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□三美姫の輪舞・英雄の共闘/File0
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「スレイプニィルの舞踏会?」
サイト、シュウヘイ、ギーシュ、マリコルヌ。この四人で食堂で話しているとき、ギーシュが言ったことにサイトは何だろうと首を傾げる。
「そう、ティファニアなど一年生が入ってきただろ?だが社交界が初めての人もいるんだ。だから僕たち上級生が大人の世界を教えてやろうってわけさ」
「それをたてにナンパをする気か?」
シュウヘイの一言でギーシュは絶句した。どうも図星のようだ。
「でもたかが舞踏会でなんでギーシュが得意気なんだ?」
とサイト。そこでマリコルヌが説明のつもりで口を挟んだ。
「仮装するんだよ」
「仮装?」
「『真実の鏡』を使うんだ。その鏡を使うとその人は自分の最も憧れている人に変身できるそうなんだ」
「憧れか…が」
憧れ、サイトにとっては自分の父ウルトラセブン、または師であるゲン(ウルトラマンレオ)が浮かんだ。高く、届きそうにないが、彼らのような男になりたい。
「まあ、僕は僕のままだろうな。なんたって僕は世界一の美男子だから!ハッハッハッハッ!!」
彼らは万階一致で思った。今のギーシュはっきり言って…。
「図々しいにも程があるな…痛すぎる…」
呆れた様子でシュウヘイは頭を抱えた。
「どうしよう二人とも!!僕美少女になっちゃうかも!!」
「「「は?」」」
いきなりのマリコルヌの発言に三人は間抜けな声を吐いた。
「ブリジッタといい、ルイズにタバサにティファニアに…ああ、こんな美少女たちがこの学院に次々と現れるものだから目覚めちゃったよ!」
あの時のマリコルヌはどこへやら…禁断の趣味に目覚めつつあった彼の姿はただの変質者だった。
「ああ…今日もブリジッタに捕まって縛られて…」
なんということか。あのブリジッタでさえこの趣味に付き合っているのか。実を言うと、あの二人は人目のない場所で…いや、これは失礼。これ以上はいろんな意味で語れない。
「君たちは何になりたい?」
「俺は…」
真っ先に浮かんだのは自分の命を救った男や、自分と同じプロメテの子である少年の姿が思い付いた。彼らは今どうしてるのだろう…?ちょうどそこで、四人のテーブルの近くをレイナールと彼の同級生のギムリが横切った。
「レイナール聞いたか?最近怪鳥が学院上空を飛び回っているそうなんだ」
「僕も聞いたよ。怪獣ではないかっていう噂もある」
気になったサイトは二人を引き留めて話を聞いてみた。怪獣がまた出てきたのか?
「その話本当か?」
「ああ、夜中に激しい羽音なのか鳴き声なのかわからない音をたてて消えるんだ」
(怪獣じゃなければいいけどな…)
もし怪獣でも、人間に危害を加えるような奴じゃありませんように…とサイトは願った。

基地の作戦室に戻るとハルナが一人掃除していた。学院にきてからずっとメイド服でいる。当然健全な男子のサイトは見惚れてしまうことが多いが、いちいち気にするとただの変態になるのでグッとこらえる。
「お帰り平賀君」
サイトの来訪に気が付き、ハルナは一旦手を止めた。
「ありがとうハルナ。掃除してくれて」
「平賀君の世話になってばかりだから…」
と、そこでルイズとシエスタが入ってきた。いつになく真剣な表情をしている。一体どうしたのだ。何か事件でもあったのか?だが、至ってなんてことないことだった。
「サイト、今日スレイプニィルの舞踏会なのは知ってるわね?」
「ああ、聞いたよ。仮装するんだろ?」
「サイトさんには、仮装した私たちを探して欲しいんです」
「何で?」
十分前、二人は今日こそサイトをモノにしようと話し合ったところ、仮装した自分を見つけられなかった場合は諦めるということになった。
「ハルナ、あんたも強制参加よ」
「ええ!?何でそうなるんですか!?私はちゃんと平賀君に告白してOKもらったのに!」
ハルナは納得できず抗議する。
「いいえ!何にせよ参加させてもらいます!今度こそサイトさんをもらいますからね!!」
ハルナの抗議に聞く耳を持たないまま二人はそう言って部屋を出た。
「勝手なやつらだな…」
呆れてサイトはため息をついた。自分がらみになるとどうもあの二人は熱くなってしまいがちだ。
「もう…」
ハルナも納得できない様子で膨れっ面になった。

