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□File10
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「やっぱり開かない!」
サイトからおいてけぼりにされたクリス。
すでにサイトが入り込んだ本は固く閉ざされていた。
あれから一時間、刀で扉を開こうとしたり、鉄を切り裂く風の魔法『エア・カッター』などで試してみたが、やはり開く様子がない。
「鍵がなくては開かないのか…このままではあいつは…」
サキュバスのいい操り人形にされてしまう。
「こうなったら、ダメ元で!」
ヤケになったクリスはコモンマジック『アンロック』で扉を開けようとした。
カチャ…
「……え?」
どこからか扉の鍵が開く音がした。
辺りを見渡すと、壁の一部から光が差し込んでいる。どうも隠し扉があったようだ。
その扉を開くと、先ほどとは違ったところが見受けられる部屋が彼女の目に飛び込んできた。巨大な水晶に椅子に座り込む青い髪の少女。
いや、待てよ、あの悪魔のような角は…

「お前…」
その少女はリシュ。偶然にも目的であるサキュバスの彼女を発見したのだ。彼女も驚いたように顔をあげてクリスを見た。
「貴様!よくも我が友をたぶらかしおったな!」
刀を抜き、彼女に向けて剣先を向けるクリス。サムライ魂を持つ王族だからか、義理堅い彼女にとって仲間が耐えがたい目に遭うのは嫌で仕方ないのだ。
「待って!仕方なかったんです…」
「仕方ない?」
「お願い!私を彼の、サイトのもとに着くまで護衛をしてください!詳しいことはその途中で話します!」
「なんだと?」
信用できない。こいつはサイトを陥れようとした張本人ではないか。
「すぐに信じられないのはわかります。でも私…彼に謝らないといけないんです!」
とその時、二人の足元が突然弾け飛んだ。クリスは顔をあげると、ワルドがレイピア型の杖をこちらに向けているのが目に入る。
「ネズミが侵入していたとはな」
シュウヘイが自我を失って暴れている間、クリスに逆上したサイトは彼女から取り上げたカードで新たな世界な足を踏み入れていた。その世界での彼は防衛チーム『HEART』の一員として地球の平和を守ることになっている。はやくノルマを達成し、リシュを助け
なくては…それしか考えきれなかった。
そして現在、同じHEARTの隊員『カグラ・ゲンキ』とともにカバンを必死に抱え込む少女を後ろに下げ、自身は目の前に現れた、凄まじいプレッシャーを放つ帝王のごときエイリアンと退治していた。
「その小娘を渡してもらおうか」
「ダークマターに飲み込まれたザム星はいまやお前たたのものだってのはわかった。でもな、彼女たちにはお前たちから故郷を取り返そうなんて意思はない。やっと地球という平和な星で住む場所を見つけたんだ。なのになぜ執拗に彼女を追う!?」
その彼女…それはルイズだった。この世界では希望を意味する『エスラー』という名前で『脳魂宇宙人ザム星人』の王族の一人として役割を担っている。
ザム星は宇宙に存在する黒い闇『ダークマター』に飲み込まれ、そのダークマターで誕生した怪獣たちによって故郷を追われてしまい、地球に漂流してきたのだ。今目の前にいるエイリアンは彼らザム星人の星を、怪獣たちを退けることで手に入れたのだが、今目の前にいるエスラーがいずれ自分からザム星を取り替えそうとしているのではと警戒しているのだ。
「私にはわかる。その小娘が私の障害になるとな」
「彼女にはザム文明の未来がかかってるんだ!お前に渡してたまるか!」
カグラが誰がお前なんかに!その意思を込めてエイリアンに怒鳴り付ける。
「話し合いは無駄なようだな」
エイリアンは自らの体を紫色のオーラに包み込むと、姿形を変えて巨大化していく。
その姿は先ほどの多少人間に近い姿ではなく、完全な怪人としての姿となっていた。
『宇宙進化帝王メンシュハイト』
「カグラ、お前はエスラーを連れて先にいくんだ!」
「でも…!」
サイトの提案に一言もの申そうとするカグラだが、それ以上反論できなかった。実はこの時のカグラの体はすでにボロボロだった。なぜならメンシュハイトと遭遇する前に現れた怪獣との戦闘で、勝ちはしたもののエネルギーのほぼ十分の九を使い果たしてしまってい
たのだ。
仕方なく彼女を連れてその場から離れていった。
「なあ相棒」
デルフが鞘から顔を出した。
「あのサムライの娘っ子にあんな言い方しなくても…」
いくらサムライ魂を持ってたとしても女の子、この世界に来る前に置いていったクリスが深く傷ついているのではないかとデルフは気にしていたのだ。
「旦那、あっしもちょっと気になって…」
「黙ってろデルフ、地下水!そんなことよりもあいつを倒すのが先決だ!」
二人を黙らせると、サイトはブレスレットからウルトラゼロアイを取り出し装着、ウルトラマンゼロに変身した。
「シャ!」
〈ゼロスラッガー!〉
変身と同時に二本の宇宙ブーメランを投げつけるが、メンシュハイトはなんなくそれらをジャンプして避けた。そして、ギン!と目を開いて発生させた衝撃でゼロを吹き飛ばした。
「ウワアアアアッ!」
たった一撃だけでもかなり重たかった。
そこからメンシュハイトは容赦なくゼロに向けてエネルギー弾を連射する。
「く!」
〈ウルトラゼロディフェンダー!〉
ブレスレットを盾にしてそのエネルギー弾を弾き飛ばすが、盾越しにも関わらず凄まじい衝撃が走り、ゼロの体に痺れを引き起こさせる。
「ッアッ!」
そこでメンシュハイトの攻撃は終わりはしなかった。超能力で動きを封じ、電撃を流し込む。
「グワアアアッ!」
その最中、ゼロは見た。自分の仲間であるクリスともう一人が、ワルドに追われているのを。
「リシュ!」
そのもう一人がリシュだとわかった時は偶発的にも力が上がり、無理矢理拘束を解いた。
「デュア!」
解放されたのはいいが相手はメンシュハイト。簡単に倒せる相手ではない。
だからといってリシュたちをほったらかしたらワルドの餌食にされてしまう。
だがその時、彼に思いがけない助っ人が現れた。
〈ヴェルザード!〉
父ウルトラセブンのものと酷似した宇宙ブーメランがメンシュハイトに直撃した。
「ギュオオオオ!?」
ブーメランが飛んできた方を見ると、セブンのように赤いボディを身に纏う戦士がいた。
宇宙警備隊・宇宙保安庁所属でウルトラセブンの後輩。そして彼とよく似た容姿から「21世紀に現れたウルトラセブン」という意味である名前が与えられた。
その名は『ウルトラセブン21』!
「光の国の友よ!君の仲間が助けを求めてる。さあ、行くんだ!」
「助かったぞ、セブン21!」
ゼロはすぐ自らの体を縮め、リシュたちのもとへ急いだ。
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