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□双月の騎士/File0
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「行かないでよ!」
クリスとリシュが学院を去ってから間もない頃、学院の男子生徒たち全員は軍に駆り出されることになった。ギーシュも例外ではない。
実を言うとアルビオン=レコンキスタとトリステインの攻防は続いていたのだ。
「モンモランシー、そんなに悲しい顔をしないでくれ。笑顔で見送ってくれないと辛いじゃないか」
「どうしても行くの?死ぬかもしれないのよ…」
「貴族にとって戦場で死ぬことは名誉なんだ」
「名誉がなによ!結局死んだらもう会えないのよ…」
そのモンモランシーの言葉にギーシュは思わず涙ぐんできた。
「そんなに僕のことを思ってくれていたのか…」
なんだかんだでこの二人やはり仲はよかったりする。喧嘩するほど仲がよいと言うが、よい例になるものだ。
「男子生徒全員駆り出されるなんて」
「戦争か…」
ギーシュの「戦場で死ぬことは名誉」の意見はサイトから見れば愚かでしかない。自分の命をなんだと思ってるんだ。名誉と人の命なんか天秤にかけるまでもないほど価値の差がある。でも、彼に戦争を止めるだけの頭なんかない。見てることしかできないのだ…。
とそんな時、空から何かが飛んでくるのが目に入った。
「あれはなんだ?」と生徒たちはざわめきだす。その飛来してきた何かは鳥のような姿をしている。いや、鳥だった。
「あれは…リトラ!」
「あんた、あれ知ってるの!?」
原始怪鳥リトラ。初代ウルトラマンが地球に現れる以前、サイトのいた地球に最初に現れた怪獣の一体。古代怪獣ゴメスと死闘を繰り広げ、自らの命を犠牲にゴメスを倒した、数少ない人類に友好的な怪獣だ。
ルイズに説明したが、彼女には理解できない部分があった。
「そのリトラが一体なにをしに来たのよ?」
確かに、リトラが友好的だからといって人間の前にホイホイと姿を現すはずがない。ならばなぜ?
実はそのリトラは、ある人物の指示でここに来たのだ。
「キェエ!」
リトラは大胆にも学院の校庭の芝生に身を降ろし、同時にその背中から一人の金髪の凛々しい青年が降りてきた。
「キャーーー!!!!」
彼の姿を見た瞬間女子生徒たちは自分たちの彼氏との別れの悲しみをすっかり忘れてその青年に見とれてしまう。キュルケはもちろんだが、さっきまで感動的な場面を見せてくれたモンモランシーまで頬を染めて釘付けに。唯一そうでなかったのはタバサだけだった。
「あの、モンモランシー…」
「あら、あんたまだいたの?」
「そ…そんな…」
構ってくれとせがむギーシュを冷ややかな視線で寄せ付けないモンモランシー。日頃の女癖が災いしたのも原因だろうが、モンモランシーも結局ギーシュとあまり変わらないようだ。青年はルイズとサイトの方へ近づくと、白い歯をキラリと光らせながら笑顔で自己紹介した。
「僕はジュリオ・チェザーレ。ロマリアの神官さ。よろしく」
「はっ、はい…//」
思わずルイズは彼の顔立ちの良さに顔を赤くしてしまった。でもその熱気もすぐに覚めてしまう。
「女子生徒、全員並べ!」
アニエスら銃士隊が突然学院に総動員でやって来た。

アンリエッタの判断によるものだった。よって彼女は銃士隊の隊員たちと共に、女子生徒たちに最低限の自衛ができるようにするための訓練を行うことにした。
男子生徒たちが学院を去ってから訓練は始まった。女子生徒たちには先を布で覆った棒が配布された。ちなみに神官であるジュリオは立場上軍に志願できなかったため、一緒に訓練に参加した。
だが彼女たちはメイジで貴族。平民出身である癖に上から目線のアニエスを快く思わないのがほとんど。魔法だってあるのに棒など必要ない。