その夜、スレイプニィルの舞踏会が始まった。
今のところサイトはまだ来ていない。生徒たちは、舞踏会会場のカーテンの奥に用意されたマジックアイテムの鏡『真実の鏡』の前に立ち、自分の憧れの人間に化けていく。
「やった!僕竜騎士に憧れてたんだ!」
「ふふ、一度お姫様になりたかったのよね」
レイナールは竜騎士、モンモランシーはアンリエッタ。ここまでは普通だった。しかし…次に出てきたマリコルヌによって普通じゃなくなってしまった。
「美少女になっちゃったよ僕♪」
美少女に変身した彼に二人はドン引き。青筋が半端ではなかった。続いてギーシュがカーテンの向こう側から出てきた。しかし、どう見てもいつもの彼。何の変化もなかった。真実の鏡は、その人の憧れの人に化けさせる。つまり…
「やっぱり僕は美しい!!ハッハッハッハッ!!」
さすがはナルシスト。自分の姿がベストのようだ。だが同時に図々しい…と思う他の三人だった。
すると、今度は何とマチルダが彼らの前に現れた。
「ミス・ロングビル!?いや…?」
彼女の正体と業績を知るギーシュは、警戒心のあまり杖を手にとったが、彼女の漂わせる雰囲気に違和感を覚える。
「あの…私ですけど…」
「その声、ティファニア!?って…」
このおとなしそうな少女の声、確かにテファのものだった。彼女はマチルダを姉のように信頼してるがゆえにあの姿となったのだ。ただ、胸だけなぜか元のままだった。
「何でだろう…?姉さんに化けたのになぜか胸だけ…。そういえばシュウヘイは?」
「まだ出てきてないみたいだが…」
もう出てきたのでは?それともまだ来ないのか?そう思って彼らは辺りを見渡した。とその時、背後から何者かがトントンとギーシュの肩を叩いた。
「だっ、誰だ!?」
振り向いたギーシュ。彼の背後にいたのは、ハルケギニアでは見られないオレンジのジャンパーを着た少年だった。笑顔が似合うはずなのに、どうもムスッとした無表情だ。
「俺だ」
その少年の正体はシュウヘイだった。
「へ?シュウヘイ!?誰なんだいその姿?」
「シュウ、その人は…」
テファは一度だけだが、今の彼の姿の元になった人を知っている。確か、彼のいた地球に住んでいる少年だ。
「まさか憐になるとはな…しかし、よくできてるな。グラモンやグランドプレみたいじゃなくて安心した」
「「おい!」」
自分の憐そっくりに化けた姿を眺めながらつぶやく彼に、二名の男(?)たちは突っ込む。
一方でサイトより先に会場に来ていたルイズ、シエスタ、ハルナの三人も真実の鏡の力で別人の姿に変身していた。ルイズは姉のカトレア、シエスタはジェシカ、ハルナはサイトの義理の母であるアンヌといった具合だった。
「サイトったら遅いじゃない…どこで何をしてるのよ…」
いつまでたっても来ないサイトにルイズはだんだんそわそわし始める。まだ来てないのか、それとも自分たちの正体がわからないままどこかをさまよってるのか。
「ジェシカに化けるなんて…それにしてハルナさん、それはいったい誰なんです?」
「あ、これ平賀君のお義母さんなんです」
「へえ、ってええ!?」
まさかの事態にシエスタは驚愕した。変身した人がサイトの母なら真っ先に彼女の方へサイトが走ってしまうではないか。
「この勝負、もらいましたね」
勝ち誇ったようにハルナが笑うと、ルイズとシエスタはぎぎぎ…と悔しそうに歯ぎしりした。
すると、ピピピ…
シュウヘイの腕の『パルスブレイカー』が何かに反応したのか、音を鳴らし始めた。
「…?ビースト?」
その直後だった。辺りが急に真っ暗になった。いきなり闇の中に突き落とされ、会場の人たちはパニック状態になってしまう。
「なんだ!?いったいどうしたんだ?」
そして、パリイイイイイイン!!!と何かが割れたような音が響き渡る。
ようやく明かりがついたが、会場の人たちは目を丸くした。自分たちの姿が元に戻ってるではないか。
そして、一人の男子生徒が会場中に向かって叫んだ。
「大変だ!真実の鏡が割れている!」

その頃のサイトは…
「やっばい!!遅刻だ!!」
どういうわけか、遅刻してしまったようだ。急いで会場に急いでいる。
「ん?タバサ?」
サイトは校門にタバサがいるのを発見した。こんな場所で一体どうしたのだろう?彼女のことだから今日キュルケに誘われて舞踏会に来るんじゃなかったのか?
「タバサ、舞踏会はどうした?」
とその時だった。タバサは突然氷のつららをいくつも作り出し、それをサイトに向けて飛ばしてきた。
「うわ!!」
とっさに真横に転がってサイトはなんとか回避した。
「何すんだよタバサ!?」
気でも狂ったのか?彼女に訳を問うが、タバサは質問に答えず、すかさずサイトに攻撃してきた。デルフを抜いてそれらを防ぐサイト。
「タバサ!どういうつもりだ!?」
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