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□タバサとグレイの冒険/FIle2
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任務の内容は翼人と人間の争いの終結。場所はエギンハイム村。人口は二百人程度。
シルフィードに乗り、エギンハイム村にたどり着いたところで村の村長が出迎えた。
「よく来てくださいました貴族様。さあ、まずは私の家に御上がりください」
村長はタバサたちを家に案内した。
彼の家に招かれ、タバサはキュルケと一緒に椅子に座って村長に尋ねた。
「まずは状況を教えて」
「ええ、私どもはメイジを何度も雇っていたのですが次々とやられていきました。私どもも案内役を務めているのですが」
「翼人は先住魔法を使うの?」
「先住魔法ですって?」
先住魔法とはメイジたちが精神力を使って放つものとは違い、自然を味方につける特殊な力である。主にエルフなどの亜人が使用する特殊能力。
「ええ、実際に使ったところを見たものもおります」
「姿を見た人は?」
「いえ、おりません。逃げるだけで精一杯でしたので」
「どんな魔法を?」
「なんか、指先から光の弾を出すんです。それで今までのメイジた
ちは殺されました」
「先住魔法・・・実際に見ることになるなんてね」
親からそういった力を持つ連中は恐ろしいと教えられたこともあり、キュルケはわずかに恐怖した。だが友のためにここで下がるわけにはいかない。
「案内して」
「では私の息子たちに案内させます」
森の中、タバサたちは村長の息子のサム、ヨシアに着いて行った。兄のサムは巨体で弟のヨシアは細身だった。
サムとヨシアは武器を身に付けてない。タバサとキュルケは貴族のマントではなく粗末なポンチョを身に付けていた。杖も隠している。タバサは身の丈よりも長い杖なのでぼろ切れでぐるぐる巻きにしていた。
これは翼人たちに警戒されないようにするためだった。シルフィードも空中から飛びながら見張っている。
「このあたりのはずですが…」
そうサムが呟いたとき、タバサはあるものに目をやった。人形、にしては奇妙な形だ。わざわざ倒れてる形の人を模している。
「殺されたメイジかしら?錬金の魔法でも人を石に変えることは無理だと思うけど…」
その死体はそう呼称するより、石像と呼ぶべきだった。一体なんの魔法でこうなったのだろうか?
「ひでえ奴らだ。あの翼つきの化け物どもは人間を虫見たいに見ているからこんな殺し方ができるんだ。人をあんな化け物じみた力で石にするなんてよ!」
兄のその一言にヨシアは猛反論した。一見力強さのない彼の印象とは想像もつかない。
「兄さん!そんな言い方しなくても!彼らの住み処を襲ったのは僕たちじゃないか!!人と同じ言葉を話し、理解もできる!同じ森に住む仲間だ!!」
「あのなあヨシア!何であの化け物どもとお友達ごっこしなきゃいけねえんだ!!あんな鳥の化け物、俺に力があったら殺してやる!!」
「兄さん!」
「まさか、てめえまだあの鳥もどきと…」
その一言でさらに反発しようとしたヨシアは黙り込んだ。
「そこまでにしなさい。兄弟喧嘩してる場合じゃないでしょ?案内を続けて頂戴」
キュルケは二人の間に割り込んで止めた。はっと我に返るサムは慌ててキュルケに頭を下げた。
「す…すいやせん!!みっともないところを!!ほら、てめえも謝れ!!」
だがヨシアは謝らなかった。絶対に謝るもんか、と言ってるようなその態度にサムは苛立っていっそ殴ろうとしたがキュルケが再び止めた。
「何か訳ありみたいね。自分の意見が間違ってるとは思ってないみたいね」
「…」
「まっ、そこら辺の口だけ貴族よりはましね」
「え?」
「ほら、まだ翼人は見つかってないでしょ」
「案内、続けて」
サムとヨシアはキュルケの気さくな態度とタバサの何も気に留めてない様子に驚いた。今まで雇っていたメイジは皆威張っていた。こんな貴族は初である。
一行は引き続き森の中を進むと…驚くべき光景を目の当たりにした。
「これは、翼人の…」
そこにはなんとさっきのメイジと同じように石となった翼人が倒れ
ていた。翼にあたる部分もくっきりしている。
「どういうこと?翼人が同じやり方で…」
キュルケも驚きの声を上げる。
「まさか…第三者の干渉…?」
そう思うタバサだが、証拠が少なすぎる。決めつけるにはまだ早すぎだ。
すると、サムは空を指差して叫んだ。
「翼人だ!」
サムの指差した場所には翼が背中から生えた男が二人いた。間違いない。彼らが翼人なのだ。
「去れ人間ども。我々は争いを好まない。精霊の力を貴様らに使いたくない」
「直ちに去れ」
弓を引き、いつでも矢を放てる体勢で警告する翼人たち。人間ほど争いたがる種族ではないのがわかる。
「石になったあなたたちの同胞を見た。あれは?」
タバサの一言に翼人はピクッと眉をひそめた。
「こっちが聞きたいくらいだ。それより、我々は争いを好まないと言ったはずだ。今そこの人間は我々が貴様らを石化したように言ったが、あのような残忍な殺し方はしない。
早く立ち去れ。貴様らに構ってる暇などないのだ」
「貴族様!騙されてはいけません!早くやつらを!」
「あ、バカ!」
キュルケはサムの言葉を遮ろうとしたが、もう遅かった。サムの軽率な発言で翼人たちは彼らを敵と定めた。翼人たちにとって貴族は天敵の一種なのだ。
「人間の薄汚い貴族をまた雇ったか!」
「精霊よ、我らに奴らを蹴散らす力を…」
二人の翼人の弓矢に光が灯り、ヒョウッ!と放たれた。風のように早いそれはタバサたちに向かって飛んでいく。
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