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□最終章・銀河帝国VSエメラダ星連合/File0
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ヴァリヤーグとの衝突に6000年間ものエルフとの対立、そしてシュウヘイの裏切りがすべてザギの計らいだった。
サイトたちは各国の重要人物たちを集め、ロマリアの大聖堂に集まってこれからどうするべきか考えていた。
「シュウヘイ、やっと会えたと思ったら、彼が最も敵視していた男に精神と肉体を乗っ取られてしまうとは…」
ウェールズは、恩人でもある仲間が敵となってしまったことで、ザギに対する怒りをにじませた。
「ふざけたやつだ…シュウヘイの事を道具みたいに…それだけじゃねえ、この世界を狂わせ、自分の生みの親たちを裏切ってヘラヘラ笑いやがっていた…いくら自分が捨てられてようとしていたからって、許せねえ…」
サイトの体はプルプル震えていた。今にも怒りをザギにぶつけたくて、仕方のない状態ということが目に見える。
「テファ、辛い…わよね?」
キュルケがテファの顔を覗き込む。今の彼女は、どうも疲れきったような顔をしていた。
「…大丈夫。こうなることは、覚悟していたから」
わかりやすい痩せ我慢だった。彼女はわざと作り笑いを浮かべてなんでもないふりをしていた。
「いつか、あいつの顔に私の魔法をぶつけてやるわ」
「嬢ちゃんと同意見だ。俺ぁ…あの黒助をぜってー許さねえ」
ギギ…とルイズは握り拳を作る。始祖の血を継ぐものとして、何より人間としてザギのしてきたことに腹を立てるなんて程度じゃない。今にでも痛い目を見せてやりたいほど。
サイトの背中に背負われたデルフも同じように憎らしげに言った。
彼はブリミルやサーシャと仲がよかった。その絆を、ザギは自分の都合で笑いながら壊した。サーシャにブリミルを殺させる、それをやらせる状況を作ったザギを許せなかった。
と、ここでヴィットーリオが口を開いた。
「しかし、ミスタ・黒崎…いえザギの言っていたことが事実だったとしても、私たちのようにあれを事実として受け止めるものは今のところごく一部でしょう。なにせ口頭による証言でしたから」
確かにザギが自分の復活のための闇を集める時、国の権力者を集めた。過去の事実をあえて明かしたのは、より自分に対する憎しみや怒りをサイトたちやハルケギニア、そしてサハラの住人たちに植え付けさせ、その心の闇を自分の復活のために利用するためだった。
自分たちの対立をなくすだなんて生易しいことをするためではないのは当然だろう。
「そうですね。でも、あのダークゴーネとかいう異星人のことも気になります。もしかしたら、ザギと結託して、またこの世界を滅亡の危機に陥れようとしていることは目に見えています。もう過去のことで同じ世界に生きる者同士で対立している場合じゃないです」
「理解を深めるに、時間がかかるだろうな。それでも、もう侵略の意思を持っている星人に目をつけられている今、我々に選択肢はないな…」
ビターシャルも、今まで6000年間エルフが守ってきたシャイターンの門を守る理由や、悪魔=虚無の担い手と対立する理由を失くした今、もう蛮人と定めていた彼らとの協定は避けられないと考えていた。統領であるテュリュークも同じである。
「わしらの同胞をぬしら人間の者を集め、一度わしらとぬしら人間の王の演説を行なっておく必要があるのう。効果は、今までのわしらの対立から考えて絶望的じゃが、やらないよりマシじゃろう」
「しかし、怪獣も異星人も一体一体が強大な力を持っている。対抗できるだけの力が果たして我々にあるのか?」
クリスが言う。確かに、自分たちに味方してきたウルトラマン、それにグレイやジュリオのように味方となっている怪獣、そしてZAPの保有するペンドラゴンと比べて、自分たちの持つ魔法の力や兵器は非力だ。オストラント号も、兵器という役目より移動に特化している。一応大砲などの装備がなされているが、地球の兵器と比べて怪獣を倒せるだけの力はない。
「ならば、我がロマリアがカタコンベに封印している『場違いな工芸品』を使うのがよろしいと思いますが」
「場違いな工芸品…つまり聖地から回収してきた地球の対怪獣兵器をですね?」
聖地を通して送られてきた地球の対怪獣兵器。それなら今まで以上に怪獣にダメージを与えることができる。
「サイト・シュヴァリエ・ド・ヒラガ殿、ZAPのクルーの方々、絶対にあなたたちの世界の兵器を侵略に使わないと、始祖の名にかけて誓います。ですから、どうか我々に力を貸していただけませんか?」
「ボス…」
「…」
サイトは、そしてZAPのメンバーも一度悩んだ。生き残る可能性が高くなるだけにしろ、今のこの世界には機械がまるで出回っていない。つまり怪獣に対抗できる兵器はない。偶然に力のある武器があるのなら、それに頼らざるを得ないのだ。
