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□夢魔が紡ぐ夜風の幻想曲・迷子の終止符と幾千の交響曲/File0
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皆さんは、時々夜道を通って家に戻る時、誰かが後ろから着いてくるなんて、思ったことはないだろうか?もしかしたら、それはストーカーかもしれないし、あなたの命や金品を狙う悪人かもしれない。
もうすぐハルケギニアで二つの月が重なる皆既月食が近い真っ暗な夜、白いワンピースの女性がカバンの中に水の入った水筒をしまい込んで帰宅していた。いつもと変わらないはずだった。背後に気配を感じるまでは。
誰かいるの?
彼女は夜の冷えた空気と恐怖心で身を震わせながらも急ぎ足で自宅へ向かう。
勇気を出して恐る恐る背を振り向いた。
だが、なにもなかった。思い過ごしだったようだと思った女性はひと安心し、渇いた喉を潤そうと水筒に手をつけた。
しかし、彼女の危機は去らなかった。
目の前に、化け物と言っても過言ではない亜人が彼女をじっと見ていたのだ。

一方、魅惑の妖精亭での仕事を終わらせたシュウヘイは、テファたちの待つ家に戻ろうとバイクのエンジンを起動させた。
その時だった。
「きゃああああああ!!」
どこからか女性の悲鳴が聞こえてきた。すぐバイクの腰掛に股がり、バイクを走らせるシュウヘイは現場へと向かった。
現場にたどり着いたところで見たのは、地面に横たわる白いワンピースの女性と、彼女を狙う謎の亜人。ビーストとも異なる感じがする。だが油断はできず、シュウヘイは亜人にブラストショットを向けた。
「ミディ…ア」
「なに?」
亜人の口から発せられた言葉で、手を緩めてしまったシュウヘイ。
その隙に亜人は風のように姿を消した。
「一体、誰のことを言ったんだ?」

翌日からそれからも、白い服を着た若い女性が謎の亜人によって被害を受ける事件が相次いだ。
王室も魔法衛士隊や銃士隊に街一帯の調査を命じたが、その亜人は一体どこに行ったのか検討もつかなかった。
サイトとルイズもアンリエッタに呼び出され、街の調査を開始したが、一時間、二時間と虚しく時が過ぎていった。
「どこにもいないじゃない。やっぱり貴族に恐れをなして逃げたのかしら?」
そうとも考えられるだろう。魔法衛士隊のメイジたちが調査を開始したころから亜人は姿を消している。タイミングがちょうど合っていたのだ。
「そうと決めるには早いと思うな」
もしかしたらその亜人が、地球を狙う侵略者であることも懸念される。サイトは可能性の一つとしてそれを心に留めていた。とにかく調査を続けないとなにも始まらない。サイトはそう思って一歩歩き出した。
その時だった。マントに身を包んだ怪しげな人間が彼とすれ違う形で歩き去った。
それに気づいたサイトは、ウルトラ戦士としての勘からなのか、それとも本能的かそのマントの人物を走って追った。
「ちょっとサイト!ご主人様置いてどこ行くのよ!」
喚きながら彼を追うルイズだが、サイトの耳に届くことはなかった。
しばらく追っていたが、予想以上にマントの人物はすばしっこく、噴水広場の角を横切ったところで見失ってしまった。
「相棒、あいつなにもんなのかねえ…」
「わからない。ただ普通じゃないと思う。人間の足であそこまで体力が尽きないまま速く走り続けられるはずがない」
しかし、サイトは噴水の腰掛けにあるものが置かれているのを見つける。
双眼鏡…なのか?それを手にとり覗き込んでみた。決して彼は住宅内部で着替える女性を、その双眼鏡で見ようとしてるわけではないのでご安心ください。
「これは…!」
驚くべき景色が、彼の視界に飛び込んだ。どこかの豪華な屋敷。その屋敷の池のほとりで日傘をさす、白いワンピースの女性。
真夜中目の前に映る怪物の手。
そして、星が真っ暗な闇の中、赤い輪郭で自らの丸さを示す姿。
「この双眼鏡は一体…?」

「水?」
シュウヘイはあの夜の翌日、魅惑の妖精亭で、被害にあった女性から話を聞いた。
「はい、あいつに襲われた時、私ちょうど喉が渇いてて水筒を手に持ってました。そしたらあいつが現れて、私びっくりして水をぶちまけたんです。そしたら、すごく怖がりだして…そこからは気絶してよく覚えてないんです」
「水…ミディア…」
水を恐れ、ただ「ミディア」と一言言った謎の亜人。シュウヘイはそれからもその事件について仕事が終わった頃に独自調査を行った。地球で人を守る職務に着いていたこともあって、別の世界でもその使命を全うする意思を持っていた。
そしてあることがわかった。
「ストライフ家の別荘屋敷のちょうど周りを正方形に囲う形で事件が起こってたのか?」
ビデオシーバーを通し、パルスブレイカーで連絡してきたシュウヘイの言葉にサイトは驚いた。
『ただ、しらみ潰しに調べるには広すぎるな…そっちはどうだ?何か知らないか?』
「実は、調査中に妙な双眼鏡を拾ったんだ」
サイトはその不思議な双眼鏡についてわかることをシュウヘイにくまなく話した。
『白いワンピースを着た女に屋敷…チビ、何か知らないか?』
「チビとは相変わらず失礼ね!ルイズ『様』と呼びなさいよ!それが人に尋ねる態度?」
『様』を妙に強調して怒鳴るルイズ。
『とにかく教えてくれ。そのストライフ家の話をな』
「ふん、特別に教えてあげるからありがたく思いなさいよ。ストライフ家は、百年前の皆既月食の時に起こった怪事件で突然滅んだ名家だったそうよ」
『突然の怪事件…』
それに現在起っている、白いワンピースの女性を狙う連続殺人事件。無関係とは思えない。
『引き続き調べる。何かわかったら教える』
「わかった」
そう言ってビデオシーバーを閉じるサイト。
最近現れた亜人は、あの双眼鏡に映る白いワンピースの女性となにらかの関係があったのだろうか?
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