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□File3
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サイトたちはガリアのオルレアン領で聞き込み調査を開始したが、これをうまくこなせたのはキュルケぐらいだった。
「まったく、オルレアンの屋敷から病気の女連れ出すなんてよ、退屈でしょうがねえぜ!」
酒場で酔っ払った兵士の『オルレアン』という単語を聞き逃さずキュルケはその兵士に近づく。
「もったいないわ、あなたのように素敵な方が。でも私、強い男は好きよ。あなたのお話、聞かせてもらえるかしら?」
「お、おう…」
「本当!?ありがとう!」
美貌に胸と、積極的アプローチ。女としての武器を使いこなし、もうすっかり溶け込んだキュルケを、サイトたちはもはや呆れを通り越して関心していた。
「すごいよなキュルケって。なんか男の弱点を知り尽くしてるというか」
「そうね、あれはもはや才能だわ」
ルイズも、自分の実家の過去の出来事から彼女を嫌っていたが、素直に評価するしかなかった。

キュルケの活躍で、一同はタバサがアーハンブラ城に捕らえられていることを知った。まずは宿に部屋をとってもらい、そこで作戦会議とした。
「アーハンブラ城は、マリコルヌが『遠視』の魔法で見たところ、百人の兵が城中を見張っているようね」
「とにかく、僕がたくさんのお酒を買って…」
「私がたくさんの眠り薬を調合するのはわかったけど、どうやって城の百人の兵士に飲ませるのよ?」
ギーシュをモンモランシーが口々に尋ねる。
「ところで、話が切り替わるようで悪いがテファとイルククゥはどこに行った?」
水を飲みながらシュウヘイがキュルケに尋ねた時、彼女の表情は妙に笑顔だった。
「さあ、秘密兵器のお二人さん。いらっしゃい」
彼女の呼びかけで、二人の女性が部屋に入ってきた。それは、キュルケとハルナとモンモランシーと同じ踊り子服のテファとイルククゥだった。
「「「おおおおおおお!!!!!」」」
「ぶふ!?」
これを見てサイト、ギーシュ、マリコルヌは機関車の煙のごとく鼻息を吹き出し、シュウヘイは仰天しすぎて口に含んでいた水を思いきり吐き出してしまった。
「シュウ…あ、あんまり見ないで…」
「動きやすいのね!きゅいきゅい!」
動きやすい服装で喜ぶイルククゥとは違い、恥じらいの表情でシュウヘイに言うテファだが、さすがのシュウヘイも今は女装しているとはいえ、今の色香満載の彼女を直視できなかった。
「私とテファとイルククゥとモンモランシーとハルナ。この面子で踊ってる間に眠り薬を混入した酒を百人の兵士たちに飲ませるのよ。なかなかいいでしょ、このアイデア?」
「「「いい!!すごくいい!!」」」
男三人の下心満載なのが目に見えてわかる返事に、ハルナはちょっと複雑な顔をした。いくら自分と恋仲とはいえ、サイトも健全な男子。違う女の子の肌とか胸とか見たら、ちょっと妬いてしまう。
「じゃあギーシュとマリコルヌはお酒を買ってきて。モンモランシーは眠り薬の調合、イルククゥと私とハルナで手伝いよ」
キュルケの指示で一同は一斉に準備に取り掛かった。
「ちょっと待って!」
しかし、ルイズは納得できない様子で立ち上がった。自分やサイトには何に支持も下されなかったのだ。
「私たちには何もないの!?」
「今回は休んでなさい。」
「それは、確かにあんたは私のことを嫌ってるでしょうけど…」
確かに自分をキュルケは、昔からの実家の対立状況から不仲だった。だから今回自分にできることを省けているように思っていたが、予想外の答えが返ってきた。
「嫌ってるんじゃないわ、認めてるのよ。今のあなたを…そしてあなたの力を」
「え?」
ルイズがしゃべったわけではないが、キュルケはもう彼女の力の秘密を見抜いていた。彼女はルイズの手を握り、頭を下げて言った。
「先祖の無礼は謹んでお詫びするわ。どうかあなたのその伝説の力をお貸しください」
「なな、何言ってるのよ!別に私はもうヴァリエールの名を捨てたただのルイズなんだもん…」
「謙遜しちゃって、かわいいわ」
そう言って自分の胸にルイズをギュッと抱きしめた。
そう言って自分の胸にルイズをギュッと抱きしめた。
「ななな、何すんのよ!!!離してよキュルケ!!」
ケンカするほど仲が良いという言葉があるように、なんだかんだでこの二人は仲が良かったのかもしれない。ただ今までそれに気付けないままだった。
自分が望む平和は、長い間対立していたもの同士でさえ仲良くじゃれ合える。
サイトは今の二人を見て、笑顔をこぼしていた。
「でも私だけ特別扱いは嫌だわ。キュルケ、踊り子服に余りはあるかしら」
「ええ、もしかしてあなたも踊るの?」
「もちろんよ」

