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□File3
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サイトたちがヴァリエール家に滞在している頃、トリスタニアの近くにある森。そこに一人の男の帰りを待つ少女たちがいた。
「シュウ兄、遅いな」
「そうね…」
魅惑の妖精亭で(スカロンに捕まってほぼ無理やりに)働いているシュウヘイ。今日は帰りが何時もより遅かった。
「ジム、もう寝る時間だよ。こっちへおいで」
小屋からウェールズが促すように誘う。身分を隠すため、今は平民用の服装で、髪も結構刈ってしまっている。
「帰ってくるかな?」
「いつもそうだっただろ?彼は約束を破らない」
「うん!」
ジムは笑顔で頷き、ウェールズと共に小屋の中へ入っていく。しかし、テファだけは戻ろうとする素振りを見せなかった。
「シュウ…」

その頃、トリスタニアの街付近には一体の怪獣が現れていた。『地底怪獣テレスドン』。皮膚はかなり頑丈で防御力が高い。その怪獣と戦うのはトリスタニアを守る魔法衛士隊。
「撃てい!」
風の刃、炎の弾丸、雷などの魔法が彼らの杖から放たれる。同時に大砲から発射された爆弾がテレスドンを襲う。しかし、堅すぎる皮膚を突き通すまでに至らなかった。
でも戦っているのは彼らだけではない。テファが帰りを待つこの男も、人間たちの努力に応え姿を現した。
「シャ!」
ウルトラマンネクサス・ジュネッストリニティ。テレスドンを恐れることなく彼はタックルで攻撃を仕掛けた。
「ギェエ!!」
〈シュトロームソード〉
光の剣を形成し、テレスドンに斬りかかろうとしたが、妙なことが起こった。テレスドンが自分の這い出てきた穴の中へと逃げ込み、消えていった。
(どういつもりだ?)
ネクサスは小さくなって変身を解き、元のシュウヘイの姿に戻る。すぐテレスドンの逃げたあの穴に近づき、その中を覗き込んで見た。
夜の闇のせいもあるが、やはり穴の内部は真っ暗闇だ。
(なぜ逃げた?大したダメージを受けたわけでもないのに、なぜ?)
だが、その時後ろから誰かがシュウヘイの背中を押しだし、彼を穴の中へ突き落とした。
「なっ!?うわあああ!!」
彼の叫び声は、闇の底へ近づくにつれ、姿と共に聞こえなくなっていった。

「地下図書館?」
ヴァリエール家から学院に戻った翌日、アニエスによってサイト(念のためいつもの様に武器を全て所持している)、ルイズ、ジュリオは平民用の宿舎にある会議室に呼び出された。そこはあまり使われてないため、今は主に銃士隊が使用している。
「ああ、この学院にはトリステインでもかなり重要な機密事項を隠した地下図書館への通路があるとされている。今でも情報を隠すために使用されていることを陛下は我々銃士隊に調査させて突き止めたものだ。学院の女子生徒用のトイレに隠し扉がある。だが…」
「だが?どうかしたの?」
腕を組みながら唸るアニエスに、ルイズは尋ねる。どこか苛立ちを覚えてるようだ。
「女王陛下の許可が出たにも関わらずオスマン学院長は『鍵の解除の命令は受けてない』と言って反対したのだ」
「どうして?」
サイトの疑問に応えるように、ジュリオが説明した。
「あの地下図書館は数千年も昔に作られた場所だからね。古代の魔法で厳重なトラップがある可能性があるから、何が起こるかわからない。命の危険があると学院長は予想したんじゃないかな」
「私は騎士だ!死など恐れはしない!」
生に必死にすがる者など臆病者の証だ。そうなったら騎士の恥でしかない。今のアニエスに引き下がる余地は見られない。
「ルイズ、君の魔法でなら扉を開けられる?奥は魔法でロックされてるらしいけど」
「確かに、虚無にもそのための魔法があると思うけど、私はまだ使えないし、それ以前に精神力が大きく削られるから…」
少なくとも今の自分では当てにできないと言うことだ。だとしたら…
