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□File10
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〈ジャンバスター!〉
突如として現れたジャンボットそっくりのロボット戦士ジャンキラー。腹部のバックル状のコアより、強力なビームが発射された。
「ウワ!」
すぐ右方向に転がって回避したゼロ。ビームはゼロがさっきまで立っていた場所の後方に直撃、直撃した箇所はドロドロのマグマと化すほどの熱線で溶かされてしまっていた。
「な…!!」
あんな光線を直に受けたら、ウルトラマンの体でも耐えられるとは思えない。ゼロはジャンキラーの恐るべき性能に戦慄した。
だが、負けるわけにはいかない。
「シャ!デェアアアアアア!!」
〈ウルトラゼロキック!〉
ゼロは高く飛び上がり、炎をまとった必殺キックをジャンキラーに放つ。
「ゼロ、待ってくれ!」
ジャンボットの制止は間に合わず、ゼロの蹴りはジャンキラーに一直線に飛んでいく。
しかし…。
ガシ!!
「…な…なんだと…」
ゼロの必殺キックは止められてしまった。それも、ボールをキャッチするかのように、いとも簡単に。
脚を掴んだまま、ジャンキラーはゼロを遠くへ投げ飛ばす。
「オワ!この…」
地面に叩きつけられ、転がりながら流れるようにゼロスラッガーを投げる体勢になり、いざ投げつけようと数距離先のジャンキラーの方をむいたが…。
ガシ!!
先に動きを読まれてしまったのか、既にゼロのすぐ前に移動していたジャンキラーに頭を掴まれ、ゼロスラッガーを封じられていた。
「……!!」
攻撃を先読みされてしまっている。まるで自分が、ジャンキラーの手のひらの上で踊らされているかのようだ。
ジャンキラーの拳が、ゼロの胸元にヒットし、ゼロは大きく吹き飛ばされた。吹き飛んだ彼が地面に激突する前に、ジャンボットがかろうじて受け止めた。
「平賀君大丈夫?」
「サイト、しっかりなさい!」
「う…なんとか」
殴られた箇所をさすりながらも、ゼロは立ち上がる。
『やめるんだ!』
ジャンボットがゼロとジャンキラーの間に割って入り、ジャンキラーに止めるよう言うが、
それでもジャンキラーは攻撃手延を緩めるどころか、寧ろその手を強める。
彼の胸に散りばめられた六つの発射口から細かくも高威力のエネルギー弾を乱射し、ゼロとジャンボットを襲う。
〈ジャンフラッシャー!〉
「グア!!」
さらに手から発射してきたガトリングガンを、光の盾で防ぐ。
〈ジャンキャノン!〉
〈ウルトラゼロディフェンダー〉
「く!」
一旦攻撃せず、様子を見てみるゼロ。その時のジャンキラーは攻撃を仕掛けてこなかった。同じように彼も様子を見ているのだろうか。ヒュッと一歩踏み込んでフェイントを仕掛けると、ジャンキラーもまた一歩前に出てくる。
攻撃できるような余裕さえ与えない。まるでだるまさんが転んだ状態だ。このままだとキリがないだけだ。
しばらく様子を見た後、ゼロが光線を放った。と同時に、ジャンキラーも腹部の発射口からビームを発射した。
〈ワイドゼロショット!〉〈ジャンバスター!〉
光線同士ぶつかり合うが、時間がほとんど経たないうちにゼロの光線がジャンキラーのビームに押し返され、ゼロの肩をかすった。
「かは!な、なんてやつだ…まるで全身武器の塊だぜ…!!」
「いい気になるなよ!」
グレイがメルバに、目から光弾を乱射させてジャンキラーを攻撃するが、あまりにも頑丈なジャンキラーにはまるで通じなかった。逆にジャンキラーはメルバの上に乗っているグレイを狙って再びエネルギー弾を乱れ撃つ。
「ギェェエエエ!!」
主人を守ろうとメルバが翼で身を被ったが、爆風の影響でメルバとグレイは地上に落下した。体が丈夫だったため打撲で済んだが、やはりダメージが大きかった。ウルトラマン形態だったら今頃カラー
タイマーが間違いなく点滅していた。
落下の衝撃で動けないメルバとグレイ。そんな彼らに、ジャンキラーは容赦なく拳を振り上げてきた。
とその時、ジャンボットの体内に入るルイズが叫んだ。
「止めなさい!」
ガシャ!!
