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□File3
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「なんだ…あれは?」
ルクシャナとアリィーは、そして復興作業に当たっていたエルフたちはノアの神=ウルトラマンネクサスとどこか似た黒い巨人を見て呆然とした。
ネクサスはどこか安心感が持てる姿をしていることに対し、あの黒い巨人は姿かたちからして不気味なオーラを漂わせている。
「もしかして、あれもノアの神だとか?」
「…違う」
テファがルクシャナの憶測を否定した。自分だってあれと似た姿の巨人と、彼らが行なってきた悪行の数々。それを思い返せば信じてはならない危険な存在だと認知していた。
「あれは…悪いウルトラマン…!」
危険を感じ取ったからこそなのか、彼女は全速力でネクサスの元へ走り出した。
「ちょ…あなた危ないわ!」
「ルクシャナ!」
危険な場所に自ら行くテファを追ってルクシャナが、そんな婚約者を無視できずアリィーもまた彼女たちを追いかけた。

「ルシフェルだと…!?」
ダークカミーラ、ダークヒュドラ、ダークダーラム、ダークカオス。その四個体に続いてTLTのデータファイルにも確認されなかったウルティノイドの出現にネクサスは思わず硬直してしまった。今度のウルティノイドは先ほど挙げた四個体のように異世界の悪のウルトラマンたちをベースにしたものでもなく、完全な未知のものだ。
この巨人も石堀が自分に送った刺客なのか?
いや、今はこいつの正体なんかよりこのルシフェルの手に捕まっているユリアを解放することだ。
今やアディールの街の空を覆い尽くした侵略派ペガッサ星人のダークゾーン。これをなんとかできるのは穏健派ペガッサ星人のリーダーであるユリアだけだ。
「そいつを離せ」
脅しのため少しドスの入った声でルシフェルにいうが、予想していたとはいえやはり従う素振りを見せなかった。
「…断る」
「そうか…」
〈マッハムーブ〉
短く言葉を切らした彼はアームドネクサスを重ね、赤い残像を残しながらルシフェルに急接近し、ルシフェルの手の中に捕まっているユリアに手を伸ばした。
だが、ルシフェルはバックステップで咄嗟に後退し、カウンターとして翼から羽を飛ばす形で光弾を打ち込んだ。
〈ダークレイフェザー!〉
〈パーティクルフェザー!〉
ネクサスもそれを弾くため、手から三日月型の光弾を放ち、ルシフェルの放ってきた光弾を打ち消した。
「もう、こいつは始末しておくか…」
ルシフェルは手に包んだユリアを見下ろし、彼女を握る手を強め始めた。
「あああああ!!!」
「!」
すぐに攻撃しようと光線の構えを取ろうとしたが、それを察知したルシフェルはユリアを握る手を盾のように突き出した。
こちらが攻撃したら彼女に攻撃を受けさせるつもりだということがひと目でわかる。人質を取られ、ネクサスは悔しそうに手を引っ込めた。主に人質などの人命救助や敵の捕獲に使うセービングビュートも、うかつに使うことはできないだろう。もし使用してもすぐ避
けられてしまうだろうし、エネルギーを無駄に使ってしまう。と、その時だった。
バアアアアアアアン!と大きな爆発がルシフェルの背中で起こった。
ルシフェルとネクサスが、ルシフェルの背後の方へ目を向けると、
杖をルシフェルに向けていたテファの姿があった。ここのたどり着くまでの間にエクスプロージョンの詠唱を完了させていたのだ。
「小賢しい悪魔め…」
機嫌を悪くしたのかルシフェルはテファに向けて拳を振り上げてきた。
「危ない!」
悲鳴を上げるように彼女を追ってきたルクシャナが大声を出す。だがルシフェルの拳はテファに届かなかった。
〈セービングビュート!〉
ルシフェルが彼女に気を取られている間にネクサスが二本の光の縄でテファに振り下ろされようとした腕を縛り、そしてルシフェルの手の中に捕まっていたユリアを自分の手の中に吸い寄せた。
一旦彼女を下ろしたほうがいいだろう。戦いに巻き込んでしまえば、今空だけでなく、今この星をおおいつくそうとするダークゾーンを消滅させる者がいなくなってしまう。
ネクサスは彼女を砂漠に下ろした。
「ルシフェルは俺がなんとかする。あんたは今のうちに」
「ありがとう…でも、最期に一つ約束して欲しいことがあるの」
「手短にな」
「あの子を、フーちゃんを助けてあげて」
あのファーティマを助けろ?ユリアの発言にネクサスは一瞬疑問を抱いた。あの女が何かに巻き込まれたような口ぶりがどうも引っかかったのだ。
だがそれを尋ねる間もなく、ユリアは再び光となって昇天するように、今度こそ空で段々と大きくなっていくダークゾーンの中に飛び込んでいった。
これでなんとかなるだろう。あとはあのルシフェルだ。
右拳にエネルギーを貯めてそれを空に放出、メタ・フィールドを展開させ、自分ごとルシフェルを包み込んだ。それを見てテファもメ
タ・フィールドが消える前にその中に飛び込みルクシャナたちもその中に入り込んだ。
「なんて暖かい光…」