一方、下の階では、買ってきた酒樽に、調合した眠り薬をモンモランシー、テファ、イルククゥ、ギーシュ、マリコルヌ、ハルナ、そしてシュウヘイは手分けして混入していた。
それを、近くの建物から見ていた一つの視線があった。
「…見つけたわ。『悪魔』の力を持った…」
その視線の先には、テファがいた。それに気付くことなく彼女は作業を黙々とこなしていく。声の主は、テファたちのいる宿の近くにある店の一階の窓から彼女を双眼鏡で眺めていた。
「向かう場所はアーハンブラ城ね。おじ様がガリア王から聞いたとか言ってたけど…」
「何をしてる?」
「!」
視線の主は顔を上げた。すでに自分の場所を、目の前にいるどこからか現れた女(女装しているシュウヘイ)に掴まれていたのだ。
「やば!」
「待て!」
声の主は、フードを深くかぶっていて顔は見えなかったものの、声の高さからすると若い女性のようだ。彼女は素早い身のこなしで彼の前から窓から飛び出して逃げ出した。それを追うシュウヘイだったが、店の角を曲がったところでフードの女性を見失ってしまった。
(く…逃がしたか)
「シュウ、どうしたの?」
心配になって、小走りで追いかけてきたテファが尋ねる。
「いや、なんでもない。戻って作業を続けるぞ」
「う、うん…」

夕方、酒に薬を盛る作業が終わり、サイトたちはアーハンブラ城にやってきた。城の主である男爵に、まず口上手なキュルケが取り持った。
「お城の兵士さんにも楽しみが必要ですわ。私たち、それを売りに来ましたの」
「ふむ、酒と踊りか」
男爵は女性陣に目を向けしばし考えるとキュルケの耳元であることを囁いた。それを聞いたキュルケは、少し驚いたような顔になったが、すぐ冷静に男爵が耳元で言った頼みごとを聞き入れた。
(ちょっとまずいわね、男爵の頼みごと…)
そして夜。舞台が完成し、カーテンの裏に女性陣が準備。その間に手始めにマリコルヌが司会を務めた。
「さてお立合い…」
「さっさとはじめろ!」「男はひっこめ!!」
速く女性陣の踊りが見たいと、城の兵士たちは騒ぎ出す。正直びくびくしているマリコルヌだったが、「おびえるな!」と耳打ちするギーシュの言葉もあって、勇気を出して続けた。
「今宵に咲くのは、砂漠に咲いた花々です。それでは踊り子ちゃん!シルブプレイ!」
カーテンが開かれ、踊り子服に着替えたルイズ、キュルケ、ハルナ、モンモランシー、テファが姿を現した。
「おお!!」
兵士たちは女性陣の美しい姿に目を奪われた。ギーシュとマリコルヌは太鼓を叩き、そのリズムに合わせてキュルケが美しく踊る。城の兵士たちからは「おおおおお!!!」と簡単の声が轟いていた。
キュルケは本当に踊りがうまかった。しかも持前の美しさをしっかり利用し、兵士たちの目を釘付けにしている。
「どうやったらあんなのできるのよ?」
「わかんないわよ…」
ルイズとモンモランシーはどう踊ったらいいかわからず、しばらく彼女の踊りを後ろから途方にくれながら見ていた。
「きゃう!」
「う、うまくできませえええん…」
ハルナとテファも頑張るが、ハルナは足を絡ませて転んでしまったり(その可憐なしぐさが、逆に日ごろの当直などで疲れている兵士たちの癒しになったが)、テファの限っては胸だけ異様に揺れたり。
一方でサイト、シュウヘイ、イルククゥは兵士たちに酒を配っている。
「どんどん飲むのね!」
「お酒の足りない方いらっしゃいませんかー?」
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