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□File6
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「…」
新たな仮想世界の大地を踏んだところで、シュウヘイはアスファルトの上に落ちていた一枚のボロボロの紙を拾い上げた。
『やりたい放題ダイナ。街の被害甚大!』
新聞の切れ端だった。その記事に記載された写真には、ボロボロの街のど真ん中で勝ち誇ったようにガッツポーズを決めるウルトラマンダイナの姿があった。
『ウルトラマンダイナは街の被害を全く省みず、街に現れた怪獣を光線で倒そうとした。しかし何度か空振りに終わり、その度にビルが破壊され、ダイナはその繰り返しの結果、街に甚大な被害を残した形で怪獣を撃破。しかし、以前にも似たようなやり方でダイナは怪獣を倒し、街をボロボロにしている。まるで本人は我々人類の味方と言うより、ただバトルを楽しむためなら周りのことを考慮しない迷惑野郎だ。地球防衛軍はダイナへの対策として、彼がまた現れた時は彼を戦いから除外する作戦を考慮している』
「迷惑ヒーロー、ダイナってことか」
新聞を公衆のゴミ箱に捨ててシュウヘイは言った。
「なんで迷惑なの?ウルトラマンって、人の味方なんでしょ?」
テファは日本語が読めないので、なぜシュウヘイが一枚の紙の切れ端を見ただけでダイナを『迷惑』と言ったのかわからなかった。
「この世界のウルトラマンダイナは人のために戦ってるのではないってことだ」
「なんで?」
「それを今から調べる。幸い、この世界でも防衛軍の役割を任されてるようだしな」
現在二人の服装は、『GUTS』とアルファベットで描かれたエンブレムを刻まれた隊員服を身に付けていた。だがサイトたちの訪れたティガの仮想世界のGUTSとは違い、それとは対照的な黒と赤の色をした服だった。この世界を守る防衛チームは『スーパーGU
TS』、GUTSから発展した対怪獣防衛チームだ。
しかし、イザベラと出会ったアスカのいた世界とは違う。それは仮想世界だからではなく、アスカの変身するダイナがこの世界のダイナとは違い、単に力を自慢したがるような戦士ではないからだ。
そんな事実を知る由もなく、シュウヘイの通信機『ウィット(W.I.T)』から音が鳴り出した。
『黒崎、ダイナはおそらく人間の姿に化けて潜伏しているはずだ。見つけ次第保護しろ』
「見つけて、どうするつもりだ?と言うか、あんたは誰だ?」
『はあ!?隊長の俺の名前も忘れちまったのか!?ヒビキだ!ちゃんと覚えとけ!』
鼓膜が破れそうな怒鳴り声でキーンと耳鳴りがシュウヘイの頭の中で走り出す。
『ったく、血圧上がったりだ。とにかく、見つけ次第保護しておけ。仲間に率いれてみっちり教育しとかねえと奴はまた街に被害をだすかもしれねえからよ。じゃあな!』
そこでプツンと通信が切れた。
「…すでに会ったことがあるという設定か。勝手だな」
ヒビキ、スーパーGUTSの隊長らしい。だが二人はさっきのマックスの世界の時のように自己紹介してもなければ会ってもない。この世界のヒビキの記憶ではすでに会ったことがあるようになっているようだ。
「手分けして探す…は無理か。お前はなんか方向オンチな気がするし、第一一人じゃ危険だしな」
ここはハルケギニアでもなければ、二人の住んでいる場所でもない。彼女を一人で出歩かせるには危険が伴う。怪獣がいきなり現れたりしたら対処できない。
「シュウ、酷い…」
あうう…と元気を無くしかけるテファ。
「そう気を落とすな。俺がその分カバーすれば済む話だ。だが…」
ヒビキの情報だとダイナは人間の姿を借りて潜伏しているとなってるが、特徴に関する情報が乏しいどころか全くない。どうやって探せと言うのだ?
「雲を掴めと言われてるようなものだ」
「くっ、蜘蛛?」
虫の蜘蛛を掴むのかと勘違いするテファ。確かに掴みたくはないだろうが…
「ベタなボケは止めろ…」
彼女の勘違いにシュウヘイは呆れるしかなかった。
「ちょっと!」
そこで聞き覚えのある声が二人の耳に入った。
「何そこでボーッとしてんの?」
ルイズだった。彼女もまたスーパーGUTSの隊員の役割を与えられている。おそらく自分たちとも面識のある設定となってるかもしれない。
「ダイナの情報について何か掴めたか?」
以前から会ったことのある話し方でルイズに尋ねてみた。
「ふふん、聞いて驚きなさいよ。掴んだにも何も、ダイナは私の知り合いが変身してたんだから!」
今回のルイズ、結構現実のルイズとキャラがほとんど変わってないようだ。威張り具合が全く同じ。
とにかくダイナの情報があれば、真相を確かめることができそうだ。ダイナがなぜ、あんなに周囲に被害を伴うような戦いをするのか。
「よし、案内しろ」
「少しは驚きなさいよ…まあいいわ。このGUTSのスーパーレディ『マイ様』に着いてきなさい!」
また無駄に威張る…故郷にいるナイトレイダーの平木隊員みたいにも思えてきたシュウヘイは疲れたように頭を抱えながらテファと共に彼女に着いていった。
「…」
そのダイナ、マイと同じスーパーGUTS隊員の真は公園のブランコに腰かけていた。ダイナへの変身に使う『リーフラッシャー』を手の中に握りしめ、本来の彼のテンションとは違い、沈んでいる。

一体何があったのだろうか?
実は新聞で『やりたい放題ダイナ』の記事が載る前のことだ。人気のない夜の闇の中…
『シェア!』
『デア!』
真は自分の変身するダイナに化けた、ある異星人に勝負を挑まれた。偽者なんかに負けるはずがない。それまでピンチに陥ることもあったが、彼は敗北することもなく数々の戦いに勝ち続けていた。しかし、
『ハアッ!』
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