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□File9
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ジャンバードが、地面に開けた穴から地下へと消えていったのを、仲間たちはただ静かに見守った。残された自分たちに課せられたのは、ただ待つことだけなのだろうか。
が、運命はそれを許さなかった。
どこか遠くから地面がかち割られ、その下から何かが這い出てくる音が響いた。
何事かと思った時、一人のトリステイン兵がアンリエッタとウェールズの元に走り、二人の前で跪いた。
「陛下!ここから約十リーグ先、地面から鉄の化け物が出現!」
「なんですって!?」
「先住民たちの攻撃が来たのか」
ウェールズはギーシュたちUFZの仲間たち、ZAPのクルーの方に視線を向ける。
「ミスタ・グラモン」
「はっ!」
「すぐに全兵士に出撃命令が来たと伝えてくれ。その後は軍と共に敵を食い止め、被害を最小限に押さえるんだ!オストラント号を使っても構わない」
「了解!聞いたかみんな!?」
マリコルヌ・レイナール・ギムリ・キュルケ・モンモランシー・コルベールは一斉に頷いた。
「ZAPの方々も助力願えませんか?」
「微々たるものでしょうが、お役に立って見せましょう。二人とも、用意はいいか?行くぞ!」
「「了解!」」
ヒュウガ・オキ・クマノは直ちにペンドラゴンに向かった。
「私も力を貸す」
タバサもギーシュたちに歩み寄ってきた。
「タバサ、あなたは仮にも女王よ。迂闊に出てきたらダメじゃない」
親友の身と立場を案じてキュルケが下がるように言うが、タバサは首を横に振った。
「女王なんて関係ない。みんなが心配」
「力を貸すのね!」
イルククゥも準備万端の様子で気合を入れている。
「もしみんなが反対するなら、私が勝手に行くだけ」
「止めても無駄みたいね…」
彼女は頑固だから、たとえほかの誰もが反対しても自分の行ったことをねじ曲げようとはしないだろうと、キュルケは予感していた。それでもとどまって欲しかったのが本音であったが。
「行きましょう」
タバサがコクっと頷いたその瞬間、地面から土煙が巻き上がり、その中から巨大な鉄の塊が飛び出してきた。
その場にいた誰もが、一点に視線を集中させた。全身を灰色で塗りたくられた巨大なロボットと、以前ゼロも戦ったことのある巨人型のロボットが、突き破られた地面から飛び出してきたのだ。
「あれは…インぺライザー!!それにエースキラー!」
ペンドラゴンから外の様子を見ていたオキが叫んだ。
『エースキラー』は以前ゼロの戦ったゼロキラーの初期モデルで、名前の通りウルトラマンエースを抹殺するためヤプールが作り上げたロボットだ。
『無双鉄人インぺライザー』。かつてウルトラマンメビウスが地球を守っていた頃、エンペラ星人が尖兵として送り込んだことのあるロボット怪獣。両肩の光線砲門と、頭部の三連装ガトリングガンから無数の光弾や破壊光線を連射して破壊活動を行い、メビウスを一度は倒してしまうほどの性能を誇っていた。
「でも…どうしてあんなものがこんな縁もゆかりもない世界に?もうエンペラ星人はメビウスが倒してはずじゃ…」
エンペラ星人が倒されて以来、インぺライザーは一度たりとも表世界に現れたことはない。にもかからわずこんな全く関係のない世界に姿を現した。一体これはどういうこと何だろう。
「みんな、すぐオストラント号へ!」
ギーシュの指示で他の仲間たちはオストラント号に搭乗し、タバサも変身したシルフィードの背に乗って空へ羽ばたいた。
「ここでの主力は、やはり僕になるだろうな」
ロマリアの街にまっすぐ近づいていくインぺライザーとエースキラーを見上げながら、ウェールズは呟いた。
「アンは軍の兵士たちの指揮を」
「お気をつけて…」
心配する妻を安心させようとゆっくり頷いたウェールズは、十字架の形をした光に身を包みミラーナイトに変身、インぺライザーの前に立ちふさがった。
「たとえあなたがたにどんな事情があったとしても、僕らにも守らなくてはならないものがあるんだ」
「面白そうだな」
ふと、いかにも熱血そうな男の声が頭上から聞こえてきた。声の主はドスン!と音をたてながらミラーナイトの隣に立つ。
「このグレン様も手を貸してやるよ」
「助力、感謝します」
ミラーナイトとグレンファイヤーは街を背後に、せまりくるインペライザーとエースキラーを睨みながら身構えた。
『有機生命体の侵入を確認した』

一方、真っ暗で光がわずかにしか差し込まない場所。そこでいかにも強力そうなボディを持つ影が、目の前にいる別の影に語りかけていた。
『我々を作った者たちと同様、奴らも自分たちの私利私欲のために宇宙を汚すことも厭わない。直ちに抹殺せよ』
『了…解』
影は、命じた影の命令を承諾し、どこかへ転送されていった。
「ここが、地下世界…」
ジャンバードに乗って地下に飛び込んだサイト・ルイズ・ハルナ・グレイの三人。
モニターから見えるその地下世界の光景は、彼らの予想とは大きく違っていた。
予想、少なくともハルケギニアの人間でさえ知らないことが多かった、地底から機械の怪獣を遣わしたこともあって地球にも匹敵する文明があるのではと思われた。
だが、モニターから見えるこの光景はそんなものではなかった。
言葉通り、荒れ放題だった。ビルなどの建物が破壊され、瓦礫の粉塵の霧で遠くまで肉眼で見わたすことができない。
見えるものといえば、空の上にある半分に割られた月と太陽だ。
「地面の下に太陽と月?どういうこと?」
「あれ、人工的に作られた太陽と月だよ。地下に太陽の光が差し込まないから、この地下世界の人が作ったんじゃないかな?」
ルイズの疑問にグレイが説明してあげる中、サイトは別のことに疑問を抱いた。
自分たちが先住民であることを自分に伝えた時、どうしてこんなことをあのヴァリヤーグの女性は話さなかったのだ?
