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□File3
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タバサたちはもはや言葉を失っていた。なにせ、今彼女たちのいる船、スペースペンドラゴンは彼女たちの想像の範疇をはるかに上回っていたのだ。
「この船、精霊の力で動いてないのに、すごいわ…」
「こんな乗り物が存在していたとは…」
アイーシャら翼人たちも驚かざるを得ない。ヨシアとサムも、果てはキュルケも壁中を見て回って目を丸くしている。
「ペンドラゴンにようこそ。タバサ」
ヒュウガは以前のように笑顔でタバサたちに言った。
「タバサ、知り合いだったの!?」
「以前、別の任務で助けられた。敵じゃない」
まさかタバサがこれほど未知なる存在と知り合いになっていたとは予想だにしなかったキュルケ。それから彼らは自己紹介、なぜガクマと遭遇したのかなどの現状を互いに話し合った。
ZAPはグレイを襲った謎の男について何か知らないかタバサたちに尋ねたが、何もわからなかった。
拘束されているその男を見て、誰もが首を傾げた。こいつは誰だ?と。
「見たことない鎧ね。ロバ・アル・カリイエの人かしら?」
ロバ・アル・カリイエとは、トリステインやゲルマニアなどの国より遥か東方に存在する区域である。
メイジはいるようだがあまり内情を知らされておらず、危険としか情報のない。そこから来た男ではとキュルケは予想した。
一方、指令室でオキはコンピュータで近くに怪獣の反応がないか調べ、クマノはペンドラゴンを運転していた。
「……これは!」
何か反応がある。赤い点が一つ、いや…二つ!?
「ボボ、ボス!怪獣の反応が二つもキャッチされました!」
「なにい!」
ヒュウガは直ちに指令室に走り、コンピュータのモニターを見ると、確かに二つの反応である赤い点が互いに向き合うようにマークされている。
「バイオセンサーで調べたら、この反応の近くには人口密集地があります!それも二ヶ所です!」
「バカな…!」
タバサたちもその場に居合わせた。
「人口密集地…もしかして!」
ヨシアはクマノの隣の運転席の窓から外を覗き込むと、北西の方向から煙が上がっている。
「アイーシャ、来てくれ!」
アイーシャもヨシアに呼び出され外を眺めると、言葉を失った。あの煙の元は…
「僕たちの村に…」
「私たちの巣が!」
間違いなかった。自分たちの故郷が荒らされていたのだ。
「人間の方!早く船を出してください!」
そう言われたクマノは慌ててハンドルを握り、エギンハイム村の方角にペンドラゴンを飛ばした。
翼人たちの巣である大木たちと、エギンハイム村は怪獣の攻撃で荒れ放題となっていた。
地上にて、翼人たちは森の精霊との契約を争いに使うことを躊躇っていたが、このままでは何もできないまま死ぬこととなる。
「大地の精霊よ。我らに邪なる者どもから守る盾を!」
複数の翼人たちが力を合わせ、地面より大地の壁を作り出し、怪獣からの進撃を阻んだ。だが、怪獣はその壁に自らの身を叩きつけ、壁を破壊しようとする。
「族長!いくら精霊の力で壁を作っても長くは持ちません!」
「っ……全員女子供を優先して引き上げろ!」
翼人たちが女性や子供を連れ、自分たちの集落から離れた。もちろん、破壊され続けボロボロとなった故郷を見て嘆く者はいた。離れようとしない者も多数発生した。
「私たちの集落が……」
また、故郷を壊された怒りで怪獣に無謀にも立ち向かおうとする者も。
「くそぉっ!」
「止せ!このまま突っ込めばお前も石にされるか食われちまうぞ!」
石にされる……
実はこの時、翼人たちの集落を破壊していた怪獣は……
「ガアアアアア!!!!」
ペンドラゴンのハイパーオメガ砲で倒されたはずの、一本角のガクマだった。
ガクマの光線で次々と石にされる木々や逃げ遅れた翼人たち。
その悲惨な光景を、とある場所から楽しんでいた黒い帽子に黒マントの男がいた。
「さあ、我が力で『超獣』に生まれ変わったガクマの兄弟たちよ。その怒りを、力を、だみんを貪るだけの愚かな下等生物に見せつけるのだ!ウハハハハハハハハ!!!!」
一方でエギンハイム村の住人たちも村から避難していた。
「俺たちの村が!」
いくら対立種族と言えど、故郷を思う気持ちは翼人と同じ。その強い思いのあまり村から離れるのを拒否する者がいた。
「皆の者、村から離れるのじゃ!急げ!」
村は二本角のガクマによって石にされたり、踏み壊されていく。ヨシアとサムの父である村長は残った村人たちに必死で呼び掛け、村から避難する。
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