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□File8
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「これは…」
窓の外に広がる景色を眺めるシュウヘイとテファは素直にすごいと感じていた。
防衛組織 XIG(シグ)の巨大基地、『エリアルベース』。その名の通りその要塞は空の上に浮かんでいたのだ。
「これほど巨大な機械の要塞を空に常時浮かせるとは…」
「シュウの故郷でも、なかったの?」
「ああ、さすがにこれほどの要塞はなかった」
「凄いでしょ?このエリアルベース」
二人の後ろから、少し髪の長い若い青年が話しかけてきた。
「このエリアルベースを空に浮かせるシステムを作ったのは僕なんだ」
「あんたが?」
シュウヘイは耳を疑った。その青年は、推定でも年齢はシュウヘイと一つ上くらいにしか見えない。いくら自分と同じプロメテの子として誕生した憐もキャラに関してはアホっぽいがIQに関しては決してバカではない。そうでもないのにこの青年はこれほど優れたシ
ステムを開発したのだ。
「君が新しく配属された黒崎君だね?僕は高山我夢」
「我夢、か。変わった名前だな」
「自分でも思ってるよ」
我夢は笑いながら握手を促すように手を伸ばし、シュウヘイもそれに応えその手を握り返した。
実はこの我夢、地球から光を授かり、大地の赤い巨人『ウルトラマンガイア』となった。それが、彼がXIGに入隊するきっかけとなったのである。
「君は見習いオペレーターのティファニアさんだね。気を付けなよ、君の先輩になる敦子は怒ると怖いから」
「はっ、はい…」
テファの耳元で警告する我夢。純粋かつ天然な彼女はなんでも信じやすいから彼の言葉をすんなり信じてしまう。
「があああむううう…?」
後ろから何やらドス黒いオーラが忍び寄ってきた。声は女の子らしく可憐だが、その奥はとてつもなく怖いものだった。我夢は冷や汗をかきながら恐る恐る振り向くと、そこにはXIGの隊員服を着たルイズが鞭を持ってそこに立っていた。さっきの我夢の発言にキレ
ているようだから、この世界では『敦子』の役回りらしい。
(まさか…)
この後の展開を予想したシュウヘイはテファを連れてその場から離れた。
「ってあ!黒崎君待って!」
助けを求める我夢だったが、シュウヘイの耳に届くことはなかった。代わりに…
「我夢のバカあああああああああ!!!!」
「いいい痛い痛い!敦子痛いって!あああああああああ!!」
敦子の『乙女の怒り』が炸裂。その我夢の悲鳴を聞いたベース中の人たちは、聞こえないフリをしていたことは言うまでもない。

「俺の光は、もうないか…」
遥か彼方まで広がる海の見える港に、一人の白髪が少し目立つ青年がいた。
『藤宮博也』。彼はかつて地球の海より光を授けられ、『ウルトラマンアグル』への変身能力を得た。だが彼は遥か昔に発見されたある記録から、地球を守るためには人類は滅ぶべきと考え、人類を守ることを第一とする我夢と対立したことがある。かつてサイトとシュウヘイが争ったように。だがその記録は自分や我夢と対立する存在『根源的破滅招来体』の計らいによるものと知り、自分が地球を乱していたこと、そして自分に守るもののないことを自覚して、彼は我夢にアグルの光を渡して姿を消してしまう。
現在はただ無駄に時を過ごす毎日である。
「稲森博士…俺はどうすればいい?俺は結局地球のために何もできやしなかった。どうすればいい?」
稲森京子博士。藤宮が唯一尊敬する生物研究者。かつて怪獣を制御するシステムを開発しようとしたが失敗、逆に怪獣に殺害されてしまった人物である。
『私を呼んだの?藤宮君』
「!」
藤宮はその声にハッ!と顔をあげる。今の声は9時の方角からだ。その方を見ると、白衣を着た女性が藤宮を見ている。
「稲森博士…?」

「一週間前より、東京湾上空に謎の振動波を確認した」
エリアルベース作戦室にて、石室司令官(コマンダー)は各隊員にある怪奇現象について報告した。
「ここしばらくこのエリアルベース真下の都市地域上空でも似たような現象が起こっている。もしかしたら根源的破滅招来体の可能性がある。諸君らにはこの怪奇現象の解明をしてもらいたい」
この作戦で最初に任務にでることに、シュウヘイと我夢の二人が選ばれた。
シュウヘイはXIGの複数の作戦チームの一つ『ライトニング』の戦闘機『XIGファイターSG』で出撃、我夢も『XIGファイタスカイゲイナーーEX』で出共に撃した。
エキサイター
「あのさ…」
我夢が通信機を通してシュウヘイに話しかけてきた。
「君となんか雰囲気の似た人がいたんだ」
「俺に似た?」
「うん」
そこから我夢は藤宮との出会いから今までの経緯を簡潔に説明した。
「予想だけど、やっぱり君も?」
そこで我夢の言葉は途切れていたが、だいたい言いたいことをシュウヘイは理解した。
「…まあ、地球から授かった光じゃないが。だが、何が言いたいんだ?」
「藤宮は最初人類を敵だと思ってた。でも君は、藤宮みたいに後悔してほしくない。それをわかってほしいんだ」
「俺には、信じてる奴がいる。だから、そいつが信じる連中を俺は信じる」
今自分を信頼してくれるテファやサイト、そして自分の元の世界にいる仲間の期待に応えるため、自分は戦わなくてはならない。そう考えていた。
「それを聞きたかった。ありがとう」
我夢がそう礼を言った時だった。ブーッ!ブーッ!と二人の機体からブザーが鳴り出した。
「これは…!」
モニター上の地図を見ると、二人から十時の方角に何かの反応がある。
そしてさらに、エリアルベースからも通信が入った。
『えっと…こちらティファニア!これでいいのかな?』
初のオペレーターの仕事に慌て気味のテファがシュウヘイに通信を入れてきた。
「どうした、テファ?」
『あんたたちがいる場所から反対側にもエネルギー反応があるわよ!』
続いて敦子が怒鳴るように口を挟んだ。確かに、真逆の方角にも何かの反応を示す赤い点がモニター上の地図に打たれている。
「高山、この先の方は俺が行ってみる。あんたは反対側を」
「よし、気を付けてくれよ」
シュウヘイはこのまままっすぐ、我夢は機体を反対側にUターンさせ、エネルギー反応の出た各ポイントに向かった。
シュウヘイの向かうポイント、そこには真っ黒に染まっている雲なのか、穴なのかわからない巨大な何かが空に浮かんでいる。
(突っ込んでみるか)
シュウヘイはファイターをその先の黒い穴に突っ込ませた。
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