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□File5
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「ここが…敵の根拠地…」
ゼロはフロア中黒い壁で敷き詰められ、赤いランプの光で照らされたこの場所を見回した。
彼らがいるのは、マレブランデス。ベリアルの根拠地である、惑星一つさえすっぽり包み込むほどの巨大な手型の超巨大要塞だ。
「ここに、シュウもいるのかな…」
「きっといるさ。ザギとベリアルさんは結託している。この要塞にいる可能性は大きいはずだよ」

ゼロが優しく、ジャンナイン内部のテファに言う。それ見て、なんとなくルイズとハルナは不機嫌そうに頬を膨らませていた。
「…なんだか平賀君テファさんに優しくない?」
「え?」
なんだろう、ジャンナインの体内にいて姿を直接確認できない二人からの視線を感じる。しかも痛い。凄く痛い。とにかくめちゃくちゃ痛い。
「そうねえ…仮にもテファはシュウヘイの…のハズなのにねぇ…」
「ち、茶化すなよ!!そんなんじゃないって!仲間に優しくするのは普通だろ!」
手をブンブンふって決してやましいことなどないことをアピールするが、それでも二人の視線の重さは変わらない。
「いやーみなさん、若いですねえ。さ、先に進むとしますか」
と、横から今の状況に合わないセリフが飛び込んできた。メルバの背に乗っているグレイである。彼はメルバに乗ったまま奥の方へと進んでいった。なんともまあ淡白な言葉に、一同の視線が集まった。
『食えないな…』
「不安を隠してる気がするけどな…」
ゼロの一言に、ハルナは首をかしげた。
「不安?」
「今回の事件の首謀者であるベリアルは、あいつの親父さんだから」
「そうなの!?私そんなこと聞いてなかった…」
ハルナは驚きのあまり声を上げる。ベリアルが今回の事件を起こした時も驚いたが、今のはそれ以上だった。
「行こうぜ。この戦いをとっとと終わらせないと」
彼らは改めて先へ進んでいった。
先に進んだ果てに、彼らは自分たちよりはるかに巨大な扉の前に立っていた。その扉を開くと、長い階段が伸びていた。その先にある、帝王の玉座へと。
その玉座に、彼はいた。宇宙警備隊大隊長ウルトラの父の友にして、グレイの実の父親でもある。ウルトラ兄弟以上に数々の功績を上げてきた歴戦のウルトラマンでありながら自身の野望のために同胞たちを裏切った男。
『銀河皇帝・カイザーベリアル』。
「私の部下を倒してきたか。さすが、私の認めた男と、自慢の息子だ」
玉座に居座っていかにも皇帝の威厳を表しているベリアル。だが、この光景はグレイにとっては不愉快なものだった。ゼロも、ジャンナインと彼の中にいるルイズたちも、グレイも鋭い目でベリアルを睨んでいた。
「ほう、いい目をするようになった。迷いがない」
「ベリアル…」
「その目をしたお前たちなら、私と戦う資格があるかもしれんが…」
彼が指をパチンと鳴らすと、ゼロたちの前に黒い霧が発生し、一体の戦士の姿となった。
それはダークロプスだった。それもたった一体の。
「なんで今更ダークロプスを?それも、一人?」
ルイズはベリアルが自分たちを舐めているのかと思った。だが、どう考えても妙だ。このタイミングでダークロプス一体だけなんておかしすぎる。ただ違うのは、ウルトラゼロブレスレッドに似た黒い腕輪がそのダークロプスに装備されていたことだ。
「ダークロプス・オリジナルといったところだ。まずは彼を倒してみるがいい」
「オリジナル…?」
一体何のことだろう。ゼロは疑問に思ったその次の瞬間だった。ダークロプスがまっさきにゼロに襲い掛かってきた。それも、凄まじく速い動きだった。
それをかろうじてゼロは左方向に、ジャンナインは反対側に飛んでダークロプスの拳を避ける。ダークロプスの拳は床に大穴を開け、破片が飛び散る。
「な…!!」
彼の鉄拳で空いた穴は下の階何十階に及んでいた。その有様にグレイも流石に青くなった。
「なんつー馬鹿力…っというか容赦なさすぎ」
続けて飛び出してきたまわし蹴りがゼロの方に飛び出し、それをゼロが両腕を盾にして防ぐが、一撃があまりにも重すぎて腕がしびれてしまっている。
「デュ!」
続いてそのダークロプスはダークロプススラッガーを手に取り、宙を乱回転しながらジャンナインに向かって突撃した。ジャンナインはエンジンを吹き立たせてすぐダークロプスから離れようと飛び回る。何度も宙を旋回するが、それでもしつこく追ってきた。
「しつこいわね!」
「意思がないぶん、諦めというものを知らないってことでしょうね…」
サイマとは違い、彼らは個人という意識がまるで見られない。前線で使い捨ての兵士同然の扱いである以上、感情など不要なのだろう。せっかく作られたのに、結局敵を殺すことでしか己の存在を証明できない、兵器というものはそんな物悲しさを備えているのだ。
『く!追われてる状態では攻撃に集中できん!』
「そこは私に任せて!」
敵の速度が速くて、逃げ回っているジャンナインは反撃に出ることができない。だが、体内に入るルイズとテファなら攻撃できる。
「ハルナ、そのままジャンナインに飛び回らせて。私とテファの虚無で攻撃する。テファ、準備して」
「え、ええ!」
テファとルイズは、共に杖を構え、呪文の詠唱を開始した。
エルオー・スーヌ・フィル・ヤルンサクサ…
単発でただがむしゃらにうっても奴を倒せるとは思えない。以前、暇なときにサイトからウルトラマンというのはカラータイマーを弱点としていると聞いたことがある。それで約50年前、初代ウルトラマンがゼットンに敗北し、瀕死の重傷を負ったことも。
もしかしたら、と彼女たちはモニターに映るダークロプスのカラータイマーに目を向ける。
「「エクス…プロージョン!」」
ダークロプスのカラータイマー目掛けて、二人の光の弾が飛ぶ。そして、巨大な爆発がダークロプスを包み込んだ。
間違いなく直撃した。果たして、効きはしただろうか?
だが、煙の中からまたしてもダークロプスが出現、ジャンナインに鉄拳をぶつけた。
『グア!』
「きゃ!」
「みんな!」
ゼロは地面に激突する前に、ジャンナインを落下予測地点で受け止めた。
なんという力なのだろうか。こいつは本当にただのダークロプスなのだろうか。
ダークロプスはゼロがジャンナインを降ろそうとしたところで、黒い炎をまとった蹴りでこちらを狙って急降下してきた。
〈ダークロプスキック!〉
それをさっきと同じようにゼロとジャンナインは避け、ダークロプスが地面に突き刺さった足を引き抜こうとした隙に、グレイがいつの間にか呼び出していたゴルザがダークロプス目掛けて光線を発射した。
〈超音波光線!〉
それに反応し、ダークロプスは突然ブレスレッドに手を擦れると、光の盾が彼の手に握られ、ゴルザの光線を簡単に防いでしまった。
「ゴルザの光線を、防ぎやがった…!」
「どうした息子よ?まさか、その程度で終わるまい」
挑発じみた父の声が聞こえ、ジロッとグレイはベリアルを睨みつけた。

