GANTZ/ULTRASEVEN.AX(完結)

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あーたらーしいあっさがきたー、きーぼーおのあーさーが
「また…か」
「わかっただろ。きっとガンツは俺たちをスキャンして、すべてを
知ってる。だからもう逃げられない。どこにいても毎回呼ばれる」
小さく呟くジンに西は歪んだ笑みを浮かべた。
「毎回って、あんなことを何度も繰り返すのか?」
「そう」
加藤の言葉に西は頷く。
「うわああああん!おばあちゃああああん!!!!」
今回始めてみる顔、火がついたように泣き叫ぶ男の子と、その祖母と思われる白髪の老女がいる。
ガンツには、星人の顔写真が映された。

田中星人
特徴 ちわやか
好きなもの ラジカセ
口癖 ハーッハーッ

裕三くん?
(こいつは!)
ジンはそれを見て全身に電気が走ったような感覚を感じた。
玄野のアパートの前をちょうど通りすぎた時にすれ違ったロボット
みたいな男だ。
「こういうの、あと何回あるのかな…?」
岸本が不安で泣きそうに加藤を見る。
「わからない…だけど少しでも」
加藤はガンツの左右から飛び出したラックから自分と岸本のケース
をとった。
だが、玄野には…
「ない…!」
玄野のケースには何も入ってなかった。思い出した。ネギ星人の時
に着たまま帰ったせいで置いてきてしまったのだ。
「計ちゃん?」
「玄野さん、どうしたんです?」
「はは…忘れちまった…」
わざと開き直ったが、彼の目は不安と死の恐怖で満たされていた。
ジンは自分のスーツを玄野に手渡した。自分はスーツがなくてもな
んとかなりそうだから、スーツを持たない玄野に渡せばと思ったが、
そこに西が割って入った。
「無駄だって。他人のスーツはただの服だ。なんの役にもたたない
よ。じゃ、お先に」
西は頭から消え、どこかへ転送された。
「おばあちゃん!!おばあちゃん!!」
男の子の祖母にも転送の現象が起こり、さらに男の子は異様な光景に泣きわめいた。
「加藤、俺は…」
助かるのか?不安げに加藤を見た。
「計ちゃん、大丈夫だ。俺が計ちゃんを守る。俺のせいでこの部屋に来ちまったからな。
俺は自分の命より、計ちゃんの命を優先するよ」
ジンも玄野の肩に手を乗せた。
「僕もいます。大丈夫」
「…ありがとう…」
すると、玄野も転送され、他の面々もミッション現場に転送された。

行って下ちい
01.00.00

全員を送り出したガンツは、制限時間を刻み始めた。

転送先は広い駐車場だった。
有線なのか、歌謡曲らしい音楽が流れている。夜の駐車場には場違いににぎやかで朗らかな歌声だった。深夜に近いこんな時間帯に、しかも人気のない駐車場に、音楽がかかってること自体おかしなことだった。
この水路に近い二階建ての屋上には、かなりの数の車が停められていた。
その間を先ほどの男の子が泣き叫びながら走っていく。
「おばあちゃん!!おばあちゃああん!!」
その声をたよりに祖母(カヨ)を探した。
「亮ちゃーん!」
遠くからカヨの声は聞こえるものの、姿は一向に見当たらない。男の子、亮太を探しながらカヨも車の間を走っていた。
「亮ちゃん!」
亮太は通路の向こうに懐かしいカヨの姿を見つけ、泣きながら一目散に走り出した。不意に亮太は車の間から出てきた何かにぶつかっていた。そのすぐそばでガシャン!という音と共に、今まで聞こえた音楽が急に止まり、聞こえなくなった。落ちていたのは、ひび割れたラジカセだった。落ちた衝撃で壊れ、テープの再生が止まったらしい。亮太はぶつかった相手を完全に無視し、祖母の胸の中に飛び込んでいった。
「亮太ちゃん、大丈夫だからね。おばあちゃんいるから」
抱き締めながらカヨは亮太を励ますように言った。
だが、その二人に魔の手が忍び寄っていた。
照明のせいで顔や格好は見えなかったが、その人影が何か音を発していることに気がついた。
「イイイイイイイイーーーーー!!!!!!」
その人影は大口を開けてこちらを見下ろしていた。その口は光を発
し、同時に甲高い金属音が耳を塞ぎたくなるほど大きくなっていった。
その光に照らされた二人の映像はそこで途切れてしまった。