思わずルクシャナは展開されていくメタ・フィールドの輝きに見入っていた。
だが、その暖かい光のぬくもりは、あっさりと打ち消された。
翼を一旦消したルシフェルが両腕を広げた瞬間、彼らの頭上に黒い暗雲『アンノウンハンド』があらわれ、メタ・フィールドを構成していた金色の光が、雲の方からだんだんと不気味な赤紫色に染まっていく。
(ち、やはりダークフィールドか…)
心の中でネクサスは舌打ちした。このエルフの大地に来てからもあの男は自分を陥れる策謀を張り巡らしていると考えるとむかっ腹が立つが、とにかく今は目の前の敵を倒すとこが先決だ。
じり…と互いを見据えながら二人の巨人は身構えた。
「ハ!」
ルシフェルのハイキックが先に飛び出してきた。それをよけたネクサスもまた上段回し蹴りを放つも、ルシフェルはそれを避けて、拳を突き出してきた。ネクサスはそれを受け流したが、ルシフェルのわき腹を狙った蹴りが炸裂、怯んでいるところを後ろ蹴りでネクサスを突き飛ばした。
「グゥ!」
吹っ飛ばされたネクサスが地面に激突した瞬間、ルシフェルは翼を出現させ、翼から無数の光弾を羽のように飛ばした。
〈ダークレイフェザー!〉
しゃがんだ状態に体制を整えたネクサスはそれをなんとか自身の真横に転がって避けきり、立ち上がったがそこにルシフェルの手が自分に降りかかってきた。それを押し返そうとするネクサスは、力を振り絞ってルシフェルを押しのけた。
再び距離をとって互いを睨みながら巨人たちはファイティングポーズをとっている。こうして見ているだけで、ダークフィールドの岩の上にいるテファたちは空気の重さを感じた。
「ジュ!」
再び翼を消したルシフェルは右拳を突き出し、それを見切ったネクサスはその腕を捕まえてルシフェルを投げ倒そうとしたが、ルシフェルは側転してすぐ体制を整え、ネクサスの胸元を押すように蹴りつけた。
「ウワ!」
さらなる追撃としてルシフェルはネクサスを飛び越え、頭上から彼の右肩に向けてかかと落としを打ち付けた。
「デュオ!」
「ガハア!!!」
右肩に深いダメージを負わされ、ネクサスはその場に片膝を突き、痛みだした右肩を押さえた。
その隙にルシフェルは左手でネクサスの右腕を、右手でネクサスの首を締め上げた。
「グォア…ゥ…!!」
とことん締め上げて苦しめた後、ルシフェルはネクサスをハンマー投げのようにぶん回して投げとばした。うまく着地し切れたものの、間も与えずルシフェルのまわし蹴りがネクサスを襲った。
〈バーストクラスター!〉
「グワア!!」
蹴られた箇所が火花を起こし、ネクサスは吹っ飛ばされた。
ルシフェルは容赦することなく、大きめのエネルギーボールを作り出し、それを空に向けて発射した。エネルギーボールはやがて分裂し、雨のようにネクサスに降りかかる。
〈サークルシールド!〉
咄嗟に右手を頭上に掲げて、傘のように光の盾を作り出して次々と降りかかる光弾を防いだが、正面ががら空きなのをいいことにルシフェルは両腕にエネルギーを溜め込み、さらに強力な必殺の光弾をネクサスに向かって発射した。
〈ダークレイ・ジャビローム!〉
「ムゥゥゥ…デア!」
光弾がネクサスに直撃し、ネクサスの立っていた場所は大きな爆発に飲み込まれた。
「グォ…アア…!!」
ひどいダメージを負わされたネクサスはその場に手を着いた。さらにまずいことに、彼のコアゲージも危険を知らせて赤く点滅し始めた。
ピコン、ピコン…
「!!」
ずっと彼の戦いを見てきたテファだ。この意味を知らないままでいるはずもなかった。彼の体力がもう残り少ないことを。
「デアアア!!」
ルシフェルがこちらに走って迫ってきている。止めを刺しに向かっているのだ。
ここで負けるわけにはいかない。いや、負けられないのだ。大切な人を守るために。
突き出されたルシフェルのジャブを、スライディングでルシフェルの背後に回り込むことで回避したネクサスは、すぐ立ち上がってジャンピングキックをルシフェルのわき腹に叩き込んだ。
「クハ…!!」
蹴られた箇所を押さえながらルシフェルは膝をつく。
〈シュトロームソード〉〈覇風撃!〉
「デァ!」
光の剣を作り、鋭く研ぎ澄ませた切り裂く風の刃を飛ばしてルシフェルの右足にぶつけ、ルシフェルの右足から血のように黒い闇が吹き出した。
「な…!?グヌォオオ!!」
ここで畳み掛ける。ネクサスは両腕を、円を描くように一周させてエナジーコアを輝かせると、ルシフェルに向かってY字型の紅い光線が直撃した。
〈コアインパルス!〉
「ハアアアア…タア!!!」
「グアアアア!!」
ルシフェルは光線を受けて大きく後方に吹き飛んだ。それでも立ち上がりはしたが、ダメージが大きかったこともあってかなりよろめいていた。まるで憎らしげな眼差しでネクサスを睨むルシフェルは、うっすらと消えていった。
「はあ…はあ…」
同時にネクサスも疲れがどっときたのか、片膝をついて白く発光した後消えていった。
ダークフィールドも両者が消えたことで消滅した。
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