「あんたに言われるまでもないっての!ふん!」

グレイは体中の力を絞り出し、真の姿であるグレイモンに変身、その影響でゴルザの体から一瞬炎が吹き上がる。
ゴルザは自身をボールのように丸くし、転がり始めた。狙うはダークロプス。彼を狙って縦横無尽にフロアを転がっていくゴルザと、それを避けようと逃げ回るダークロプス。だが、逃げ回っているダークロプスを狙って、ゼロとジャンナインはそれぞれ彼を狙って光線を放った。
〈エメリウムスラッシュ!〉〈ジャンバスター!〉
「…グ!!」
光線を受けてロボットらしくない、痛みを感じる声を上げるダークロプス。と、ここで止めを仕掛けに、転がったまま飛び跳ねてきたゴルザがダークロプスにぶつかった。
ピシ!ダークロプスのカラータイマーにヒビが入った。ルイズたちの魔法が、彼のカラータイマーにダメージをちゃんと与えていたため、もろくなっていたのだ。
ゴルザの攻撃を受け、カラータイマーを破壊されたダークロプスは壁に激突し、ズルズルと床に崩れ落ちた。
「や、やったか…!?」
倒したと思った。しかし、すぐダークロプスはヌウッと立ち上がる。思わず身構えたゼロとジャンナイン。だが、さっきと違い、ダークロプスはすぐに攻撃を仕掛けてこようとはしなかった。
「………ここ…はど…こ…だ」
かすれた声を上げ、彼はまた仰向けの状態で床に倒れた。
待てよ…。ゼロはなんだかおかしいと確信した。おぼろげな憶測、それが真実ではないかと思い、ダークロプスに近づく。
「サイト、危ないわ!」
ジャンナインの中からルイズの警告を促す声が聞こえる。ゼロはそれでもダークロプスの前に立ち、彼に尋ねた。
「サイマ、なのか?」
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