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□File11
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「ああ、よかった!ルイズの心を全部取り返したのですね!」
現実世界、ネガ・ハルケギニアのトリスタニアの城に戻ってきたサイトたち。
「ありがとうサイトさん、シュウヘイさん、そしてクリス。私のお友達のためにここまでしてくださるなんて、感謝の言葉が見つかりませんわ」
「いえ、そんなにかしこまらないで…」
入り口ホールで脱け殻となったルイズの体を見張っていたアンリエッタとウェールズと合流し、これまでの経緯を簡潔に話した。
「ルイズ…」
サイトはルイズの脱け殻となった体に近づき、試しにルイズの心のカードを掲げてみた。が、何も起こらなかった。
「ウェザリー…あの女を倒さなくてはならないようだな」
「そうか…やはり戦わないとダメなのか」
サイトとシュウヘイの入った仮想世界への扉がなくなっている代わりにホールの奥行きに新たな扉が一つ置かれている。
「クリスとリシュも皇子様や姫様と一緒にここで待っててくれ。俺とシュウヘイでウェザリーに会いに行く」
「サイト…大丈夫なのか?」
「気をつけてね…」
「大丈夫だって。必ず戻るから」
サイトはクリスやリシュに笑顔を見せる。
「シュウ…」
「そんなに心配しなくても平気だ。さっきみたいなことは起こさないし、死ぬつもりはない。ここで待ってるんだ」
心配そうに自分を見つめるテファに、シュウヘイは彼女の肩を軽く叩いて言った。
「くれぐれも気をつけてくれ。二人とも」
「あなた方に始祖のご加護があらんことを」
ウェールズとアンリエッタの祈りに後押しされるように、サイトとシュウヘイはその扉を開き、その先にいる敵の元へ向かった。

神殿、居住区、そして彼らに馴染みのある巨人たちに酷似した朽ち果てているいくつもの石像…
そこはまるで古代ギリシャの遺跡のようだった。
「この石像、ウルトラマン?」
朽ち果てた石像には、彼のウルトラマンゼロとしての記憶の中であったことのある戦士と似た石像もある。印象的かつ興味を抱かずにはいられない場所だ。
「ルルイエ…とある世界に存在していた古代文明の街」
二人はその声の聞こえた方を見ると、ウェザリーが二人の前に姿を現した。
「このフロアはそれをただ再現しただけの見せかけの遺跡だけどね。計画が台無しになった今、あなたたちにはこの石像たちのように朽ち果ててもらわなくてはならないといけないわ」
戦う意思を見せ、彼女は金色のスパークレンスを手にとるが、その瞬間サイトは彼女に平手をバッ!と見せた。
「待てよウェザリー。どうしても戦うのか?」
「なんですって?」
「お前の過去はトリスタニアで起こった獣人事件で知った。確かに自分の身に起こればすごく辛いしやり返したくもなる。でも、その憎しみで結局なにを手に入れたんだ?」
サイトには憎しみだけで力を奮うおろかさを知っている。以前シュウヘイの養っていた幼い少女を憎しみのあまり、彼女を捕まえていたビーストごと傷つける結果に終わってしまった。残ったのは結局、虚しさだけだ。彼女の父と母の幸せを奪われた怒りや悲しみは痛いほどわかっているつもりだ。
「頼む。もう誰かを傷つけるのはやめるんだ!これ以上戦っても、お前はその心を持て余すだけだ。後悔しか残らない」
「…そんなの知らないわよ。あなたは本当おめでたいわね」
サイトの必死の願いを冷ややかな返事で一蹴するウェザリー。話を聞く気すら持ってなかった。
「だからこの世界の貴族は自分の行いの愚かさにいつまで経っても気づかないのよ。それでも私を説得するつもりなら…」
彼女は金色のスパークレンスを開き、黒い稲妻に身を包むと巨大化し、黒く鈍った銀色の女のウルトラマンの姿に変わった。
『闇の愛憎戦士・ダークカミーラ』
「そのままなにもせずここで死になさい!イェア!」
〈カミーラウィップ!〉
彼女は右手に氷の鞭を出現させ、サイトたちに向かって振り回した。
「…ここまで聞く耳持たずじゃ連行できそうにないな」
