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□File6
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「ジュワ!」
「シャ!」
暗雲と夜の闇が渦巻く中、一人の銀色の戦士と赤き戦士がある怪物と戦っていた。
声にならない何かの音を発しながら暴れる、鎧の戦士と。
「デュ!」
赤き戦士は頭に着けていた三日月状の短剣を手に、鎧の巨人と戦う。銀色の戦士も後方支援として遠くから光輝く輪を放つが、鎧の戦士の体に当たった瞬間砕け散ってしまう。
鎧の巨人が銀色の戦士に向かって、手に持っていた刺股の矛先を向けると、暗黒の光線が銀色の戦士を襲う。
「ウォワ!?」
それを中断させようと赤き戦士は額に埋め込まれし宝珠から緑色の閃光を発射したが、鎧の戦士にびくともしなかった。
やがて、銀色の戦士はその輝きを失い、背後にそびえる山に貼り付けられた。
そして赤き戦士も両腕を捕まれ身動きがとれなくなってしまう。
「ジュ…!」
やがて彼も、鎧の戦士の邪悪な瞳の輝きを見た瞬間、姿を消した。消える間際に、自分の武器である短剣をどこか遠くへ投げて…

一方、光の国の宇宙監獄。
もう一人のウルトラマンゼロとも言える闇の戦士、ダークロプスゼロは壁の中に体を埋められ、顔だけ突き出た状態で拘束されていた。
このまま自我が果てるまでここにいるのだろう、そう思っていた時だった。
自分の牢獄の扉が開き、何者かが自分の前に立ったのだ。
「ふん、直々にこの俺を処刑しようと?」
久しぶりに口をきいた気がする。そんな彼に目の前にいる男は手を振りかざした。
「!」
やはり殺る気か!?防衛本能から思わず目を背けるロプスゼロ。しかし…
「…?」
この感覚…手足が自由に動ける。と言うより、自分の体を埋めていた壁が崩れているではないか。
「なっ!?」
「力を貸せ。■■を倒す」
「■■を倒すだと!?」
いきなりこいつは何を言い出すのだ。耳を疑いながらロプスゼロは思う。
「そうだ。ひいてはそれが我々の新たな進化と繁栄に導くだろう」
「…くくく。何を言い出すかと思えば。
あの悩んでばかりのクズが、何をしてくれると言うのだ!」
嘲笑し、彼は目の前にいる男に抗議した。
「悩む…そう、憎むべき敵を討つことさえ躊躇う。その甘さ故に奴は通常のウルトラ戦士以上に悩み、深く考え、決してたどり着けない領域にも達するやもしれぬ。だが奴はその本来の力に気づいていない」
「そいつの力を引き出すためなら、魂を売り渡すことも躊躇わないと言うことか」
「そうだ」
「俺にもその手伝いをしろと?」
「だからここに来てお前を解放したのだ」
「…狂ってやがる」
吐き捨てるロプスゼロに、目の前の男はほくそ笑む。
「強制はしない。誰にでもできることではない。自ら狂うことが出来るものでなければ…」
自分の前から立ち去る男を、ロプスゼロは呆然と見つめていた。しばらく彼は思考する。
奴が、それだけの力を持っていると言うのか?
「…違う」
そんなはずがない。あんな甘いだけの奴がそれだけのことができるはずないのだ。
「…俺なんだ。この狂いに狂った世界を変えるのは…」
俺なんだ!

『宇宙監獄より脱走者あり!宇宙監獄より脱走者あり!』
その警報を受け付け、光の国の柱といえるウルトラ兄弟が宇宙警備隊本部に集結した。
ゾフィーの口から事情を説明された。
「宇宙監獄に閉じ込めたはずのダークロプスゼロが、脱走した」
「なんですって!?」
サイトも生でその勇姿を見たことのある若きウルトラ戦士、ウルトラマンメビウスは驚きの声をあげた。
「あの監獄はキング自ら作り上げたものだ。そんな頑丈なものをどこの輩が…」
今口を開いたタロウも、他の兄弟たちもこの事態に半信半疑だった。
「ところでゾフィー、ウルトラマンとセブンがいないようだが」
ウルトラ兄弟で唯一、特徴的な青い模様を持つ戦士ウルトラマンヒカリが尋ねた。彼の一言で他の兄弟たちも自分の周りを見渡す。
「確か、数刻前に下された極秘任務に向かったと聞いていたが」
「ああ、実はあの二人もその任務から消息を絶っている。
それだけではない。『炎の谷』に封じられた『ギガバトルナイザー』も何者かによって盗まれた」
ウルトラ兄弟が二人同時に姿を消した。これはもしもの時の戦力としてもかなりの痛手だ。
そしてギガバトルナイザー…その昔レイブラッド星人が宇宙の頂点にあった時代に彼が持っていた怪獣操作兵器。棍棒型の武器としても扱える、百体もの怪獣を操るとされた恐るべき兵器だ。
それも盗まれたと言うのだ。これをもし悪意ある者の手に渡ったら大変なことになる。
メビウス、ヒカリはウルトラマンとセブンの捜索。
ジャック、エース、タロウ、80は脱獄したダークロプスゼロの捜索。レオとアストラはギガバトルナイザーを探しに宇宙へ飛び立った。残ったゾフィーは予備戦力として光の国に留まった。
「新しい命の精製ができなくなった時といい、嫌な予感がする。弟たちよ、そして『エメラダ星』のゼロよ。くれぐれも気を付けてくれ…」
そういえば、もうひとつ気になることがある。
(べリアル…彼の様子が最近不穏に感じる)