サイトはヒュウガを顔を合わせ、そして頷いた。
「…わかりました。でも、ひとつ忠告します。もしあなたがたの勝手な戦争や侵略に使うことになれば、俺は相応の罰をあなたがたに下すこととなる、そんなことさせないように、みんなに言ってくれますか?」
「もちろんです。ガルト星人やザギの計いとはいえ、私は一度この世界を破滅の危機に陥れるところでした。罪滅ぼしになるとは思えませんが、それを少しでも精算できるならこの手を自分の血と汗でいくらでも汚しましょう」
「あのさ、ハルナ」
サイトはハルナに向き直って彼女に話しかけた。
「なに?」
「実は、さっきウルトラサインが来たんだ。緊急期間命令のね」
「え?」
それを聞いたハルナ、そしてルイズと仲間たち全員は耳を疑った。
「悪いけど俺はこれから一旦光の国にもどる。それまで、みんなに地球の兵器の使い方を代わりに教えてあげてくれないか?」
その時の彼の目は、どこか不安げだった。
「…どれくらい、かかりそう?」
「わからない。でも、すぐ戻る様にするから」
「…わかったわ。用を済ませたらすぐ戻ってきて」
「ああ。分かっている」
「こういう時に戻るって、それだけマズイことなの?」
ルイズがサイトの顔を見ていう。もし怖気ついて逃げ出すための理由なら今にも殴りたくなるが、サイトがそこまで愚かだとは思えない。今までずっと共にいたし、主人である彼女がそれをよくわかっている。
「…凄く嫌な胸騒ぎがするんだ」
「あのさ、ゼロ」
グレイもここで彼に声をかけた。
「オイラも付いて行っていいかな?だいぶ長く帰ってなかったから一度見ておきたくってさ」
サイトは見逃さなかった。その時のグレイは、自分以上に嫌な胸騒ぎを感じている表情だった。
すると、ギーシュがサイトの両肩を掴んで言った。
「す、すぐ戻ってきてくれよ!それまで、僕らも頑張るから!」
「ギーシュ、仮にもUFZの体調はお前なんだから、そんな恐怖と絶望感のある顔はよせよ…頼りがいないぜ」
ギーシュの当然ながらもちょっぴり情けない姿に、サイトは苦笑いを浮かべた。
それからすぐ、サイトとグレイは変身して光の国に一時帰還した。

残された仲間たちは、カタコンベに保管された対怪獣兵器を一斉に地上に引き上げた。一部壊れていたものもあったが、ほとんどが『固形化』の魔法をかけられていたため、使えるものは発見当時のまま壊れることなく残されていた。
地上に運ばれた対怪獣兵器ジェットビートル・ウルトラホーク・マットアロー…はすぐヒュウガたちを中心に(特にクマノが活躍した)整備が行われた。その際ギーシュたちも手伝い、兵器に関する知識をクルーたちから徹底的に叩き込まれた。無論もとは根性無しのギーシュとマリコルヌは悲鳴を上げたが、途中で投げ出すことまではしなかった。
ルクシャナも積極的に手伝い、アリィーは渋々ながらも彼女について行き、手伝いをした。ファーティマも自分の部下を数人同行させ、兵器たちの知識を吸収した。
アンリエッタとウェールズ、それにクリスやヴィットーリオは、竜騎士やメイジをたくさん集めた軍の再編成に当たった。火力があっても、いきなり使ったこともない兵器だけで戦うのはとても勝算がない。だから今までの戦術も取り入れる必要があった。
そんな中…。
「疲れるわね。地球の兵器って」
道具を運び、汗をタオルで拭き取ってルイズは、はあ…とため息をついた。
「強いものほど厄介なんです。虚無の魔法を使うルイズさんもわかるでしょう?」
ハルナに言われ、「まあ、それは…」とルイズは返した。虚無の魔法も、確かに使用者から見れば厄介だ。一度使うだけでも精神力を使う。すべての系統の中で、単体でも怪獣にまともなダメージを与えるだけの威力があるが、本気をだけばブッ倒れてしまう。下手をすれば力尽きて死んでしまうのだから。
「ティファニアさん。あなたまで手伝わなくても…」
エンジン部分を露出されたガッツウィングに、修理道具を使って整備をこなしていくハルナを、テファは手伝っていた。二人して顔が真っ黒である。
「いえ、私も手伝う」
「黒崎君のこと、気にしてないの?」
「…してないっていえば嘘になる。でも、ある人から教えられたの。
泣いてばかりじゃ、何も出来ないって。それに、彼から怒られる気がするから」
ファーティマの言葉は、テファによい効果をもたらしたようだ。少なくとも、彼女が気落ちしすぎることはない。それを知ったハルナは安心したように笑みをこぼした。
「ふふ…」
ルイズはエンジン部分から顔を出したテファとハルナを見て、クスクス笑い出した。
「な、なんですか?ルイズさん」
「あはは!あんたたち顔真っ黒じゃない!!あはははは!」
ルイズに言われ、テファとハルナは互いの顔を見合わせた。すると、ルイズの笑い声に釣られたこともあって、彼女たちも思わず笑いだしてしまった。
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