「こんな棒いらないわ。実戦用の魔法の訓練の方がいいじゃない」
モンモランシーは棒を捨てて杖を取り出し、アニエスに抗議した。
「ほう…ならば!」
瞬時にアニエスはモンモランシーの手を捕まえ、杖を取り上げてしまう。
「どうした?魔法で私を倒してみろ」
「痛い!離してよ!」
そろそろ痛がっていたので彼女はモンモランシーを離し、杖も返した。
「敵は呪文の詠唱時間さえ与えてはくれんぞ。これは最低限自分の力のみで身を守るための訓練だ。お前たちにあわせて魔法の使用許可のある訓練も行う予定だから安心しろ。さあ、死にたくなければ文句を言わずに訓練に励め」
それからようやく訓練が始まった。まずは突きと構えの繰り返し。
ジュリオはそのルックスのおかげもあってキュルケを含むたくさんの女子生徒から一緒に訓練しようと誘われたが…
「ごめんね。僕の相手は一人だと決めてるんだ」
彼が決めていた相手、それはルイズだった。
「なんでルイズなのよ!」
納得できないキュルケは悔しそうに歯をむき出しにする。
「ほら、遠慮なく」
「はっはい。やあ!」
誘われるがまま棒を構え、ジュリオに突出するが、ルイズはさすがになれてないものだからあっさりと避けられた。というか肩に手を回された。
「ダメダメ。そんなんじゃ簡単に避けられちゃうよ?」
「あ、はい…//」
ジュリオに居てすぐ、自分がジュリオに見とれてしまっていたことに気がついた彼女はすぐブンブンと頭を振った。そしてサイトの方に視線を向けたのだが、サイトは平民でこの学院にとどまってるだけの存在だからか、訓練には参加していない。暇そうにルイズたちの訓練を見ながらあくびしていた。
(ちょ…まるで興味なし!?少しは嫉妬位しても…って違う!あいつはただの使い魔じゃないのよ!!そう、それだけ…なんだから…)
とその時、いきなり木剣で銃士隊副隊長のミシェルがサイトに攻撃を仕掛けてきた。
「!」
とっさに反応したサイトはデルフの峰で防ぐ。
「悪くない反応だな」
「いきなり何するんですか!?」
「敵はいつ来るかわからん。お前も死にたくなければ訓練を参加しろ」
ミシェルは二本持っていた木剣のうち一本をサイトに渡す。
「さあ来い。木剣でも私は倒せるぞ」
「あ〜もう、やるしかないか…せあ!」
ガキン!と凄まじくぶつかる音がつばぜり合いの展開と同時に二人の木剣から響いた。それからしばらく経ち、二人の息があがったところで休憩に入った。サイトが水分補給をしていると、ジュリオが彼に話しかけてきた。
「見事な太刀筋だったね」
「そりゃどーも」
実を言うとサイト、地球で暮らしてた時からなのかジュリオのようにチャラチャラした奴が嫌いなのだ。個人的にあまり好印象を持てない。
「なんか嫌われてるみたいだね。じゃあ、僕と勝負してみないかい?」
「は?」
「君の実力がどれくらいのものか見極めておきたいんだ。そうだな…勝った方がルイズとキスするっていうのはどうだい?」
「なななななによそれ!勝手に決めないでよ!!」
聞き捨てならんと顔を真っ赤にしてルイズはジュリオに怒鳴りだした。
「危ないから木剣でどうだい?」
「別にいいけど…」
サイトはデルフと、ベルトのホルダーにしまわれていたウルトラガンと地下水を下ろし、立ち上がって木剣を手にとった。
「ちょっと止めなさいよ!」
ガンダールヴの力は本来実戦用の武器じゃないと発揮できない。現時点ではデルフなどの武器がないと力を出しきれないのだ。ルイズもそれをわかっていた。けがでもしたら大変だと思っている。だがサイトから見れば絶好の機会にも考えれた。ガンダールヴの力を木
剣でも発揮できるようにするとか、ガンダールヴなしでどこまでやれるかを確かめることができるかもしれない。
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