「…」
トリスタニアの城に戻ってきたルイズたちに笑顔はなかった。
「話は、すべて理解しましたわ…」
アンリエッタもやはり行かせるべきではなかったと考えていたのだろうか?いや、自分が行かせるべきではないと判断したのは危険以外にも、この国とガリアの戦争が勃発する危険性があったから。それを承知で彼らはガリアに行くことを選んだ。それに今目の前にい
る彼らを罪に問おうにも、貴族の名を捨てた者たち。トリステインを戦争に追いやろうとした罪人として裁くことはできない。
「何なりと罰をお与えください」
「私にも何なりと。元はと言えば私が彼らを巻き込んだことがすべての始まりです」
ルイズとタバサ、そして皆がアンリエッタとウェールズに膝まずいていた。
「顔をあげなさい、皆さん」
アンリエッタに言われ、全員が顔を上げた。その時、ルイズは驚きのあまり目を疑った。彼女の目の前に、アンリエッタの手に持たされていたかなり高級そうなマントがあった。
「王家のマント…!」
「そうです。あなたへの罰、それは私の妹君となることです。これで無闇に他国へ行くことはできない。もっと自分を大事になさい。でなければ命を懸けたサイトさんが報われませんわ」
「姫様…」
「『姫』じゃないわ。私は今から、あなたの義姉ですから」
「はい…」
承諾の意を込めてルイズは頭を下げた。
「ミス・タバサ。いや、シャルロット姫」
今度はウェールズがタバサに向かって口を開いた。
「君の仲間を巻き込みたくなかったという思いやりは、同時に仲間に迷惑を懸けたことになる。よってそなたとそなたの仲間に命令を下す」
「何なりとお申し付けください」
「ヒラガ・サイト、クロサキ・シュウヘイ、ティファニア・ウエストウッド。この三名の捜索を命ずる」
これでようやく終わったかに見えた。だが、突然王座の間を叩く音がして一同は扉の方へ目を向けた。
「陛下!『烈風カリン』殿が来訪されました。『娘を引き渡せ』とか…」
「烈風カリン?かつて魔法衛士隊の名騎士として名を馳せたあの烈風カリンですか?」
この時、ルイズの顔が異様に真っ青になっていた。
「あらルイズ、どうしてそんなに青くなってるのよ?」
「正直、おびえてる」
その証拠に、ルイズは震えていた。まるで、鬼の如き形相の親に叱られるのを待つ子供のように。
「烈風カリンに今から罰を与えられることが」
『烈風カリン!?』一斉にその場にいた者たちは仰天した。
「烈風カリンって、常に鉄仮面で自分の顔の半分を覆っていた、王国始まって以来の風の使い手で魔法衛士隊マンティコアの隊長だったそうだね。烈風どころかその風は嵐すら起こすほどだったと言われてる」
マリコルヌに続き、今度はギーシュが口を開く。
「エスターシュ殿が反乱を起こした時、たった一人で鎮圧したと聞いたことがある。父上もあの方だけは敵に回したくないと言っていた」
「ドラゴンの群れも一人で倒したとも」
とタバサ。
「私の実家の軍も、烈風カリンが来たって噂だけで退散したそうよ」
キュルケも言う。
「旅行に出かけていた時、襲ってきた空族の船をカリン殿が一瞬にして壊滅させたとも言われてるね」
とレイナール。ここまで聞いてもとんでもないメイジであることがうかがえる。が、次にギムリが言った言葉で空気が一変した。
「とても美しい方だって話だ。桃色の髪で勝気な瞳、かつ男装の麗人だとか」
「「「え…」」」
桃髪で勝気…それでルイズを見返した一同。震えながらルイズは言った。
「ええ、烈風カリンは私の母様なのよ…昔何メイルもの高さから落とされたことか…」
もう驚きの声さえなかった。ある種の恐怖でその場が塗りつぶされていた。この場にいないサイトも会ったことはあるが、彼も聞いていたら絶対背筋を凍らせたに違いない。
「当時のその部隊のモットーは知ってる?」
一斉に顔を見合わせたが、ルイズ以外知らないのか全員首を横に振った。
「鋼鉄の規律よ。母様は規則破りを何よりも嫌ってるのよ」
規律違反を嫌う…それもルイズの母で、過去から数々の手柄を立てると同時に恐れられた存在。これから先起こる恐ろしい出来事が、なんとなく想像できた。
「だ、大丈夫よ。あなたのお母様が本当にマンティコア隊の隊長だったとしても三十年も前じゃない。人間長い年月をかければ変わると思うし、ちょっと監禁される程度だと思うわ」
キュルケが安心させようと声をかけるが、声が震えて全然説得力がない。
「あんたたちわかってないわ…」
ただルイズは仲間たちにそう言った。

そして…
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