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□File5
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「なんだよこれ…」
新たに訪れた世界で見た光景は悲惨だった。
二体の赤いモノアイの凶悪なロボットが、東京の街を破壊し尽くそうと砲撃を乱打している。人々はロボットたちの魔の手から、必死に逃げていく。
「なんだこの有り様は…私の国に怪獣が現れた時よりも酷すぎる…」
クリスもその目に映る、廃墟と化す街に言葉を失いかかけた。
その時、二人は目の前の公共ベンチで傷つき倒れていた青年を見かけた。直ちに彼の元へ駆け寄り、声をかける。
「大丈夫か!?」
「うっ…」
青年はうめき声をあげながら目を覚ます。
「平賀キャップ…」
「え?」
キャップ、つまり隊長と言われたサイトは自分とクリスの服装を確認する。『EYES』とアルファベットで刻まれたエンブレムと青を強調した隊員服に変わっていた。なるほど、この世界ではまた隊長と隊員の役割を任されてるようだ。ちょうど青年の身分証明書が
落ちていたので、彼の名を確認する。
『春野武蔵』
「武蔵、何があった?」
サイトは武蔵に尋ねると、武蔵は痛む体を起こして向こう側を指差した。
「ウワアアアア!!」
青いボディに赤の模様が刻まれた日食のフォーム。
優しさと慈愛の戦士、ウルトラマンコスモス・エクリプスモードが先ほどのロボット『スペースリセッター・グローカーボーン』の攻撃を我が身を呈して防いでいた。彼の背後には怪獣が一体すっぽり入るほどのロケットが幾つか並んでいる。コスモスはどうもそれを
必死に守っているようだ。
「コスモスは…同化していた僕を死なせまいと、僕と分離して…」
武蔵は今までコスモスと一心同体となり、戦い続けていたようだ。
「わかった。もう喋らない方がいい。ここで休むんだ」
「はい…」
「クリス、武蔵を看ててくれ」
「行くのか?」
同じサムライ(サイトはそのつもりではないかもしれないが)の友が戦場に出るのはやはり心配だったクリスは不安げに顔を曇らせる。
「大丈夫、コスモスだけじゃない。ルイズやリシュも助けないといけないし」
そう言ってサイトは、ブレスレットからウルトラゼロアイを取り出し、装着してウルトラマンゼロへ変身した。
「ジュワ!」
ゼロはコスモスの眼前に降り立ち、グローカーボーンの砲撃をブレスレットから出現させた盾で防いだ。
〈ウルトラゼロディフェンダー!〉
「!」
コスモスはまさかの援軍に驚きの様子を見せた。
「大丈夫か、コスモス!?」
「君は、一体?」
「ウルトラマンゼロ、ウルトラセブンの息子さ!デュア!」
ゼロは盾でグローカーボーンたちの攻撃を防ぎながら接近、盾をしまった瞬間飛び上がって必殺キックを放った。
〈ウルトラゼロキック!〉
「デアアアア!」
今の攻撃で一体のグローカーポーンが機能を停止した。残る一体も、ゼロの更なる必殺光線で撃ち抜かれる。
〈エメリウムスラッシュ!〉
「ギギ…」
残った一体も機械音を鳴らしながらその場に倒れた。
「ありがとう」
コスモスはゼロに近づいて礼を言った。
「君のお陰で武蔵の夢を、守ることができた」
「夢?」
そこからコスモスはゼロに武蔵との出会いからこれまでの話を簡潔に教えた。
最初に武蔵と会ったのは森の生い茂る公園の中、武蔵がまだ少年だった頃だ。バルタン星人との戦いで傷ついたところを武蔵に助けられ、彼が成長してからは彼と同化、カオスヘッダーと呼ばれる宇宙ウイルスとの戦いを経て、数々の怪獣だけでなく、カオスヘッダー
そのものの心すら救い出したこと。その後に現れたサンドロスと呼ばれる怪獣からは『ウルトラマンジャスティス』と共闘し、地球を守ったこと。
先ほども一度や二度分離した武蔵とまた一体化して戦ったが、武蔵の身を案じたコスモスは強制的に彼と分離した。そこでゼロが加勢し現在に至る。