「ロックを解除しろですって?」
学院の研究室で勤務していたエレオノールに頼ることにした。
サイトたち五人は女子トイレの奥にある木造の扉を開くと、その先は真っ暗闇の地下に続く階段となっていた。
「ところで、どうしてアニエスさんはこの地下図書館の資料を調べるように言われてたんですか?」
サイトの質問に、アニエスは松明にランタンに火を灯しながら答えた。
「まず先に内部で隠れている裏切り者のいぶりだし。おそらく今のアルビオンに手を回している輩が内部にもいると陛下は見ている。その証拠になるやもしれぬ公文資料がこの地下で眠っているはずだ。本来どんなに都合の悪い事実も記録として残すためにその図書館が設立されたのだからな」
「なるほどね。だとしたら、過去の研究者たちの記録もあるかもね」
一時は身を引いたが、研究者としての好奇心はエレオノールからは消えていない。もう一度いろんなことを研究したいという願望がある。
しばらく歩くと、三つの正方形のくぼみが縦に並ぶ石の扉に差し掛かった。ここでエレオノールの出番となる。三つ、おそらくトライアングルクラスのメイジでないと開かない仕組みのようだ。
「神の戒めよ、解けよ」
エレオノールが杖をピッ!と扉に向けて振ると、扉のくぼみがカチャ!と鍵を解除する音を鳴らし、先への道を現した。
「さすがお姉様!」
怖いのは事実だが、尊敬もしている。ルイズの一言でエレオノールは誇らしげに振る舞うルイズのようにふっと鼻で笑った。
「さて、ここからは危険だ。私一人で行く」
引き返すことを促すアニエスだったが、エレオノールは下がろうとしない。
「そうはいかないわ。私も中身を知りたいから鍵を開けたのよ」
ルイズもこれには異を唱えた。
「危険ならなおさら一人デ行くべきじゃないわ」
「僕たちは仲間だろ」
ジュリオも胡散臭くはあるが下がらない様子だ。
「隊長、私も同行します」
その声に反応し、一同は自分たちが歩いてきた道を振り返る。声の主はアニエスの副官である銃士隊副隊長のミシェルだった。
「ミシェル、お前まで…」
でも次のサイトの一言で少し空気がおかしな方向に走る。
「騎士とかそれ以前にアニエスさん女の子でしょ?怪我でもしたら…」
「お、女?」
騎士になると決めてから髪を切って女であることを捨て去ったアニエス。にも関わらずこの男は自分を女だと思って気遣っている。段々彼女の顔が赤く染まっていく。
「ばっ、馬鹿かお前は!私はとっくの昔に女であることを捨てたのだぞ!」
「そうはいっても、覆らない事実でしょ女だってことは?それにアニエスさん美人だからもったいないじゃないですか」
ただでさえ「女の子」発言で顔が真っ赤になるほど過敏に反応したのに今度は「美人」。さすがに冷静さを保っていたアニエスも参るようだ。
「びび、美人!?っええいもういい。男だろうが女だろうが私は行くぞ!」
アニエスは照れ隠しなのか、それとも怒ったのか、顔を真っ赤にしたまま先に進んでいった。余談だが自分の上司の意外な顔には、ミシェルも唖然としていた。
しかし、全員がその場に足を止めてしまった。なせなら…
「そんな目でアニエスを見ていたとはねぇ〜…」
ルイズが髪を波立たせながら怒りと嫉妬の表情で杖をその手に持っていた。
「それにアニエスは胸があるしね〜、それに比べたら私なんかペッタンコだもんねぇ、えぐれてるもんねぇ…」
「いやいや、俺は決してやましい気持ちで言ったわけじゃないぞ!素直に褒めただけだから!だから早く杖をしまっ…」
「このエロ犬、ドスケベ犬ううううううううううううううう!!!!」
ズオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!!
「「「「わあああああああああああああああああああああ!!!!!!」」」」
桃髪の嫉妬魔神の放つ大爆発はその場一帯を包み込んだ。
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