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□File1
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とある暗い闇の一室にて、石堀と、椅子に居座る漆黒のマントに身を包んだ謎の男がいた。
「レーテの闇はどれだけ溜まっている?まだ満足のいくまでに達してないのか?」
「ああ、これだけの闇を積めた世界から残らず搾り取るのは時間がかかる。
俺のいた地球に保管されていたオリジナルのレーテを元に製造し、20年ほど前からこの場所に設置したが、なかなか苦労している」
「その闇が打ち払われなければいいがな」
「今度は闇だけじゃない」
石堀は首を横に振った。今回彼が求めるのは、本来の力の源である闇だけではないようだ。
「真の『伝説』すらもこの身に留まらせ、史上最強の戦士になってみせよう」
「ふっ…協力者として期待はしておこうか。それはそうと、君の元部下だが、私に引き取らせてもらえないか?」
「あいつを?なぜだ?」
石堀にとってその『元部下』は自分に逆らった用無しでしかない存在。なぜこの男は彼を引き取ろうとしてるのかわからなかった。
「どうもこの体の元の主が急かすのだ。『あいつがどれだけ成長したのか』とな」
「それは、あのウルトラマンゼロのことか?それとも、その体の持ち主の息子の…」
「強いて言えば、両方かな?そのために君の残った部下たちにも彼を試させてもらいたい」
「先に獲物を横取りされても文句は無しだぞ?それと、あの六番目のデュナミストは俺の獲物だ。なんたって奴は後輩でもあり、そしてなにより…」
次に石堀の言った言葉は、この時二人にしかわからない意味を備えていた。ただわかるのは、その時の石堀は野心家の笑みだったことだけ。
「『俺自身』だからな」

「ふん、構わんぞ。我々の元にたどり着く前に死んだらそれまでのこと…」
「さて…お前にも働いてもらうとしよう」
石堀は背後を振り替えると、そこには黒い服になぜか角の生えた青髪の少女がいた。

一方、トリステインから遠く離れたとある国で…
その国の城の壁に刻まれた怪しげな魔法陣がいくつもあった。しかし、そのうちの一つがすうっ…と消滅してしまった。
「ばかな…サキュバスの封印が解けた!?」

それからしばらく経ってからのこと。ガッツ星人との戦闘からしばらく、怪獣や異星人の起こす事件は起こってない。
「ふう…」
サイトは今日もギーシュとの訓練に励んでいた。今は休憩中である。
「はあはあ…君はもうちょっと手加減してくれないか?ワルキューレを新しく作る余裕もなく狙われてるんじゃどうしようもないぞ」
ベンチで隣に座るサイトにギーシュは言った。
「お前がまだ甘いだけだろ。敵は待ってはくれないのが普通さ。弱音を吐くくらいなら精進しろ」
「厳しいな……」
「俺の師ならそう言う、って話だけど」
「君に師なんていたのかい?」
そんなこと初耳だぞ、とギーシュは目を丸くした。
「まあ、かなりの鬼コーチで有名なんだけど…ぶっちゃけルイズより怖いかも…」
「想像したくないことを聞いたよ…」
ルイズ以上の怖さを持つ人間など想像しただけでゾッとする。
とその時、デルフがいきなり鞘から飛び出し声を上げた。
「相棒、抜け!」
「え!?」
「はあああああああ!!」
突如、銀色の光がサイトの視界に映った途端、サイトはデルフを引き抜き、その光の正体である剣を止めた。
「ほう、なかなかやるな。気配は消したつもりだが」
「いきなり何すんだ!?君は何者だ?」
見たところ、サイトたちと同じ年齢の少女のようだが、変わった格好だった。地球で言えば和風で、しかも使っている剣は日本刀。かつ髪にはかんざしが着けてある。
まさかこの子…
「相棒、俺っちを下ろしな。どうもこの娘っ子、お前さんを試すつもりだったみてえだ」
「試す?」
首を傾げるサイトだがとりあえずデルフを鞘に納めた。少女も刀を鞘に納める。
「インテリジェンスソードとは珍しいものを持ってるな。まあそれはさておき、先ほどは失礼したな。私の名はクリスティナ・ヴァーサ・リクセル・オクセンシェルナだ」
「長っ…」
相変わらず名前が長い連中が多い、とサイトは思った。
「ではクリスと呼んでくれ。異国からこの学院に留学してきた」
「てことは、留学生?」
「そうだ。明日からこの学院で世話になるぞ。サイト」
「なんで俺の名前知ってんだ?それにその恰好…もしかして地球人!?」
自分やハルナにシュウヘイ、それにシエスタのひいじいさんであるキリヤマ隊長以外にもこの世界に来た地球人がいる。それはサイトにとって驚くべき事実。だが、クリスが次に言った言葉は全く違っていた。
「なにを期待させたのかわからないが、私は日本の者ではない」
「え?でもその恰好、どう見ても…」
かなり昔のファッションだが、まぎれもない日本人の恰好なのは間違いない。いや、それとも似てるだけか?
「ふ…その反応だと、アンリエッタの言うとおりお前はニホンから来た者のようだな」
「君は日本の人じゃないだろ?なんで日本を知ってるんだ?」
不思議がるサイトだが、クリスはそれを無視し、大喜びで彼の手を握って飛び跳ねた。
「やはりそうか!会えて嬉しいぞサムライのサイトよ!」
「え…あのー…」
聞いてなかったのか?ルイズといい、貴族って勝手に自分のペース作ってこっちが大変だ…心の中でサイトは愚痴った。
「あっすまない。何か言おうとしていたみたいだな」
「じゃあ、改めて訊くよ。君はどうして日本を知ってるんだ?それに、女王様とどんな関係なんだ?その話し方だと…結構親しいのか?」
「師匠だ。彼もまた日本から来たと言っていた。ただ、「こことは違う世界から来た」という意味が理解できなかったが…
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