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□File10
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宇宙…
「デア!」
ハルケギニア大陸の存在する星『エメラダ星』から離れた空間で、凄まじい戦いが起こっていた。ある世界で姿を消してから、今や伝説の英雄となっていたダイナミックヒーローと、もう一体虫に酷似した異星人の戦いが繰り広げられていた。
アスカ・シンの変身したウルトラマンダイナと、初代ウルトラマンとの因縁からずっと地球を狙い続けた永遠のライバルというべき存在『宇宙忍者バルタン星人(ベーシカルバージョン)』。
なぜダイナ、いやアスカがこんな場所でベーシカルバルタンと戦っているのか?
イザベラを救出した後、彼は宇宙に旅立ったはずだった。しかし、その道中で彼はバルタン星人たちに危険人物とみなされ、攻撃を受けそうになったところをダイナに変身、彼らと戦うことになったのである。だが、それだけではなかった。
「早く行け!落とされるぞ!」
ダイナが何やら小さな、ベーシカルバルタンを取り押さえながらヤドカリの殻のような飛行物体に呼びかけている。その物体は応えたのか、すぐに星の方へ姿を消した。
「ジュワ!」
ベーシカルバルタンと突き放し、攻撃に転じようとしたがベーシカルの両手のはさみから放射された光線がダイナを襲う。
「グ!」
ダイナがひるんでる隙に先ほどの飛行物体を追いかけようと、ダイナを無視して星へ向かおうと行くベーシカルバルタン。だがダイナもそれを阻止しようと急接近し、バルタンを背後から捕まえた。だが、逆にバルタンの光線を受けてしまい、また離されてしまう。そ
れでも諦めず、彼はベーシカルバルタンの前に先回りし、バルタンを星から反対方向に蹴り飛ばした。ベーシカルバルタンも受け身をとって体制を整え、光線を放射してダイナを攻撃、それをダイナが避けている隙にはさみをダイナの胸元にぶつけた。
「ウワアア!」
「フン!」
宙を舞うダイナに光線を再び発射するバルタン。無論やられっぱなしを許すまいとダイナも必殺光線で応戦した。
〈ソルジェット光線!〉
「ジュワ!」
光線と光線がぶつかり合い、大きな爆発が起こった。そして、一つの光は星から離れ、もう一つは星の引力に吸い寄せられ、地に落ちて行った。

「すいませんでした…」
たんこぶを頭に乗せたサイトは土下座した。あの語、一度学院に戻ってきて現状の把握(シュウヘイとテファの行方や各国の現状)をした直後、彼は体罰を受けた。
彼の前にはルイズ、ハルナ、シエスタ、タバサが彼を、見下ろしている。無事を喜んでいないと言えば嘘になるが、彼女たちは怒っていた。理由は彼が無理に自爆技を使い、挙句の果てに記憶喪失になったことである。UFZの男性陣のほぼ全員が(あとで骨を拾うか
ら…)と彼を見捨ててしまった。
「まったく、君という奴は女泣かせだな」
「あんたもね…」
モンモランシーはギーシュを横目で見ながら呟く。
「まあ、なんにせよ戻ってきて何よりじゃないか」
コルベールが彼女たちを宥めてはいるが、四人のサイトラヴァーズは怒りを納めてはいなかった。
「本当に反省してる?」
「もう使いません、はい…」
言われなくてもサイトは〈ウルトラゼロダイナマイト〉を使うつもりはなかった。メビウスがあの技を使うのに必要な『ウルトラ心臓』の代わりに『メビウスブレス』を代用したように、自分もウルトラゼロブレスレットを代用したが、失敗だった。助かりはしたものの、記憶が一度吹っ飛ぶほどのリスクがあるのだ。もう一度使えば、今度こそ助からない可能性が高すぎる。
「ダメ!許さない!あんたはしばらくごはん抜きよ!シエスタもまかない一つ上げないでおいてね」
「はい」
「ええええええええええええ!?」
とサイトが絶叫した時だった。突然何かがサイトの頭の上から落ちてきた。
「ぐぼぁ!!!!」
落ちてきた物体のせいでサイトの頭は地面にめり込んでしまう。急に何かが落ちてきたものだから誰もがびっくりした。
「ひ、平賀君大丈夫!?」
「だ、だいじょばねえ…」
頭の上に乗っていたのは、奇妙な巻貝だった。それも普通の巻貝と比べると大きめのサイズだ。それをハルナがどかし、サイトはズボッ!と土まみれの顔を抜いた。
「なんだ、この巻貝?」
ギムリは巻貝を、目を凝らしながら見る。とその時、巻貝の底が伸びてミニチュアハウスのような小さな扉が現れると、その扉が開かれ、二つの小さな影が飛び出してきた。
「わわ!!!な、何!?」
びっくりするあまり腰を抜かして自分の球体のような体を転がすマリコルヌ。
出てきたのは、小さなヤドカリのような二人組だった。それも二足歩行の。
「お、お前…バルタン星人!?」
サイトはその小さな二人組を見て声を上げる。バルタン星人は自分たちウルトラマンと長い因縁を持つ宇宙人だ。なぜこんな大胆にも自分たちの前に現れたのだ?
