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□File5
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「グレええイ!どこだーーー!!?」
ペンドラゴンは現在ロマリアの上空を飛んでいた。ジョゼットを巡って、ジュリオと戦いだして以来、グレイの行方が分からなくなってしまったのだ。
現在機械に詳しいクマノにペンドラゴンを任せ、オキはスピーダーβ、ヒュウガはαに乗って上空からグレイを探している。
「ったく、特別に休みを与えてやったら帰ってこないままだ」
「どこに行ったんでしょうね…」
通信機を通して、ヒュウガとオキは地上を血眼になりながら眺め、グレイを探し回る。
「バイオセンサーにもあいつの位置は特定できないか?」
「無理ですね。このあたりにも人口密集地がたくさんあって、とても彼の位置を特定なんてできません」
「…そうか」
通信機から聞こえる豪快そうな声のトーンが低くなっている。
「ボス?」
「いや、なんでもない。なんだか嫌な予感がしていてな」
ごまかすように言うヒュウガだが、そこでペンドラゴンを操縦していたクマノから通信が入った。
『ボス、ここから南東の方角から高エネルギー反応を探知しました!それもかなりのものが密集しています!』
「本当か、クマノ!?」
『ええ、今までにない強い反応があります』
「よし、全員ペンドラゴンに集合!もしかしたらそこにグレイもいるかもしれん」
オキとヒュウガを乗せた各スピーダーはペンドラゴンを連結し、反応の示された南東の方角に進路を向けて発進した。
「っ…」
サイトがボラジョと戦う数時間前、グレイは足を引きずりながら荒野を歩いていた。グランデと同様、彼も強かった。すでにバトルナイザーはネオに進化していて、彼の操る怪獣はとんでもなく強かった。ダメージはそれなりに追わせることができたものの、結局彼は
敗北し、ジョゼットもさらわれてしまった。
「あいつ、どうして彼女を攫ったんだ?」
一体どうして世間のことになんの縁もないはずの彼女が、見ず知らずの男に攫われたのだ?考えても何も浮かび上がってこない。
(とにかく、あいつを追わないと。ジョゼットがもしかしたら危険な目に合ってるのかもしれない)
考えるよりまず行動。そう思った時だった。先日サイマを捕まえた、ガーゴイルたちが現れた。証拠にシェフィールドが刻んだものと同じ、紫色に光るルーン文字が刻まれている。彼らはすぐさまグレイを囲んで彼を取り押さえてしまった。
「な、何するんだ!放せ!」

一方、教皇の命令でルイズの連れさらわれた場所を探していたジュリオは、リトラの背に乗りながら、上空からなく探していた。
(邪魔が入らなければいいんだが…)
彼の言う邪魔、それは以前ジョゼットをあの修道院『セント・マルガリタ修道院』から連れ出すときに現れた少年、グレイのことだ。今自分より彼の方がジョゼットと心を通じ合わせているし、あの時はうまく注意を引かせ、ジョゼットを無理矢理にでも修道院から連
れ出すことができたが、いずれ本格的に邪魔をしてくるのではないかと懸念していた。
表向きには全く知られていない、いや知られてはいけないこの計画の邪魔を…。
(何も知らないガキなんかに、邪魔をされてたまるか。この星、何より彼女のためにもな…)
この計画にはジョゼットだけじゃない。今は自分ととある星人を通じて、宇宙にむけて先制…、さらに計画の規模を拡大するには、ルイズやテファも必要だった。正確には、彼女たちの『虚無』が。
空を飛び回っていると、彼は見たこともない怪しい建物を発見した。空を貫く槍のような高い塔、そしてその下にドーム状の建物がある。それもハルケギニアでは見かけない作りだ。周りには見覚えのある船がある。帆にはガリアの紋章が刻まれていた。
まさか、ルイズはここにいるのか?
しかし、邪魔とは常に何かをなそうとするときには必ずつきまとうものである。
降りてみようとしたその時だった。
「!」
どこからか灼熱の光線が彼を乗せているリトラを狙って放たれた。それをかろうじてリトラによけさせ、ジュリオは光線の飛んできた地上を凝視した。
怪獣だ。それもいくつもの怪獣を合成したような姿をしている、不気味な怪獣。
『暴君怪獣タイラント』。
そしてその怪獣の足元にその主人らしき、赤くて変わった形をした軽装を身につけた男がいる。耳につけたピアスを指先で鳴らしている。降りてこいよ、と言ってるように挑発的な手招きをしてこちらを見ている。
また邪魔が入ったか。ちっ!と小さく舌打ちしたジュリオは一旦地上に降りてその男の前に降りた。
「全く、つまらないやつばっかりで飽き飽きしていたが、騙されたと思って雇われて正解だったな。お前強そうだな」
「…なんだ君は?」
「そうです、私がキール星人です。名はグランデ」
すこしおちゃらけた言い方と敬語で自己紹介した男。以前グレイを敗北に追い込んだ男、グランデだった。
「星人だと?」
とっさにジュリオは懐からネオバトルナイザーを取り出した。星人と聞いたら見逃すわけにはいかない。始末しなければ危険だ。ジュリオの思考はこの男を危険人物と定めた。
だが、どうも彼の警戒心が強い。魔法学院の女子生徒たちへのキザったらしい態度もない。星人を目の前にしてサイトたちの知る彼の姿からはあまり想像できないジュリオがそこにいた。
「へえええ、こんな辺鄙な星にもお前みたいなレイオニクスが生きてんだな。お前と俺を含めると、あと三人程度か。さてと…」
ネオバトルナイザーを持つレイオニクス。それによって動く怪獣は、通常の怪獣と比べると俄然戦闘力が大きくなる。戦闘狂で、同じよ
うにネオバトルナイザーを持つグランデは満足そうに感心しながらジュリオのバトルナイザーを凝視する。
クルクルと手でネオバトルナイザーを回転させながら彼はそれを手にとった。
ジュリオもバトルナイザーを握る力を強め、天に掲げた。
【バトルナイザー、モンスロード!】
ジュリオのバトルナイザーから金色の光のカードが射出され、『古代怪獣ゴモラ』となって地上に降り立った。
「キシャアアアア!!」
「ほお、ゴモラか。少しは手応えありそうだ。遊んでやれ、タイラント!」
「ギエエエエエエエエ!!!」
グランデの命令に応えるようにタイラントは猛猛しく吠えた。
「一体なにをはじめる気?何が望みなの?まさか、戦争を…?」
「戦争?俺をそんなものを望んではいない。というより何も欲していない。ただ、試したいだけだ」
何も欲していない?これだけの準備を整えてなにも欲していないとは、だったら彼は何をしようというのだ?
