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□File4
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さて、タバサたちがエギンハイム村で奮闘してる頃、ガリア上空で、赤いラインの入った三角形の飛行物体が空を駆け巡っていた。
「ここは…どこだ?確か俺、あの時空のねじれの中に飲み込まれて、父さんと再会してその先の光に進んだら…」
その青年はハルケギニアのどこにもない服装で、少し抜けたようだ
が根性だけは一級品な印象だった。
「ちょっと、降りてみるか」
その飛行物体、いや戦闘機を下ろした青年は地上に降り立ち、その一帯の調査に向かった。

「ったく、この程度のこともできないのか!愚図め!」
今日もタバサの従姉妹であり、ガリア王女のイザベラは苛立ちの極みだった。
自分の思い通りに少しでもいかなかったらすぐ部下に対して八つ当たり、殴る蹴るの暴行を加える。
彼女に従う者たちは少しでも逆らいたいところだが、相手は王女。もし逆らえばその権力で一生飯にもろくにありつけない生活を強いられる。
そんな貴族や王族以前に人としてのマナーや常識に欠けるに欠けた彼女は、今日はあることをしようと決心していた。
「宇宙の果ての我が下僕よ!我は念じる!我が導きに応えよ!」
使い魔召喚魔法『サモンサーヴァント』。
その美しいはずの顔は嫉妬心などの負の感情で歪みに歪んでいく。それでタバサのシルフィードより優れた使い魔を召喚しようと企んだ。
(あたしがあんな人形娘などに劣るはずないんだ!)
あんな竜よりも遥かに優れた使い魔を召喚できれば、父上だってあたしを認めざるを得ない。
父であるジョゼフは今、イザベラに対する愛情はまるでうかがえない。退屈しのぎに彼女にくれたものは『北花壇騎士隊長』の称号だけ。イザベラの心を満たすには至らなかった。
魔法の効果は発動したメイジの精神力によって作用される。憎しみや妬みは人に力を与え、本来魔法の才に乏しかったこのイザベラにもまた、強い魔力を与えた。
しばらくして展開された魔方陣の真ん中に、召喚のゲートは完成した。
「やった!さあ来い!」

竜?それともグリフォン?イザベラの召喚のゲートから何かが飛び出してきた。
だがその影の正体は、彼女が思ってるほど立派ではなかった。
「なんだここは?」
こいつは、人間?いや明らかに違う。
まるで細長い黒棒に目がついているような、不気味な亜人だった。
「あんた…誰だよ?」
「そういう貴様こそ誰だ?」
王女のプライドの強いイザベラはその亜人の口の聞き方に苛立ちを覚えた。こいつは貴族への口の聞き方を知らないのか?
「あたしはガリア王女のイザベラだ!」
「ガリア…あぁ、確かこの星は人間の作り出した格差社会が展開されてると聞いてたが…なるほど。確かに地球よりも文明が遅れてるな」
「あんた…なに訳のわからないことぶつぶつ言ってんだ。とにかくあんたはあたしの使い魔だ。このイザベラ様に絶対の忠誠を誓いな」
逆らったらこいつの家族も故郷もあたしの権力をもってめちゃめちゃにしてやる。嫌なら犬のように素直に従いな、とイザベラは思っていた。
もしかしたら、あの人間娘の竜などより優れているかもしれない。だが、その返答はあまりにも彼女の心を踏みにじった。
「貴様のような下等生物ごときがこの『ゼットン星人』に下僕になれと?生意気な小娘だ」
ピキビキ!
「衛兵!早く来やがれ!あたしの部屋に入り込んだ侵入者だ!殺してしまえ!」
見込み違いだった。こんな無礼極まりないやつに可能性を見出だそうとしたのが失敗だった。こんなやつ殺してさっさと新しい使い魔を召喚しよう。
衛兵たちは集まり、一斉に火や風の魔法で『変身怪人ゼットン星人』に攻撃を仕掛けた。だが、ゼットン星人はそれをなんとか避けていく。
「ちっ、ハエが偉そうに。だが仕方ないな」
彼が懐から取り出したもの、それはなんとグレイが持ってるものと同じバトルナイザーだった。
「行けナース!下等生物どもを皆殺しにしろ!」
【バトルナイザー、モンスロード!】
鈍い緑色に輝く光のカードがゼットン星人のバトルナイザーより飛び出し、黄金の円盤となってプチ・トロワの空に現れた。
『宇宙竜ナース』
円盤形態のナースからビームは放たれ、イザベラたちのいる宮殿に向けて放たれた。
「ひ、きゃああああ!!」
「たっ、退避!宮殿内の者を安全な場所に避難させろ!」
衛兵たちはイザベラの部屋を出て、宮殿内のメイドや使用人たちの避難に向かった。
ただ一人、イザベラを残して。
「ちょっとお前ら!あたしを置いていくな!」
助けを求めるイザベラだが、誰もその呼び声に応えようとしなかった。
偶然逃げ遅れていた使用人の男を見つけ、イザベラは頼み方を無視した口で怒鳴った。
「おい!あたしを背中におぶれ!」
他にも人がいたことに気がついた使用人は助けに向かおうとしたものの、その声の主がイザベラと知った瞬間「ちっ」と舌打ちして逃げ出した。
「この、ちくしょう…」
その使用人の他にも逃げ遅れていた者はいた。イザベラは何度も助けを乞うが、誰一人として助けようとしなかった。
「おい!あたしを助けろ!褒美はとらせる!平民の場合は貴族にとりたて…いやあああ!!」
宮殿はもはや瓦礫の山と化そうとしていた。天井から落ちる石は次々とイザベラの体を痛め付け、青と白の美しいドレスは所々血で赤く染まっていく。
そんな中、衛兵の一人が彼女の近くに姿を現した。おそらく他に逃げ遅れた人間を探しに来たのかもしれない。
「おい!あの人形娘を連れ戻せ!あの竜を退治させろ!早くしやがれ!」
その衛兵はそれを聞いた途端唖然とした。この衛兵はイザベラよりもタバサ、つまりシャルロット王女の方に忠義の心を持っていた。あの恐ろしい化け物に自分たちの真の主である王女をみすみす捧げるなど…
「さっさとしやがれ。でないと貴様の家族をあたしの権力で…」
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