「その通り、僕はバルタン星人。名前はタイニー。僕より小さいこの子はシルビィ」
オレンジ色の方のバルタン、タイニーは礼儀正しくお辞儀した。もう一人のさらに小さい方のバルタン、シルビィは緊張しているのかタイニーの後ろに隠れている。
「僕とシルビィはこの星に危機が迫っていることを伝えに来たんだ。ね、シルビィ?」
「う、うん…」
「この星の危機?何かが、来るっていうのですか?」
シエスタが尋ねると、二人はコクッと頷いた。
「信じられないわ。どうやってこんな小さなおもちゃで宇宙を旅できるのよ?」
サイトが地球から来た話をすぐには信じなかったように、ルイズはそうすぐには信じなかった。決してこの世界以外に、文明の存在を信じていないわけではない。あくまで確認しておきたいのである。
「バルタン星の科学なら、空間移動なんてお茶の子さいさいなんだ。」
と、二人が宇宙船と呼ぶ巻貝から離れると、タイニーはちょんちょんと自分の両手のはさみを叩き合わせ「バルルン♪」とおとぎ話の魔法を唱えるようにいうと、一瞬にしてその巻貝は姿を消した。
「消えた…」
「少しは信じてもらえた?」
「え、ええ…」
ものをパっ!と消す魔法なんて存在しないから、びっくりして歯切れ悪くルイズは答えた。
「実はね、僕たちが『エメラダ星』と呼んでいるこの星は、噂では他の星に侵略の手を伸ばしているって噂を、過激派のバルタン星人が聞いたんだ。それで確かめに調査隊を派遣し、その犯人を捕まえたんだけど、本当だったみたい」
「この星の人間が侵略だって!?」
「馬鹿な!?そんなはずが…」
タイニーの言葉は、その場にいた者たち全員に衝撃を与えた。この世界の人間が侵略行為を働いている!?信じられるはずもなかった。
今まで侵略されつつあったのは自分たちだったのに…。
「でも、改心の余地があるって逆に穏健派のバルタンもいる。僕とシルビィはその使者なんだ。こんなみじめな姿に進化したのは、はるか昔僕たちの祖先が核戦争で世界を荒らしてしまったのが原因なんだ。その過ちを未然に防ぎたいの。
あなたにも、あなたの仲間にも協力してほしい。お願い!ウルトラマンゼロ」
「お、お願いします…」
タイニーとシルビィはサイトの方を向き、同時にお辞儀した。この二人はサイトの正体を知って協力を求めているようだ。これにも驚いたが、次から次へと驚きの連続からか、リアクションが薄くなっていた。サイトは首を傾げて思考する。
「そうだな…俺もむやみに君たちを不審には思いたくないな。それに長年争い合っていたバルタン星人を和解できるいい機会だ。君たちを信じるよ、タイニー、シルビィ」
協力の意志を示してタイニーの小さな手を軽く握ったサイトだが、ハルナを除く仲間たちの大半は憤慨していた。
「待ちたまえ!この世界の人間が侵略だなんて、でたらめもいいところじゃないか!!何を根拠に!!」
「そうよ!これ私たちに対する侮辱じゃない!!」
ギーシュやルイズがタイニーたちに怒りの形相を露わにする。自分たちこそ被害者だというのに、侵略者扱いされるなどこの上なしなほどの屈辱だった。
「ごめんなさい!でも、実際に起こっていたことなの。見てみる?」
タイニーは再び「バルルン」と唱えると、サイトたちの辺りが真っ暗になった。
「ちょ…いきなり夜に!?なにをする気?」
モンモランシーが景色の急な変化に動揺するが、タイニーは落ち着かせようと彼女の肩に飛び移った。かえって驚かせていたが。
「ひゃあ!?」
「落ち着いて。ほら」