まるで呼び掛けの答えたのか、ジャンキラーは動きを止めた。
「!?」
ゼロはとっさの予想外な出来事に、その場でただ困惑した。ふと、突然ジャンキラーが空を見上げた。ゼロも釣られて空を見上げると、空では異様なことが起こっていた。
月の上から強力なビームが天に向けて射出され、地下世界の空に大きな穴を開けてしまった。
「な、何をする気なんだ!?」
メルバの背中を上から、グレイも脂汗を流しながらそれを見ていた。
『有機生命体抹殺計画、開始…』
『なんだと!?』
ジャンキラーの言葉に、驚くジャンボット。表情というものがあれば、きっと目を見開いていたに違いない。
『有機生命体…宇宙ヲ蝕ム存在。我々機械ハ有機生命体ヨリ解放サレ、全テヲ統ベル覇者トナラン…』
『何を寝ぼけたことを言ってるんだ!目を覚ませ!』
すると、天井の月が大きく口を開けた空に向かって浮かび上がっていった。そして、ジャンキラーもまたついていくように空に浮かんでいく。
『コレヨリ、地上人類ノ抹殺二移行スル』
『待て!待つんだ「ジャンナイン」!!』
ジャンボットの制止にまるで耳を貸さず、ジャンナインは月と共に地上へと消えていった。
「まずいよゼロ、追わないと地上が!」
ゼロの方を向いてグレイが強く言い放つ。
「わかってる!ジャンボット、それにルイズ、ハルナ!準備できているよな?」
「私は大丈夫、いつでもいける!」
「誰に向かっていってるの?当たり前じゃない」
『あ、ああ…』
ジャンボットの内部にいるハルナとルイズは元気よく答えたが、ジャンボットに至ってはどこか歯切れが悪そうだった。
「ジャンボット?」
ハルナは一体どうしたのだろうかと、声をかけてみると、今度はルイズが彼に話しかけた。
「…ジャンボット。そういえば、さっきあのジャンキラーのこと違う呼び名で言ってなかった?」
「そういえば、そうだよね。実は知り合いだったの?」
グレイの問いに、ジャンボットは何の躊躇いもなく頷いた。
『彼の本当の名前は「ジャンナイン」。私の弟です』
「「「「!!!!?」」」」
四人は面食らったように驚愕した。確かに外見は似ているが、この二人が兄弟だとは…。
「お、おい。なんの冗談だ?」
『冗談ではない。遥か昔、私の作られた星では、全部で九体の「ジャンシリーズ」と呼ばれる、人工知能を持った鋼鉄騎士が作られました。私はその初号機、そしてジャンナインは「九番目の戦士」と「騎士=ナイト」の意味を名前に持つ騎士でした。
まだ思い出していませんが、大きな事故は発生して私とジャンナインだけが生き残り、後に宇宙の難民となったブリミル様とその仲間を、私とジャンナインの手でこの世界に運んだのです』
「そうだったのか。お前、通りで躊躇いが大きかったんだな…」
納得したようにゼロが言う。
『ああ、だから驚いているんだ。どうしてあいつがこんな侵略者の真似事をしているのか…』
「あのさ、一つ気になってたんだけどいいかな?」
グレイが手を挙げて言った。
「さっきオイラがジャンキラーに殴られそうになった時、ルイズさんの声であいつ止まったよね?その気になれば、あのままオイラを殺すことができたのに…」
ここでゼロも言葉を発した。
「俺も気になってたんだ。ルイズの声が、奴に届いていたってことなのか?」
『私とジャンナインは、同じ人工知能を組み込まれています。主人の言葉だけは必ず届き、それを正しいか不正かを判別できるように。この時代では我々の主人であるブリミル様は生きてはおられない。
だから現代に於ける主人は、ルイズ様をはじめとしたブリミル様のご子孫だけだ』
「ジャンボット、あなたは見ただけで相手のデータがわかるのよね。
ジャンキラーも構造が同じようにできているのなら、きっとルイズさんの声が届いた時、体内にある始祖ブリミルの血に反応したんじゃないかな?
にも関わらず、その前には私たちを襲ってきた。だとしたら考えられるのは一つだけ」
ハルナの予測は証拠がないため根拠にかけているようにも聞こえたが、不思議と信憑性があった。ジャンボットも聞いていくうちに、ある一つの仮説にたどり着いた。
『彼が、操られている…?』
そうならば合点が行く。兄である自分、そして始祖の使い魔であるゼロやグレイを襲ったことにも理由がつけられる。
「とにかく、地上に戻りましょう。ここにいても、ジャンキラーたちが地上で暴れるのを見過ごすだけだもの」
「そうだな、ルイズの言うとおり、地上に戻ろう」
『ああ…』
唯一の弟が操られているショックがあるのか、ジャンボットの返事は気弱だった。すると、それを見かねたゼロが彼の肩を軽く叩いた。
「あいつのことはお前に任せる。しっかりしろよ、お前は兄貴なんだろ?俺の親父も血の繋がらない弟が沢山いる苦労人だけどよ、それでも根を上げることなんかなかったぜ」
『ゼロ…』
「さ、行こうぜ」
ゼロ、グレイを乗せたメルバの順で地上世界への穴に飛び出していった。一人残ったジャンボットには、ゼロの言葉が響いたのか彼が眩しく見えた。
「ジャンボット、私たちも行きましょう」
『は、はい。ルイズ様!』
ルイズに言われて我に返ったジャンボットも、ハルナとルイズを乗せたまま地上へと登っていった。
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