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□File6
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あれから数日後…
トリステインはゲルマニアとの連合軍を率い、アルビオンへ軍事制裁のため進軍した。その戦いでサウスゴータ区域までを占領するまでに至った。
当初はアンリエッタは直接アルビオンへの進軍を拒否していたが、国民や貴族たちの大半がアルビオンへの軍事制裁を求めていた。もし先送りを続ければ彼らはクーデターを引き起こし、アンリエッタは権力を失ってしまう。下手したら血の気の多い輩がトリステイン
の頂点に立ち、果てしない戦争を繰り広げてしまうことも考えられる。幼い頃より彼女を支持していたマザリーニ枢機卿の忠告でアンリエッタは進軍を決定した。彼女も今のアルビオン=レコンキスタを許せなかったが、平和を望む彼女にとって苦渋の決断だった。
フクロウ便を通じてアルビオンへ呼び出しを受けたサイトとルイズ。
現在港町ロサイスの屋敷で待っていたアンリエッタの前にいる。
「ルイズ、ごめんなさい。アルビオンまで呼び出して」
「いえ、大丈夫ですわ姫様」
アンリエッタの横にいるド・ポワチエ将軍が今回の作戦について話す。
「ヴァリエール殿。そなたにはシティ・オブ・サウスゴータの上空にて虚無の魔法を発動、敵を全滅してもらいたい」
作戦の内容からして、ルイズの虚無の力を戦争に利用することが丸分かりだった。
「!?」
無論サイトは納得できるはずもない。
「わかりました。このルイズ、お役目を果たして参ります」
「ルイズ!!」
なぜ受託した!反論しようとするが、アンリエッタがその怒りを抑えようと口を挟んだ。
「ごめんなさい…しかし、ルイズがこの作戦をしなくては我が軍は兵力を持ってサウスゴータに攻めなくてはなりません。そこの民も巻き込まれます。犠牲を無くすためにも」
「…」
ちくしょう…サイトは苦虫を噛むような表情で見ていたが、突然頭を抱えだした。また頭痛か…
「サイトさん?」
アンリエッタは彼の異変に気づいたのか、彼の顔を覗き込む。なんだか顔が青い。今の作戦内容を聞いただけでここまでなるとは思えない。
「顔色が優れてないようですが…」
「何でもないです。俺も行きます」

サウスゴータ上空、サイトたちはウルトラホーク一号でやって来た。この辺りで虚無の魔法を使い、敵兵を殲滅すること。それが今回の任務だった。
しかし、サイトはかなり疲れきったような顔をしていた。外は冬場なのに汗だく。それだけではない。彼の視界はまるで万華鏡のように同じものがいくつにも見え、霞みがかかってるようになっている。
「くっ…」
「どうしたのよ、サイト。まるで死んだ人の顔みたい」
ルイズもどうも気になっていた。無理をしてまで来ることはなかったのに…
「い、言っとくが…俺は死にたくないし、人なんか殺したくもないぞ」
サイトは目を擦りながらピリピリした様子で言う。ルイズがあまりためらわすこの任務を引き受けたからだ。体調が悪いにも関わらず、そんなルイズが心配だからこそ着いてきたのだ。
「わかってるわよ…でも姫様が私を必要としてくれてるんだもの。とても断れないわ」
「…」
「早速だけどやるわよ。しっかり運転してね」
ルイズは虚無の魔法を唱え始めた。国からは『奇跡の光』と呼ばれた光が、彼女の身を包むように起こる。
だが、その光が青から赤に変わったところでルイズは倒れてしまった。
「うっ…」
「ルイズ!どうした!?お前まで…」
そこでデルフが鞘から顔を出した。
「まだタルブ村で使った魔力が回復してなかったみたいだな。何十年も溜めていた分をあの時命懸けの状況でぶっぱなしたからよ」
「ったく…早く言えよ!それを」
そこに、ウルトラホーク一号を追って敵の竜騎士が二人やって来た。ルイズは虚無の魔法を使えずに終わったが、先ほどとは違ってピンピンした様子で起き上がった。だが魔法を唱えてる余裕はない。サイトが便りだ。
「サイト!早く撃って!落とされるわ!」
「…くそ」
やるしか…ないのか。ウルトラマンたるもの自分の守る星での戦争などに関与するべからず。宇宙警備隊における教えなのだが、ウルトラマンゼロとルイズの使い魔であるサイトが同化したその日から、彼はそれができなくなってしまった。それでもその星を守りたいと、帰りたいという感情を圧し殺しながらここにいる。しかし、闇の戦士や侵略者、怪獣との戦いだけでなく、その優しさと意地っ張り具合がまさか彼の体を知らない間に蝕んでいたのだ。
敵を撃ちたくない。そして体の調子の悪さが彼の手を鈍らせていた。
ビームを放つが、空振りだらけだ。対して竜騎士も反撃に魔法を放つが、ホークの装甲は怪獣の攻撃でようやく落とされるほどの丈夫さがある。簡単には貫かれない。しかし、この世界にも鉄を切り裂ける魔法がある。もしエンジンを攻撃されたらまずい。
「サイト、早く!私たちが落とされる!」
「あ…ぁ…」
しかしだんだんサイトの視界は真っ暗になり、最終的に彼は前呑めるように倒れてしまった。その時、偶然にもボタンを押して発射されたレーザーが一頭の竜の翼を貫き、二人のうち一人の竜騎士は落ちた。残ったもう一人は、仲間の身を案じすぐにそちらへ竜を飛ば
す。
「ちょ、サイト!起きて!起きてよ!どうしたのよ!?」
ホークの運転席で意識を失ったサイトを必死に揺り動かすルイズだが、サイトは起きる気配を見せない。このままだと地上に激突してホークが大爆発する。
「娘っ子!そこのレバー、棒を引け!」
「え?」
デルフの突然の提案に固まるルイズ。このホーク一号はサイトにしか操作できない。どうやって運転しろというのだ。
「死にたくねえならさっさとしやがれ!」
デルフに怒鳴られるまま、ルイズは言われた通りホークのレバーを手間に引く。そのとっさの行動もあって、ホークは不時着に成功した。