シュウヘイはカミーラの鞭を避けながら呟いた。
「相棒、ここは戦うしかなさそうだぜ」
「あっしもいますよ旦那。このまま説得続けたら死ぬだけですぜ」
「…ああ、わかった」
サイトはブレスレットからウルトラゼロアイを目に装着、シュウヘイはエボルトラスターを掲げてウルトラマンゼロとウルトラマンネクサス・アンファンスに変身した。
「デュワ!」
「シェア!」
カミーラは二人が変身したのを確認すると、鞭の速度をより速くした。反撃の余地すら与えないつもりなのが認識できる。
〈ゼロスラッガー!〉〈シュトロームソード!〉
「デルフ・地下水、行くぞ!」
「おう/へい!」
ゼロは二本のブーメラン、ネクサスはジュネッストリニティにチェンジし光の剣を出現、果敢に振り回してカミーラの鞭を打ち返していく。
「ジュ!デュア!」「ハッ!デア!」
「少しはやるようね。なら、これでどう?」
〈アイゾード!〉
カミーラも鞭を氷の剣に変化させ、手始めにゼロに切りかかってきた。
「フ!ハ!」
次々と迫り来る剣の攻撃を防ごうと、ゼロスラッガーで防いでいくゼロ。ゼロスラッガーとアイゾード、剣と剣のつばぜり合いが起こるとカミーラは口を開いた。
「あの最悪の夜、私は貴族だけでなく人間達からの迫害に毎日怯えて生きてきた。単なる人間と獣人のハーフなのに化け物扱いされ、いつ殺されるかも分からず、ただ光の無い明日に縋りながら…ね!」
〈カミーラウィップ!〉
背後から剣を振り上げて切りかかってきたネクサスの両腕に、カミーラは左手から新たに作り出した鞭を絡みつかせた。そのせいで彼は攻撃を相殺されてしまう。今度はネクサスに話しかけてきた。
「あなたは闇を抱え、しかもあのお方から認められているのになぜ闇を否定するの?心のどこかで闇を恐れてるのかしら?」
「そうじゃない。俺はただ…」
ネクサスはリーブスラシルのルーンを光らせ、ビースト『ぺドレオン』から修得した紅い雷を剣に通していく。
「あんたらの匂いが嫌いなだけだ!デア!」
〈雷光閃!〉
勢いのまま、彼は雷の纏った光の剣で無理矢理カミーラの鞭を引きちぎった。その隙にゼロはバック転で一度距離を置き、カミーラに緑に光る閃光を発射した。
〈エメリウムスラッシュ!〉
「デュア!」
「ックア!」
光線を受けたカミーラはダメージを受け、少し仰け反った。だんだん苛立っていく彼女はゼロに向けて鞭を振るおうとしたが、真上からネクサスが剣で串刺しにする勢いで落下してきた。辛うじて避けるが、剣が地面に突き刺さった瞬間彼の周りで地面が爆発、カミー
ラはその衝撃で宙に打ち上げられた。
〈流星刃!〉
「フ!」
「ウアアアアアア!!」
宙に浮き上がった彼女はやがて地面に激突する。今のはかなり効いているようだ。
「なぜ…」
カミーラは立ち上がると、再び二人に尋ねてきた。
「それだけの力を持ちながらあのクズな人間の為に命をかけられるの?あんな世界、一度壊してから作り直したほうが…いいじゃない」
しばらくの沈黙の後、ゼロはその質問に答えた。
「俺達はただ、平和の為に信じられる人に力を貸すだけでいいんだ。人間に復讐したってなにも生まれやしない」
力を持ってるだけの戦士や権力者が無理に世界を変えようとしても、余計に混乱を招く可能性が高いのだ。どんなに世界を思っていたとしても。ネクサスも口には出さなかったがゼロと同じ考えだった。
「本当に甘いわね…まあいいわ。どのみちあなたたちとは相容れないようね。思う存分、お前たちを殺せる」
カミーラが自分の武器を消した瞬間、彼女は辺りから発生させた闇に身を包み始めた。とてつもなく深く、重苦しい。二人は闇で姿が見えなくなっていく彼女を見ながらそれを感じていた。
「これが、闇…」
「生きてて6000年、あんなの初めてだぜ…」
ゼロスラッガーに宿っていたデルフが恐ろしさの余り声を震えさせていた。彼らのいる場所の上空に闇はより濃さを増し、やがて中央からおぞましいが姿の怪物が顔を出した。
『暗黒魔超獣デモンゾーア』
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