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□File1
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シェフィールドから言い渡された任務の内容はルイズとテファの誘拐。だが彼女は仲間を攫うことができなかった。タバサは任務に失敗したのだ。
(母様…)
任務に失敗したら、人質である自分の母は伯父の兵士に連れて行かれるだろう。その前に、何としても母を奪還しなくては。そう思って彼女はガリア王国の自宅である旧オルレアン領の屋敷に向かう。彼女はシルフィードを門の前に待機させ、屋敷に入った。
母親のいる部屋に入ったが、いつものように窓際の椅子に座っているはずの母親の姿がない。
彼女はその時、後ろに何者かの気配を感じた。
「どこへやったの?」
「オルレアン夫人のことか?彼女はガリアの軍隊に連行された」
振り向いて彼女はその気配の正体をみる。とんがり帽子の若い男性のようだがよく見ると、テファと同じように男の耳の先が尖っている。
「エルフ…!」
「いかにも。私はエルフのビターシャルだ。お前の伯父から連れてくるように言われている。抵抗せず、こちらに来てもらおうか」
「…」
タバサに従う気はなかった。氷の槍を連続で飛ばし、男に攻撃した。だが、男の目の前で氷の槍は見えない壁に阻まれたように止まり、くるりと反対方向に向き直ってタバサに跳ね返った。
「うっ…!」
自分の作りだした氷の槍の雨を受け、タバサは床に倒れこんだ。
「先住…魔法…!」
「その呼び方は好ましくないな。精霊の力と呼んでもらいたい」
すると、シルフィードが主の危険を察知したためか、窓ガラスを割ってビターシャルに襲いかかってきた。
だがビターシャルは全く動じず、目に見えぬ盾でシルフィードの動きを止める。しばらく抵抗するシルフィードだったが、ビターシャルの精霊の力によって起こった睡魔によって眠らされた。タバサも意識を失った。

翌日の朝、学院の外にウルトラホーク1号より大きな飛行船が置かれ、学院の生徒たちも、シエスタをはじめとしたメイドや使用人たちはその迫力と凄まじさに目が釘付けになっていた。
サイトたちはその飛行船の甲板にいた。
「凄いでしょ?私のジャンと私の愛の形『東方号(オストラント号)』よ」
いつからそんな関係になったのか、キュルケはコルベールにくっつき、しかも今彼らのいる飛行船を『愛の形』と称している。
「ミス・ツェルプストーの資金援助もあって完成したんだ」
「まさか、こんな船を作って帰ってくるなんて驚きました」
「あの時、俺はてっきり…」
メンヌヴィルの事件のとき、コルベールは死んだはずだった。現場にいたシュウヘイだってコルベールの死に何の疑いもなかった。
「ミス・タバサがアニエス君の目を欺くため、仮死の魔法で私が死んだように見せかけたんだ。それからはミス・ツェルプストーの実家でお邪魔させてもらってたんだ」
「コルベール先生、生きていてくれて本当によかったです…」
サイトは少し涙ぐんだ。いかに闇に引き込まれた彼でも、心ある人間としてここに立っているなら文句なしだ。
「でも、どうして私たちに話さなかったの!?」
自分たちに話してもよかったのでは?とルイズは言う。
「悪かったわ。話そうと思ってたけど、きっかけがなかったのよ」
「心配かけたね、サイト君、シュウヘイ君、ミス・ヴァリエール」
「いえ、おかえりなさい。コルベール先生」
ルイズがそう言った時だった。突然どこからか青い髪の女性が現れ、サイトに飛び付いてきた。
「大変なのね!!」
「うわ!!何だ!?」
しかも、なぜか女性は裸だった。一瞬男の本能からか、自分の意思と関係なくサイトの鼻の下が伸びかけていたことをルイズとハルナは見逃さなかった。
「さああああああああいいいいいいいとおおおお!!!!!」
「平賀君のエッチいいいいいいいいい!!!!!!」
ダブルパンチでサイトは股間と頭を攻撃された。
「ぶべらあああああああああああ!!!!!」
その後も二人の『乙女の怒り』によって、オストラント号に鮮血が染み込んでしまったという…。
「とにかく、服」
シュウヘイは自分の黒い上着を女性に上着を差し出した。いくら彼でも女性の肌を見るのは目の毒だ。しかし、どういうわけか彼女は嫌がっていた。これではただの露出狂にしか思えない…。
「嫌!服なんか着たくない!きゅいきゅい!」
嫌がる女性に彼は羞恥といら立ちで顔を真っ赤にし、もうこの手しかないとブラストショットを向けた。
「……着ろ」
「…着ます…」
ようやく彼女が古い布地を上に着て、UFZ基地で彼女が何者か尋ねることとなった。話によると女性の名前は「イルククゥ」で、タバサの妹らしい。