「もうすぐ実現する武蔵の夢を一目見ようと地球に来たが…」
「あのロボットたちが地球に襲いかかってきたって訳か」
ゼロは完全に停止したグローカーたちを見て言うと、コスモスはゆっくり頷く。
「このロボットたちには見覚えがあるのだ。まさかとは思うが…」
そうコスモスは機能停止したグローカーを見ていた頃…
「あのウルトラマンは一体…?」
ベンチからそれを見て不思議がる武蔵にクリスは説明した。
「お前の言うコスモスと同じ、正義の戦士ウルトラマンゼロだ」
「ウルトラマン、ゼロ…」
『なぜ…』
武蔵とクリスの耳に突然、誰かの声が聞こえてきた。
『なぜコスモスはお前と同化したのだ?春野武蔵』
辺りを見渡すと、黒が目立つ服装を身にまとった女性の姿があった。
クリスはそれを思わず凝視する。あの桃の髪と小柄な体型…
「ルイズ…?」
ルイズだった。以前ティガの仮想世界でレナと名乗っていた彼女とは違い、どこか神秘的雰囲気があり、見るからにかなり大人びていた。
『夢…?コスモスはそんな曖昧なものを』
彼女は白鳥の翼を模したアイテム『ジャストランサー』を胸に当て、目映い光に包まれた。
『宇宙の正義より、優先すると言うのか!』
ルイズの変化した金色の光はゼロとコスモスの前に現れ、やがて力強さを持った赤いウルトラマンとなって現れた。
「君は…」
コスモスは声を震えさせる。
「ジャスティス!」
宇宙正義の守護者、ウルトラマンジャスティス・スタンダードモード。
「なぜ、君がここに?」
「…」
その赤い戦士、ジャスティスは何も答えず、停止したグローカーポーンたちに向けてエネルギー波を流し込んでいった。
〈ジャスティスリムーバー〉
すると、倒れたはずのグローカーポーンたちが再び起動したではないか。
「そんな!」
クリスと武蔵は目を疑った。ウルトラマンとは人類を守る存在のイメージが強い。にも関わらず、ジャスティスは人類の驚異であるあのロボットたちを復活させたのだ。
「ジャスティス、何故だ!?」
同じウルトラマンとは思えない行動にゼロはジャスティスに問い詰めたが、ジャスティスは返答の意志を全く見せなかった。それどころかゼロとコスモスに向けて光弾を放ってきた。
〈ジャスティススマッシュ!〉
「く!」
〈ゼロスラッガー!〉
とっさに反応したゼロは宇宙ブーメランを投げつけ、それをかき消した。
「相棒、あいつ何考えてんだ!?敵のデカブツ復活させやがったぞ!」
ゼロスラッガーの一本に乗り移ったデルフが信じられないと声をあげる。
「わからない…でも、止めないと!」
まずはグローカーを止めなくては。ゼロは素早くグローカーポーンたちに突進、唸りを上げた拳で二体を攻撃した。
「デュア!」
さらに追撃を加えようとグローカーに近づこうとしたが、その前にジャスティスが立ちはだかる。
「なぜ…」
「デアア!」
ジャスティスは容赦なくゼロにハイキックを放つ。辛うじて避けるゼロだったが、ジャスティスはすかさずゼロの首元を締め上げる。
「ぐっう…なんで同じウルトラマン同士で戦うんだ!?何でだ!?」
ゼロから見れば同じ光のウルトラマンとの苦い戦いはこれで二度目。あの時は敵だったネクサスに、たとえ盗賊でも守らなくてはならない人がいるという理由があった。ならばジャスティスにも似たような理由だってあるはず。だが、
「…」
ジャスティスはいまだ無言を貫き通していた。
「なんとか言ってくれ!なぜ何も答えないんだ、ジャスティス!」
「デアアアア!」
蹴りを返事代わりに放つジャスティス。どうしても話したくないのか、それとも話したところで無駄だと言うのか?
その時、グローカーたちが宇宙ロケットに向けて砲撃しようとする光景が目に入った。
「止め…」
止めに入ろうとするゼロだったが、間に合いそうにない距離。このままでは宇宙ロケットが…
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