タイニーがサイトたち全員に、自分が指差した方を向くように言うと、彼らの目に信じがたい光景が映された。
「そんな…これって!?」
格好は戦火で見えにくくて確認できなかったが、彼らは目に飛び込む雷、突風、炎…間違いなかった。自分たちこの世界のメイジが良く多用する『魔法』だった。
「どういうことなんだ?だいたい、この世界の人間が他の星に行くどころか、他の大陸に行くと言ってもアルビオン位なのに…」
レイナールが信じられないといった様子でいう。無論あの無表情の目立つタバサも、あまり動揺するしぐさを見せないキュルケも驚愕する。
その通り、この世界の科学力で宇宙に行くなんてまずあり得ないはずだ。
「君達でも知らないの!?」
事実を話したタイニーも彼らがこのことを知っているとてっきり思い込んでいたようだ。それでも彼らを信じて教えたのは、ウルトラマンであるサイトの存在が左右したのだろう。
「これをやったのは、この世界でも一握りか、またはこの星の人間の名をかたった第三者のようだね。だったらゼロもまだ大丈夫ってことか」
「大丈夫って、何がです?」
シエスタが問うと、タイニーは少々重苦しい口調で言った。
「もし、一つの星の人間が全宇宙の知的生命体から侵略者とみなされたら、その星を守った人も故郷に帰れなくなり、断罪されるんだよ」
それを聞いて、ルイズたちはサイトに視線を集中した。どこか蒼白な表情になっている。自分たちの頼れる存在が…。
「そうだ…もし俺が侵略者を、身を挺して守ったりしたら光の国から今度こそ追放されてしまう…どの星でも生きることを許されず、永遠に孤独にさまよう放浪者になって…」
「大丈夫だと思うよ。だってこの星の人は決して悪じゃない。ただやるべきことをまだ見つけきれていないだけ。平賀君が咎られる理由なんてないよ」
「ありがとう、ハルナ…」
嬉しくもサイトはどこか乾いた笑みをハルナに浮かべた。不安だったのを必死に押し殺しているのかもしれない。もしこの星の人がそんな真似をしたら、自分が宇宙をさまよう以上に耐えられない。サイトほどの善人ならきっと。
「ところで、その過激派がこの世界を狙っていると言っていたが、それをどうにかするために我々を巻き込んだのか」
コルベールの言葉にタイニーはコクッと頷いた。
「そうです。勝手ながらすみません…」
「いや、私からもご助力感謝します」
「これから僕たちはあなた方と行動するんですけど、大丈夫ですか?」
「大丈夫だと思うけど、まず君の姿…」
サイトに姿を指摘され、タイニーはあ!と声を上げた。この姿のままだと騒ぎを招く。
「この姿のままだとこの星で活動できなかった。シルビィ」
タイニーとシルビィは互いに顔を見合わせながらはさみをちょんちょんと叩いて「「バルルン」」と唱えると、蓋路の体が高速回転し、回り終えるとその姿は一瞬にして変わった。
タイニーは地球人の女子高生姿に、シルビィはまだ7歳ほどの男子小学生に変わっていた。
女子高生と聞けば、男ならなんとなくセーラー服姿の美少女を浮かべる。美女といえばそう、この男が動き出す。
「おおおおおお!!!!美しきレディに…ごぼあ!?」
残念なことに、女子高生姿のタイニーの手の甲にキスすることさえかなわなかった。怒ったモンモランシーが水魔法で彼の顔を水球の中に閉じ込めてしまった。無論仲間たちの大半が呆れたが…。
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