろおおおおおおおおおおおお!!!!」
〈ウルティメイトゼロキック!〉
ゼロは必殺キックをザギに向けて放とうとしたが、彼の身に異変が起こった。
「!?」
エネルギーが切れかけた影響でウルティメイト状態が強制的に解除、元のノーマルゼロに戻ってしまった。
「さ…最悪なタイミングで元の姿になりやがって…」
ウルティメイトイージスはその強大な力を持つが故に、長い時間その姿を保つことは出来ないのだ。一度使えば、元に戻ってからしばらくは使用することは出来ない。ゼロスラッガーに宿っていたデルフは毒をつくように言った。
「にしても…ザギの奴やりたい放題じゃないか…!」

再び光線の噴射による破壊活動で大地も海も傷ついていく光景を見逃せず、ゼロとザギのラッシュパンチが互いにぶつかり合っていく。拳と拳が大抵ぶつかるが、防ぎきれないものはその身に痛みを与えていく。
先ほどから立て続けにダメージを受けていたのはゼロの方だけだった。
(なんてパワーだ…こんな化け物と俺は戦っていたのか…!しかも、ギリギリ致命的なダメージは与えてきてない。遊ばれてる…!)
「そろそろ僕らも援護に行こう!」
「よっしゃあ!ファイヤああ!!」
『ジャンファイト!』
「ジュワ!」
ミラーナイト・グレンファイヤー・ジャンボット・ダイナもゼロとザギが戦っている間に休んだことである程度回復した。すぐにでも加勢しようと邪悪竜と化したザギに立ち向かっていった。
そして、ジュリオはその一方でロマリアの艦にヴィットーリオとジョゼットを送っていた。
甲板に二人を乗せ、決心したような顔つきで二人に言った。
「では、僕はもう一度行きます」
「お気をつけてください、ジュリオ」
「死なないでね」
「大丈夫。サイトたちからそれを教わったから」
彼は再びリトラの背に乗り、自軍の艦隊に近づいていた。

一方、ハルケギニア連合軍の艦隊…。
「女王陛下!攻撃準備整いました!」
「ゲルマニア・ガリア・オクセンシェルナ軍の方も準備が整ったとのことです!」
「よし、全砲門開きなさい!ウルトラマンを…いえ、平賀サイトさんたちを援護しなさい!」
ばっ!と甲板場でザギを睨みながらアンリエッタは全兵士に命令、トリステイン軍をはじめとした艦隊から凄まじい勢いで砲弾が次々と発射された。
(…)
ジャンナインの中で、テファは今のザギの姿を今にも泣きそうな眼差しで見ていた。ザギの体はシュウヘイのものとなっている。
いわば、あの竜はシュウヘイそのものと言っても過言ではない。
どうすれば、彼をザギの支配から開放できるのだろうか。
―――以前、孤門は副隊長がレーテの闇に飲み込まれた時、自分からその闇に飛び込んでいったことがある。
ふと、以前元いた世界のことを彼が話してくれた時のことを思い出した。
そして彼女は、上空に浮かび上がっているレーテを見上げた。もしかしたら…。
「ジャンナインさん、グレイ君と話をさせてもらえないかしら?」
『う、うむ』
「何?何かあるの?」
気になる様子でルイズが尋ねる。だが彼女は相当急いでいたのか、ルイズの声を無視して外にいるグレイに呼びかけた。

その頃のグレイは、父が置いて行っていたギガバトルナイザーを見上げていた。
「…父さん」
ギュッ…とザギへの恨みと憎しみが募りながらも、それに飲み込まれないように必死に耐えながらみつめると、ジャンナインの無線によるテファの声が彼の耳に届いた。
「グレイ君、大丈夫?」
「…うん、どうしたの?」
さっきから父を喪った嘆きからか、放心状態気味だったグレイ。
「私とジャンナインさんと一緒にレーテのところまで来て!考えがあるの!」
「わかった」
彼はミョズニトニルンのルーンを光らせ、地面に突き刺さっていたギガバトルナイザーに触れると、ギガバトルナイザーは鉄アレイのような形に縮まり、彼の手に収まった。
「父さんのためにも、その願い聞くから何でも言って!」

「クヒャハハハハハ!!!!」
ザギの巨大な前足がぶつけられ、さらにゼロの身を痛め付けていく。
「ぐ…ハアアアアア!!!!」
ゼロはゼロツインソードを作り、ザギに向けて振り上げる。遊ばれてるなら、敢えて付き合うのが今の状況を考えたら最もだろう。
「イヤア!」
一閃を放ち、ザギの体を切り裂こうとするが、やはり魔障壁で身を守られ、攻撃が通じない。
「クヒャハハハハハ!!!!!!」
ザギの破滅の光がまたしてもばら蒔かれていく。
「あいだ!くっそー、痛えのかましやがって!!」
光弾の一発が手にあたってしまい、痛そうに手をバタバタふるグレンファイヤー。一発だけでもかなり聞いてしまったのか、もうファイヤースティックを握る力が消えてしまった。
「このやろう…シュワ!」
〈ウルトラスラッシュ!〉
ダイナは光輪を数発放ち、迫ってきたバグバズンたちの翼を切り裂いていく。
〈ビームエメラルド!〉〈シルバークロス!〉
ジャンボットとミラーナイトも光弾と光線を放ち、ザギと戦うゼロにビーストたちからの攻撃が当たらないように援護する。
だが、そんな彼らの努力は虚しく、ゼロの攻撃は一行に効かなかった。
ザギの体を、何か過剰に丈夫で頑丈なオーラが包んで守っている。
「あれは…『魔障壁』か」
艦の甲板上からそれを見ていたビターシャルは、焦ったような表情を浮かべた。

「あれのせいで攻撃が通らないのか!くそ…!!」
苦虫を噛むゼロ。これでは、いくらイージスの力を使えたにしてもいずれこちらが力尽きるのを待つだけにしかならないではないか。
とその時だった。ザギの巨大な手がゼロをガシッっと捕らえた。そして彼を限りない締め付けで締め上げていく。
「しまっ…ガハ!ぐあああああああああ!!!」
ミシミシミシ!!
体中の骨が今にも折れてしまいそうな音を響かせ、ゼロは身動きひとつ出来ない。するとザギはゼロを思い切りブンと宙に放り投げた。
そして、口から必殺の光線を発射する。
ゼロもそれに対抗し、ゼロスラッガーをカラータイマーに装備し、光線を放った。
〈ライトニングザギ!〉〈ゼロツインシュート!〉
「デア!」
光線は一時ぶつかり合って互いに押し合っていたが、すぐゼロの光線が押し返されていった。無理もなかった、もう全身の骨がイきかけている状態では全身の痛みが邪魔をして全力での光線が撃てなくなってしまっていたのだ。
だとしたら、このまま光線を受けてもまずいことになる。
「デルフ、地下水!」
「「あいよ!」」
ゼロの指示に従い、デルフたちの意思の宿るゼロスラッガーたちがザギの口元を狙って飛び出し、ザギの口を切りつけた。
その攻撃で、ザギはもう少しで光線をゼロに当てられるところで攻撃を中断してしまう。そして、ゼロの光線が逆にザギの顔に直撃した。
「グガ!?」
「はあ、はあ…どうだ!」
しかし、それでもなお倒れないザギ。やはり魔障壁の影響でまともにダメージが通らないようだ。それどころかかえって相手を怒らせてしまったように見える。
ふと、ゼロは頭上を見上げた。ジャンナインとメルバに乗っているグレイが、レーテの近くにいるではないか。一体なにをするつもりなのだろうか。
(テファ、まさか君は…!!)
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