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□File3
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仮想世界のとある山奥で…
「おい、バチ当たらないか?」
「今さら何言ってんだよ?昔っからよくやってたろ?それにこんな古ぼけた場所に置くだけなんてもったいねえ。換金して有効活用した方が効率的だ」
日本制と思われる、小さなお堂から、金箔で塗られた小さめの像と、立派な日本刀を盗み出している三人の泥棒集団がいた。
同じ頃、山道で一人の巡査が自転車で夜道を走っていた。
とその時。
『復讐だ…』
突然山が地鳴りを起こし、巡査は自分の走っている山の頂上を思わず見上げた。その山から、なんとウルトラマンの手とほぼ同じくらいの巨大な腕が飛び出してきたではないか。
「あぁ…ああああああ!!」
思わぬ光景に恐怖を覚えた巡査はすぐさまその場から逃げ出した。謎の巨大な腕は巡査が立ち去ると同時に、再び山の地面の中に潜っていった。

「ここは…」
見知らぬ地に来ると必ず出してしまう台詞を言うサイトとクリス。クリスにとってあり得ない光景と言えた。
彼女の感覚では、ガラス張りの壁が数多く敷き詰められ、しかも自分の国やトリステインの城よりもかなり高い。自分たちの立っている城の一階の、真ん中に空いている大きな吹き抜けがその巨大っぷりを物語っている。
しかも驚くことに、装備していた武器を除けばサイトとクリスの服装がいつの間にか変わっていたことだ。
「ここって…地球!?」
確かにここは紛れもない地球の施設だった。軍服のような格好をした人や白衣を着た科学者らしき人が多くいることから、おそらくここは地球防衛軍施設の一つなのだろう。だがサイトですら知らなかったことがある。
「TPC?」
吹き抜けの高い場所に『TPC』とアルファベットで書かれたエンブレムが飾られている。
「これが仮想世界ってのか。ここまで世界をリアルに再現できるなんて…」
タンブリメは一体何者なのだろうか?サイトはだんだんダンプリメへの不信感を抱き始めた。
「ここが師匠の言っていたサムライの国か?話とはだいぶ違うようだが…」
クリスはここが師匠の景竜のいた世界だと感じてはいるようだが、彼女の師匠のいた時代とは大きく異なっていた。
「いや、間違ってないよクリス。ただ時代が違っていたんだよ」
「時代が、違う?」
「多分クリスの師匠は俺の世界の時代とはまた違う、別の世界の遥か過去の時代からハルケギニアに流れ着いてきたんじゃないかな?」
そう説明はしたものの、やはり別世界の概念がないクリスが理解するのに少し説明する時間を要した。
「つまり、私の師匠のいた時代の遥か未来で、お前の知る地球とやらともまた違う世界だと言うことか?」
「あくまで予想だけどね」
「世界とは広くて難しいな。私が師匠から学んだ武士道よりも難しいな…」
とクリスは少し難しい顔をした。まだ理解しきれてないようにも思われる。
「おい、相棒…」
デルフは突然鞘から顔を出してきた。その声は何かに驚いてるように震えている。
「どした?デルフ…って!?」
「まさか…」
間違いない。自分たちと同じ白を強調とした隊員服にあの桃色の髪をしている少女…
「ルイズ!?」
ルイズだった。だがさっきまで目覚めぬ眠りについていた彼女がなぜここにいるのだ?
とにかく話を聞いてみよう。サイトはルイズに駆け寄った。
「ルイ…」
「やっと見つけたわ!あんたが新しく配属されたサイトリーダーにクリス隊員ね!さっきまでどこで道草食ってたのよ?」
サイトの顔を見るや否や、ルイズはいきなりサイトに怒鳴り出した。
「は…あの〜ルイズさん?どうかしたんでしょうか?」
「ルイズ?誰のこと言ってんのよ?私は『レナ』よ!覚えときなさい!」
レナ?いや…そうか。
確かこの世界はタンブリメの作り出した仮想世界。タンブリメはルイズの心を分け、俺たちに用意した世界に一つずつ振り分けたんだ。
そしてこの世界でルイズは『レナ隊員』の役を与えられたからサイトを知らず、『サイトリーダー』なんて呼び方をしてるのだ。
「集合かかったからあんたたちも一緒に指令室に来なさい。イルマ隊長がお呼びだから」
そう言うと彼女はきせるを返して歩き去っていった。
「ハルケギニアでの俺たちを知ってるようには見えなかったな」
「確か、あの銀髪小僧は『物語を完結させろ』とか言ってた。旦那と武士の娘さんがこの世界でやるべきことは、この世界で与えられた役割を果たすこと、ってことなんでしょうね」
地下水が言った。
「とりあえず、指令室って場所に言ってみよう。役割を果たすために何をするべきかわかるかも」
「そうだな、行こう」

この世界の防衛チームの名前は『GUTS』という名前で、元々は謎の現象の解明を明かす仕事だったが、突然の怪獣復活を期に、対怪獣防衛チームとなった。
指令室に来たところで、二人はそこで待機していた隊員たちに自己紹介した。
「本日、このGUTSに配属された新副隊長の平賀サイトです」
「新隊員のクリスティナ・ヴァーサ・リクセル・オクセンシェルナです。クリスで結構」
ちょっと緊張はしたが、はっきりと答えた。
「新しいリーダーなのに、すごい緊張してますね。あっ、僕はヤズミです」
ヤズミ、隊員たちの中でも若く、怪獣分析を担当している。
リーダーとは、このGUTSでは副隊長格の人間の通称のようだ。
「なんか新しく入隊してきた時のダイゴみたいやな〜。俺はホリイ。よろしゅう」
関西弁で喋るこの小太りの男性は兵器開発に優れたホリイ隊員。
「止してくださいよ。あっ、今ホリイ隊員の言っていたダイゴです。よろしくお願いします、平賀リーダー、クリス隊員」
「ああ」
ダイゴが手を出すと、サイトもその手を握り握手した。その時の二人は一瞬、不思議な感覚を覚えた。
(この人…何かを感じる…)
(このダイゴって奴、なんか俺みたいな力を…)
「何ボーッとしてんのよ?」
レナの一言で二人はハッ!と我に返る。
「あはは、何でもないよレナ」
ダイゴが誤魔化すように笑うと、女性隊長イルマがちょうどかかってきた電話を切り、隊員たちの方を向いた。
「昨日の夜、宿那山にて突然巨大な腕が出現したとの報告があったわ。平賀リーダー。早速クリス隊員とダイゴ隊員、そしてレナ隊員と一緒に宿那山に行ってくれるかしら?」
「わっ、わかりました!」
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