「話ってなんだ?」
サイトがイルククゥに聞くと、彼女は大慌ての様子で答える。
「お姉さまがさらわれたのね!」
「さらわれた?どういうことだい?」
タバサがさらわれた?彼女のことは自分たちだって知ってる。学年でも魔法の才にあふれたメイジだ。さらわれたりするような感じがしない。
「もしかして…」
キュルケには思い当たる節があった。以前聞いたきりで気にする具合が薄れていたが、基地にいるみんなにタバサの正体、今までのガリアからの任務のことを話した。
「ひでえ…ルイズとテファを拐おうとしただけでなくタバサに…」
サイトは怒りを露に、握り拳を作った。それを見てマリコルヌは恐る恐る尋ねる。
「やっぱりタバサを助けに行くのかい?」
「当たり前だ!」
大鉄塊の事件で、あの時に見せたタバサのとり乱し様と言葉を彼はしっかり頭に刻みつけていた。
『その人は私にとって数少ない大切な人』。あの言葉は、自分の大切な人が奪われた、彼にそう思わせていた。
しかし、シュウヘイが口を開いた。
「待て」
「なんだよシュウヘイ。何かあるのか?」
「こいつの話が本当かはっきりしていない」
そう言ってイルククゥを見た。ギーシュもシュウヘイに続くように言った。
「確かに。ガリアの手先で、ルイズとティファニアを狙う刺客かも知れない」
「身長もタバサより大きめで顔も似てないじゃないか」
レイナールも言う。確かに顔が全く似ていないし、一見見れば彼女よりも年上の少女にしか見えない。まったくとは言わないが信憑性に欠けているのだ。
「い…妹なのね!!」
それでも信じてほしいとイルククゥは反論した。
「何か…証拠があればよいのだが…」
コルベールの言うとおり、まず証拠もなしに胡散臭い頼みごとをするのは無理がある。イルククゥはそれを持っているようだが、どうも明かすのをためらっている様子だ。
「証人を連れてくるのね…」
彼女はしびれを切らしたように外に出て行ってしまった。念のためサイトたちも外に出て様子を見に行くが、イルククゥの姿が見当たらない。
「あれ?イルククゥ、どこに…」
その時、空から大きな影が近づいてきた。タバサの使い魔である竜、シルフィードだった。シルフィードはサイトたちの前に降り立った。
「シルフィードじゃないか!」
「なあ、シルフィード。さっき青い髪の女の子見なかったか?」
サイトが尋ねると、シルフィードは頷いた。
「じゃあ、タバサの妹にイルククゥって娘、いるのは本当か?あと、タバサがさらわれたってことも」
「きゅい」
この質問にもシルフィードは頷いた。ようやくイルククゥ、そしてシルフィードの話に信憑性が見えた。しかし、レイナールが何か悩んでる表情に気が付き、シュウヘイがそれに気付いて彼に話しかけてきた。
「どうした?」
「あ、いや…僕らは表向きは陛下の近衛兵だろ?勝手なことしていいのかなって」
「なるほどな、確かに無断で他国に行くのはまずい」
「ならば簡単な話だ!」
二人の会話を聞き、ギーシュは一堂に向かって杖を掲げる。
「よし、僕とサイト、マリコルヌ、ルイズの四人でタバサのことを王宮に報告するぞ」
シルフィードはようやく信じてもらえたので安心した表情を見せた。

ヴェルサルテイル宮殿。ガリアの王族たちと重臣たちが居座っている豪華な宮殿だ。
ジョゼフは自室にて、ある男と対談していた。だが、空気が異様にギスギスしていて、仲良く話してると言うような様子ではない。
「約束通り連れてきたぞ」
意識のないタバサをジョゼフの前に置いて、ビターシャルは言う。
「ご苦労。では約束通りお前たちの望みを聞いてやる。要件は何だ?」
「貴様ら蛮人の言う『聖地』、悪魔の門が何者かによって奪われた」
「ほう、それで?」
「あれを狙うのは悪魔の力…貴様らが始祖と崇めし者の力を受け継ぎし者と従順な崇拝者以外考えられん。何か心当たりはないか?」
「…なぜ、俺にそんなことを聞く?知ってどうなると?」
「あの門から強大な怪物が現れ、この世界を破滅させかけた。あの門を開いたのはシャイターン…つまり貴様らの崇めし始祖ブリミルだ。もしあれを悪魔の子孫どもに奪われとなったら、間違いなく6000年前に起こった大災厄が繰り返される!お前たち蛮人とてただでは済まされないぞ!」
「その言い方からすると、まるで人間の手に落ちたような言い方だな。エルフのビターシャル卿…我々人間は、ここ数百年で聖戦のために兵など起こしたことなどないが?」
「確かに、蛮人たちの兵が最後に攻めてきたのは数百年も昔だ。しかし、私は見たぞ。
お前たちが異星人と…」
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