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□File2
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ロマリアの大聖堂の一室。
ベッドの上から太陽の要項を浴びながら外の景色を、まるで抜け殻のように眺めていた人物がいた。
ヴィットーリオの使い魔にしてヴィンダールヴ、そしてゴモラたちのマスターでもあるジュリオ・チェザーレである。
彼は目を覚ましてからずっとこの調子だった。自分のしてきたこと…自分たちブリミル一族の子孫が生き残るために先住民や異星人への先制攻撃は結局無駄に終わった。すべては彼女と彼女の生きる世界をどんな手を使っても守ろうとするため、だがその信念はジョゼ
ットからも拒絶され、もう償いをする気力さえからからは抜けてしまっていた。
「…」
「ジュリオ…まだご飯食べてなかったの?」
食べ物を乗せたおぼんを持ってきたジョゼットが、テーブルの上にある食料を見て尋ねる。
もう彼女が王族の身であることが明かされたのでとても王族らしからぬ行為だが、家臣たちには内緒で個人的に持ってきたようだ。
「…食欲がない」
「ちゃんと食べなきゃ…グレイ君は残さず食べてたのに」
「…世界は」
ジュリオは窓の外を見上げながら口を開いた。悔しそうに、布団の裾を握り締めながら。
「この星は生きている。そしてこの世界で生きる君を、たとえ呪われた血族の血を受け継いでいたとしても、僕は守りたかった。だが僕が…俺がしてきたことは結局己の異星人への憎しみでと6000年前の事実を捻じ曲げ、この世界を陥れる未来を繋ごうとしていただけだった」
「宇宙とか、どういう難しい話は箱入りだった私にはわからないけど、あなたは結論を急ぎすぎただけなんだと思う」
「…皮肉にも俺は自分のやり方を否定され、さらにガルト星人の手のひらで踊らされていると知って、宇宙に生きる生命も必死で生きていると思い知らされた。サイトたち、あのウルトラマンを見ていくうちにそれに気付くはずだったのに、それを認めるのが怖かった」
「…なら、どうしてあなたはそれに気づく前にウルトラマンって人たちを殺そうとしなかったの?他の星で生きる人たちが居なくなれば誰もこの世界を乗っ取ろうとしないし、自分たちを裁くこともない。でも、あなたは何もしなかった。どうしてなの…?」
「…」
「それは、グレイ君やウルトラマンさんたちがまるで縁もゆかりもない世界を命懸けで守ろうとして姿を見て、それに感化されていったからじゃないかしら。別の星の人たちも全員悪意のある人たちじゃないって。だから自分のしてきたことに、少なからず疑問を持つ
ことだってあったんじゃない?」ジュリオはジョゼットの言葉を聞き、自分のヴィンダールヴのルーンとネオバトルナイザーをじっと見る。
「僕は…」
こんな自分でも、やれることがあるのだろうか…。
彼ら…サイトたちのように。
そして彼女の使い魔となったもう一人のレイオニクス、グレイのように。
ギュッと彼はバトルナイザーを握り締めた。そして、ふと自分の横にいるジョゼットを見た。
(俺には…まだ…)

ロマリア郊外の野営地。
ベリアルが光の国で乱を起こしている間、エメラダ星では地球の対怪獣兵器を数機、整備を完了させられた。ジャンボットもジャンナインも共に整備を受け、ヒュウガたちZAPがまずギーシュらに操縦方法を教えたのだが、やはりそう簡単に飛べるわけではなかった。オートパイロット機能のある期待ならまだしも、科特隊からUMGまでの機体にそんな機能はない。さらにその機能があったとしても、自分の判断で飛べないため、的確な回避ができず、常に確率との勝負となってしまう。だから、朝から夜まで時間を大食らいながらギーシュ・マリコルヌ・ギムリ・レイナール・アリィーはヒュウガから操縦方法を叩き込まれた。特に前期に上げたメンバーの中でアリィーが最もコツをつかむのが早かったため、手早く極めることができた。
だがいきなり新しい兵器と戦術を利用するのは難しい上に、かえって勝率を下げてしまいかねないこともあるので、タバサ(まだ正式な戴冠式を終えてないため、あくまで仮である)にクリスやゲルマニアのアブレビト三世たちの協力を得て、兵の他に艦隊をいくつか揃えてもらった。それはエルフの場合も同じで、主に鉄血団結党の新たなリーダーとなったファーティマが荒れてしまったアディールに部下を連れて飛竜やまだ使えそうな、または修理できそうな軍艦を揃えてくれた。
以前ジョゼフが悪用した火石。それを今度は誰かを守るためのものとして作れるのならと、ビターシャルは自ら作り上げた火石を複数提供してくれた。
グレンたち炎の海賊たちは、宇宙からの助っ人を少しでも集めようと、一旦宇宙に飛んでいってしまった。
他にもハルナとルクシャナは主にクマノから整備士としての知識を叩き込まれ、タバサやキュルケにレイナールはオキから怪獣の知識を教え込まれた(この時のオキの講義は本人があまりにもテンションが高かったため、講義中は妙に暑苦しかったとタバサ談)。
やがて、それが他のエルフの兵士やハルケギニア各国の兵の、それも特級の者にも(期待の数に限界があるため、上級兵の一部に限られた)教えることになったが、もちろん予想していた問題が多発した。