『ゼロ…』
誰だ?サイトは仰向けに寝ている状態で目を覚ました。
いや、この声には馴染みがある。目の前に自分と似た顔に、頭に装着された一本の宇宙ブーメランと燃えるような赤いボディ。
父、ウルトラセブンの姿だ。
『今のお前は、数々の強敵との戦いで多くのダメージを受けている。しかもこの星の環境は、光の国とも異なる環境のためその疲労は余計に侵攻してしまった』
確かにこの星の環境はウルトラマンには不慣れなものだ。彼らもかつて地球やハルケギニアの人間と同じような姿をしていたが、数万年前にウルトラマンとなった彼らは長きにわたる時を経るにつれ、
一生を人間のいる星で生きることができない体となった。その環境の中で生死をかけるほどの戦いを繰り返せば、どんなに優れた戦士も限界にきてしまう。
『これ以上その星に留まることは危険すぎる。ゼロ、光の国へ帰還するときが来たのだ』
「だけどこの星を狙う侵略者や怪獣はあとを絶たない。それに戦争にも怪獣が使われるほど酷い状態だ。親父、俺がいなくなってシュウヘイ一人で守れる保証なんてどこにあるんだ!」
ウルトラマンネクサス、シュウヘイも負けたことがある。それほどの強敵がもういないなんてまずあり得ないのだ。この星から去ることは、やはりできない。それでもセブンはボロボロの息子にかつての自分の姿を重ね、心を痛めながら言う。
『ゼロ、今は自分のことを考えろ。これ以上その星に留まることは死を意味する!』
「元の体には戻れないのか?」
『そのためには光の国の銀十字軍で治療を受ける必要がある。今、お前を思ってウルトラの母がお前の大切なあの娘に自分の教えを必死に叩き込んでる。彼女の努力を無駄にする気か!?』
ハルナはきっと必死に自分の力になるための修行を受けている。自分が死んだらきっと彼女は自分の努力が無駄になり、悲しみに暮れてしまうだろう。でもこの星には侵略者の魔の手がすでにアルビオンに来ている。今帰ったら、ルイズは間違いなく奴らの手によって
殺されてしまう。学院で出会った仲間たちも…
「今は帰れない。仲間の命がかかってるんだ。このまま放っておくわけにはいかない…」
『ならば一つ忠告する!戦ってこれ以上エネルギーを消耗するな。光の国に帰ることもできなくなってしまう。変身してはいかん!』

「…と!サイト!」
「ぅ…」
セブンの声に続くように聞こえてきたルイズの声で、呻き声をあげながらサイトは目を覚ました。
「ルイ…ズ…?」
サイトが体を起こすと、ルイズは目尻に涙を溜めながら彼の胸板を叩きまくる。
「バカバカバカ!心配したんだからね!」
「相棒、全く無茶したもんだぜ…」
憎まれ口を叩きながらもデルフは安堵の様子を見せ、地下水も口には出さなかったがひと安心していた。
とその時だった!
「はあ!!」
アルビオンの兵士がいきなりサイトたちのいる操縦室に飛び込んできた。とっさに地下水を構えるサイトだったが、その騎士は突然倒れた。するともう一人の騎士も現れ、彼を抱える。
「無理するな、ヘンリー。お前はけがしてるんだ」
「…貴族は…死んでも名誉を…はあ!!」
サイトほどではないが体調の優れないヘンリーは炎の魔法『ファイヤーボール』でサイトを攻撃したが、サイトが盾代わりに構えたデルフに吸収された。
「吸収した!?」
ヘンリーがその光景動揺してる間にサイトは彼にデルフを向ける。
「俺は人なんか殺したくない。大人しくしてくれ」
「貴様…なぜ殺さない!?僕がケガしてるからか!?」
「いい加減にしろ。このままじゃ共倒れだ。もう一度言うぞ、大人しくしろ」
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