「一体、この世界で何があったんだ?」
「今、誰かいないか調べることできない?」
ハルナが尋ねる。
『バイオセンサーで調べて見よう』
ジャンボットはそれに応じ、直ちに自身に搭載されたバイオセンサーでこの一帯に誰かいないか調べてみる。
『かすかだが、こっから二時の方向に誰か一人だけいるようだ』
「じゃあ、すぐそこに降りてもらえるかしら?」
『了解しました』
ルイズの頼みを聞き入れ、ジャンバードは地下世界の地面に着地した。
月の影の下の場所に降り立ち、サイトとグレイは留守をハルナとルイズに任せ、ジャンバードから降りて辺りを見渡してみた。
「…」
誰も気づかなかった。隠れた搭乗者テファが密かにこのタイミングで降りていた。
「ジャンバード、本当にこの辺に誰かいるのか?」
ビデオシーバーを開き、サイトはジャンバードに尋ねてみる。見たところ、人気が感じられない。
『その辺にいるはずなのだが…やはり6000年もの間に私の機能のほとんどが老朽化してしまったのか?』
「新品級の状態で残ってたわりに中身はボロっちいとかいうの?しっかりしてくれないと困るよ、焼き鳥さん」
『や、焼き鳥だと…無礼者!!』
グレイの悪口にかなり頭にきたジャンバードは怒鳴る。ちゃっかりグレンからパクったというのは内緒。
「ん?…!」
目を凝らしながら辺りを隈なく見回したサイトは、瓦礫の山の近くに何かが、いや誰かが倒れているのを見つけた。
見たところ、文化が違うだけあって見た目も地上人のものと違う感じがする服装を着込んだ女性のようだ。
サイトには、彼女が誰なのかすぐにわかった。
「おい!大丈夫か!!」
瓦礫の傍らで倒れていたのは、あのヴァリヤーグの女性だった。ひどいけがを負っている。
彼女を見て、グレイはサイトの方に視線を向ける。
「ゼロ、この人は…?」
「俺に、この世界の真実を教えてくれた先住民の女性だ」
「ゼロ…か」
気力を失いかけ、かすれきった声でヴァリヤーグは自分を腕の中に留めているサイトの方を見つめる。
「一体、何があったんだ?答えてくれ」
「…地上に、6000年前の報復を開始しようと、我々が6000年間各次元世界から集め作り上げてきた機械怪獣たちを送り込もうとした。だが、突然機械たちが暴走して、地下世界は…一週間で…」
サイトとグレイ、それを通信機を通して聞いていたハルナとルイズに衝撃を与えた。
ヴァリヤーグたちの地下世界が、彼らが地上人への攻撃のために作り上げた機械たちによってご覧の通り破壊されてしまったというのだ。
それも、わずか一週間で。
「そ、そんな!どうして!アカシックレコードにもこんなこと…」
書かれていなかった。地上にいるブリミル一族の人間たちはヴァリヤーグとも仲良くアンれるはずだった。だが、今自分たちが見ている光景はそれとは明らかに異なるものだ。
「い、いや…実際は…我々の悲願を捨てて、地上に出て行った者たちも…いる」
「え?」
「もう、二十年前…にもなるか。ダングルテールとかいう村を作って…人知れず地上人に溶け込んで…」
そういったところで、彼女は目を閉じ、ぐったりと崩れた。
「お、おい!どうしたんだ!目を覚ましてくれ!!」
「ゼロ!そんなに揺すっちゃったらダメだ。もうこの人は…」
突然の出来事に焦って彼女を起こそうと揺り動かすが、グレイがそれをおし止めさせる。
もう、彼女は事切れてしまっていたのだ。
すると、彼らの耳に奇妙な機械音が聞こえてきた。この音、聞き覚えが…。
「相棒、坊主!後ろだ!」
「「!!」」
鞘から顔を出したデルフが喚くと同時に、二人は前方へ飛んだ。彼らの板場所にエネルギー弾が撃ち込まれ、爆発した。
着地したところで彼らは背後を振り返った。ドスン、ドスンと足音の主がこちらに迫ってくる。ジャンバードに乗っていたルイズとハルナにも、その影の主がだんだんと見えてきた。
「バドゥルバドゥル…」
「き、キングジョー!!」
ペダン星人の作り出したロボット、『宇宙ロボット・キングジョー』がその金色のボディを見せつけるように、ノシノシとこちらに迫ってきていた。
「向こうからも、何か来る…」
グレイが、キングジョーとは反対側の方を指さす。別方向からも、何かが迫ってきている。
その方から、突然紫色の光線がジャンバードめがけて飛び出してきた。
『マズイ!』
ジャンバードはすぐさま上空に移動してその光線を避けきる。四人は、光線の飛んできた方向を見て、さらなる衝撃を感じた。
「!!!!??」
『……有機生命体…ノ…抹殺……』
光線を撃ってきたのは、ジャンバードに似た飛行機械だった。
『あの機体は、まさか…』
特に驚いていたのは、ジャンバードだった。自分の偽物の出現に戸惑った様子とはまた違っていた。
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