「知ってのとおり、私もあなたの使い魔であるウルトラマンと同じ虚無の使い魔…『神の頭脳ミョズニトニルン』。この始祖の円鏡を他の担い手に当てれば…」
シェフィールドは、先日元素の兄弟に盗み出させた始祖の円鏡にル
イズの顔に向け、彼女の顔を映し出す。すると、鏡に映った彼女の顔の上に、ルーン文字
が刻まれた。そしてこんどはジョゼフに鏡を向けると、ジョゼフはそれに手を当てた。鏡に映っていたルーン文字はジョゼフの手を通るように、彼の中に消えて行った。というより、吸い込まれたというべきか。
「本人の意思と関係なく、それも簡単に一人の担い手が使う虚無の魔法を、他の担い手に映すことが可能なのさ」
「破壊の魔法、エクスプロージョン。これが必要だったのだ」
薄く笑うジョゼフはそういって懐から、メラメラと燃え上がるような輝きを放つ火石を取り出す。
「俺自身の力の強化と、この火石の威力を確かめるためにな」
彼はそういってシェフィールドを見ると、彼女は頷いて火石を受け取り、船の操縦をしていたガーゴイルの一体に手渡す。ガーゴイルはソラへ飛び立つと、ジョゼフは杖を構えて呪文を唱え始めた。ルーン文字と同じ、あの呪文を。
「エルオー・スーヌ・フィル・ヤルンサクサ…」
彼が呪文を唱えていく中、とにかく遠くへ飛び続けるガーゴイル。ちょうどガリアの首都リュティス上空。
そして、呪文の詠唱が終わったと同時にジョゼフは杖を振りおろし高らかに叫んだ。
「エクスプロージョン!」
瞬間、白い光の玉がガーゴイルの方に向かって飛び、直撃した。直撃と同時に爆発が起こって火石に引火、すると…。
ドオオオオオオオオオオン!!
まばゆい光が視界を奪い去り、通常のエクスプロージョンの威力とは比にならない、とてつもない威力の爆発が起こり、リュティスの町を覆った。爆発の衝撃はルイズたちのいる艦隊にも襲い、ガラスが割れて飛び散った。
光が晴れると、リュティスの街は見るも無残な姿に変わり果てていた。街は火事だらけ、住宅も崩れてしまい、大きな地震でも起こったかのような惨状だった。
自分の国の首都を、何のためらいもなく。
一体今のたった一発の爆発でどれだけの人間が傷ついたのだろう。そう思うと悲しみや怒りが込みあがってくる。ルイズはそうだったが…。
「見事な威力だ。エルフの技術と虚無が合わさるとここまでの力になるのか」
ジョゼフは平然としている。今ので自国の民をどれだけ殺したか、それだけの罪さえ感じていないようだ。
「なんで…なんでこんなことができるの!!」
怒りをにじませ、ルイズは目尻にため込んだ涙を飛び散らせた。
「これだけの威力なら、『あれら』に取り付けていた火石の問題は何もないな」
「答えなさいよ!あんたの目的は!?」
無視するジョゼフを怒鳴ると、彼は背を向けたまま口を開いた。
「目的か…目的は破壊と殺戮、それ自体だ」
「な…」
さらっと放たれた残酷な返答にルイズは動揺した。
「俺は、知りたいんだ。それだけ残酷なことをすれば後悔できるのか、お前に用になくことができるのか」
「そんなことのために…」
そんなことのために自分の国を自らの手で破壊しようというのか。王族どころか、人としてあまりにも非道なジョゼフ。善人なら誰でも怒りを覚えてしまうだろう。
遥か彼方の空を眺めながらジョゼフは言う。
「大問題だ、優秀な弟の影にずっと心を殺してきた俺にとっては。シャルル、幼い頃は楽しかったな。だがお前が魔法に目覚めてからすべてが変わった。あから俺の心は乾く一方だ。どれだけの富を得ても、どれだけの民を殺めても、癒されることはない。
しかし、町ひとつをこんな状態にしても、俺は何も感じないとは…。
ミューズよ、船を例の場所に」
「はい」
ルイズたちを乗せた船は、リュティスから南東の方向に進路を変え、ジョゼフの言う『例の場所』に直行した。
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