「砂漠の化け物が、人間様の土地に住ませてやってんのに調子に乗ってんじゃねえよ!」
「何を!元はと言えば、貴様の仲間が私の友人に手を出したことが事の発端ではないか!自分の非を認めんとは、恥を知れ!」
「んだとこの長耳野郎!」
「黙れ蛮人!!いい加減にしろ!」
「ちょうどいい!ここでてめえら皆殺しにしてやる!始祖ブリミルを手にかけた悪魔だからな!始祖の顔も浮かばれるぜ!」
「シャイターンこそ悪魔だろうが!なにせ冥王を復活させて世界を荒らしたのだからな!そんな愚か者を崇拝する貴様らなぞ…」
エルフと兵士の人間の喧嘩が多発したのだ。いたって内容は実にくだらないものが多く、特に始祖の敵だからとか、シャイターンとかそんなことばかりだった。
余計な混乱を避けるため、敢えてザギの口から明かされた真実は、直接それを生で聞いた者や上層部の者しか知らされていない。
「そこの者!つまらん衝突をするくらいなら今すぐ軍から出て行け!」
「「…」」
軍人の中の軍人であるファーティマやアニエスもこれを注意するばかりで、かなり手を焼いていた。
「やはり、我々と蛮人の溝は簡単に埋まるものではないな…」
さすがに、これをアンリエッタとウェールズ、そして自分の上司であるテュリュークと見ていたビターシャルは頭を悩ませていた。
一体自分たちの対立の溝を埋めるだけのことがあればいいのだが…と思うが、そんなことができたら誰も苦労しない。
「人は一朝一夕に変われるものではありませんからね。とはいえ、これは深刻な問題ですわ」
「もう同じ世界で闘っている場合じゃないのに、目の前の問題にばかり目を向けてしまう。厄介だな…」
アンリエッタとウェールズもその意見に同調する。
「これの原因は、我々ロマリアが大半でしょう。共にあの大災厄の後、聖地を奪い返さんと聖戦を仕掛けていったのは、私の先代の教皇…」
とヴィットーリオは、自分の手をまるで汚れもののように見つめた。
「た、大変です!」
すると、ひとりの兵士がアンリエッタたちの前に走ってきた。彼女の前についたところで彼は跪く。
「申し上げます!『銀河帝国』の使者を名乗る者が女王陛下たちに対談していただきたいと!」
「使者?」
彼女たちは兵士の案内でその使者の元へ向かう。
その使者は、陣営の入口でたった一人護衛もつけずに立っていた。
「遊びに来たよ。暇だっただろ?」
その使者とは、以前グレイやジュリオを敗ったことのあるキール星のレイオニクス、グランデだった。
「君は確か…報告で聞いたキール星のレイオニクスとやらか。一体何をしに来た!?」
ウェールズの警戒心たっぷりの言葉にグランデは、相変わらずピンっとピアスを鳴らし、相手を舐めきったように口を開いた。
「あんたらがこの星の王様か。なるほどね、ホント…時代遅れな格好してんのな」
「…!!」
カチンと来る発言だが、ここは我慢した。眉間にしわを寄せてアンリエッタが尋ねる。
「使者として来られたそうですが、一体何をお伝えに参られたのです?」
「ああ、俺の雇い主からの伝言を伝えに来たって話。今から数刻後、うちの宇宙艦隊がわんさかやってくるってことを教えに俺を遣わした。ま、そんだけ」
「雇い主?何者じゃ?」
テュリュークが目を細める。
「それは来てからのお楽しみ。んじゃ…」
彼はクルクルとバトルナイザーを回して取り出すと、三枚の光のカードが飛び出し、三体の怪獣となって地上に降り立った。
一体は以前から持っていた『暴君怪獣タイラント』、もう一体は『どくろ怪獣レッドキング』、最後の一体はゴモラを機械化したようなロボット『メカロボット怪獣メカゴモラ』。
遠くからそれを見たオキは興奮した。
「す、凄い!今度はレッドキングもいますよ!しかも、機械のゴモラまでいるし!」
「馬鹿、喜ぶのもわかるがそんな場合じゃないだろうが!」
状況が状況なので、ちょうど整備道具を運んでいたクマノがオキの頭を叩く。
「攻撃してくるかもしれん。ペンドラゴンに急ぐぞ」
ヒュウガに促され、二人は彼と共にペンドラゴンに向かった。
「何を!?」
グランデを鋭い眼光で睨むアンリエッタ。
「退屈だから、あんたらの相手をしようと思っただけ。俺たちに「降伏します」って言わないんだろ?それはつまり、俺の雇い主である帝国の連中に歯向かうってことでいいんだろ?早くしないと、ほら」
グランデがピン!とまたピアスを鳴らすと、レッドキングは口から岩を吐き出し、陣のテントに向かってそれをぶつけた。
「わあああ!!」「ひいいいいいい!!!」
無論突然の襲撃に兵士たちの、特に兵士として生きてきた時間が少ない者たちがパニックを起こしてしまう。
それだけではない。さらにはるか空の彼方からレギオロイドやダークロプスが計数十機、列を連ならせて地上に降り立ってきた。
「機械の怪獣がこんなに…!?しかも、黒いゼロがあんなに!?」
ウェールズの顔に青筋が走る。
「なんてことを!」
「何睨んでんだよお姫様?敵さんは手段も時間も敵も選ばねえ。だからほら、さっさとあんたらご自慢のへっぴり腰軍をだしなよ。それとも、レイオニクスかウルトラマンとかいないわけ?」
しまいには近くに置いてあった岩の上に腰掛けて、バトルナイザーをおもちゃのように手の上で回しながら遊び出す。
「誰がへっぴり腰ですって?」
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