スーツを着用したジンが、その駐車場に転送されたのはその直後だった。
抱き合うようにして転がっている二つの影が血溜まりの中で横たわっている。
「く…」
悔しそうに顔を滲ませるジンは二人を直視できなかった。
「敵は一体どこに…」
田中星人の行方を追うためにジンは、西も以前にネギ星人を発見するときに使っていた「コントローラー」を取り出した。赤い点が一つ出ている。位置は駐車場近くの水路の橋の辺りだ。ジンはすぐ駐車場を出て橋の辺りに向かった。
「あれ、玄野さん?」
ジンは目を丸くしていた。玄野が人影の前でなにやら返答に困ったような顔をしている。いや、困っていたのだ。なぜかというと…
「裕三くん?」
「…………は?」
「裕三くん?」
「あ…いや…」
「裕三くん?」
玄野の前にいたのは田中星人だった。壊れたラジカセと、鶏の卵の
ような物体が一杯つまっている買い物袋を持っている。
三度目で田中星人の目が細くなっていた。どこか苛立っているよう
に見える。
「裕三じゃ…ないです」
小さい声でそう返答された田中星人は、さっきまでの「ちわやか」
な表情とは全く別の顔になっていた。
(う…怒ってる…)
どうも田中星人は玄野のノリの悪さに腹を立てたようだ。
「玄野さん!」
ジンの声に反応した玄野は彼の後ろに隠れた。
「怪我は?」
「あ、ああ…大丈夫だ」
「計ちゃん!」
そこに加藤や岸本も駆けつける。
いつの間にか田中星人の顔は元の爽やかフェイスに戻っていた。
だが、その表情は一瞬にして歪みだす。
後ろでグシャリと音がなった。そこには鳥の雛のような生き物が足で踏まれたように潰されていた。おそらく田中星人の買い物袋から生まれた雛なのだろう。
「イイイイイイイイイー!!ー!!!!」
「ぐぅ…」
凄まじい音に玄野たちは一斉に耳を塞ぐ。
潰されていた鳥の雛の方に田中星人は口から生身の人間なら全身をズタズタにするほどの衝撃波を発した。
「ちっ!」
田中星人の衝撃波を撃った場所には誰もいなかったはずだったが、突然西が現れた。透明になって田中星人を狙い撃ちにしようとしていたが、ついに見つかってしまったらしい。
田中星人は西に接近すると、西を水路の方へ蹴り飛ばした。
「ぐあ!」
バシャン!と落ちた西の上から田中星人はのし掛かる。
「不味い、あいつが!」
玄野は加藤たちを振り返り、水路の中を指差した。
下ではなんとか田中星人を振り切った西がXガンを構え、田中星人を撃とうとするが、田中星人はすばやい動きで回避し、西に衝撃波を連発する。
「く!」
西は必死にXガンで撃ったが、すべて空振りに終わってしまった。
すると、西の私服の下に着てあるスーツのリングから、ぬるりとした透明な液体が溢れ出るのが見えた。
「だ…誰か助けろ!スーツが死んだ!」
あの恐ろしい笑みばかりを浮かべていた西の声が恐怖で裏返っていた。
そんな西をよそに田中星人の腕が西に手を伸ばしていく。
「うわあああ!助けろおおぉ!」
西が必死に叫びながら逃げ回り始めた。西の絶叫を聞きながら、加藤の顔がみるみるこわばっていく。
「加藤…」
「加藤さん?」
「加藤…君?」
不安そうに三人は加藤の顔を見つめた。
田中星人はついに西を捕らえ、耳をつんざくほどの金属音と共に口に破滅の光を灯していく。
「わっわあああああああああああああああ!!!!!!」
「うおぉおおおお!」
その声と共に誰かが水路に飛び込んだ。加藤なのか?と玄野は最初そう思った。だが加藤ではなかった。
ジンが真っ先に水路に飛び込んだのだ。
(父さんはよく言っていた。たとえどんな卑怯者でも、力無き者の命だけは助けるべきだって!)
ジンはスーツで強化した拳で田中星人を殴り飛ばした。
加藤も見ていられなくなり、水路に飛び込んで西を確保し、水路から引き上げた。
ジンは田中星人にのし掛かって必死に殴りまくった。それでも田中星人は倒れず、必死にもがいた。
不意に田中星人の首が反転する。そして口の奥が再び光り始めた。
「くあ!」
ジンはかろうじて田中星人の首をひねってかわした。外れた衝撃波は水路にバシャアアアン!と凄まじい水しぶきを起こす。
ジンは田中星人の胴に腕を回し、全力で締め上げ始めた。ジンの動きに呼応し、スーツのリングが光を放つ。同時にスーツがボディービルダーのように波打ちながら膨らんでいく。
「はああああああ!!!!」
「ぎ…がが…!」
すると、田中星人の頭のヘルメットが割れ、まるでカラスのような
巨大な鳥が飛び出してきた。巨大な鳥はその場から逃げ出そうとしたが、突如現れたワイヤーに体をしばられ、身動きがとれなくなった。
そのワイヤーを発射したのはYガンを構えた玄野だった。
玄野は二つのうち下のトリガーを引くと、玄野たちが転送されたように、その巨大カラスは頭から消え、レーザーのようになって空に消えた。
「玄野君、今のは?」
岸本が尋ねた。
「西はネギ星人の時にこれを使って言ったんだ。『上に送った』って」
「上?」
上に送ったとはどういうことなのだろうか。だが西とてすべてわかってる訳ではない。だから曖昧な表現しかできなかったのかもしれない。
「大丈夫か?しっかりしろ」
一同は力尽きかけた西の元に集まった。加藤は西に呼び掛けるが、西の顔は眼球が潰れ、口から血が溢れている。
「ま…ママ…」
うわごとのように、血をゴホゴホ吐きながら西は喋りだした。
「90点…点数…あと……10点で自由に……なれたのに…」
西はなおもなにか言おうとしたが、泣き出しそうな声でひゅうっと息を吐き、そのまま脱力した。
西は死んだ。
(………)
西の死はある意味自業自得とも言えた。無理に助けに向かったら犬死にする可能性もあるとはいえ、何人もの人々を助けることができたにも関わらず大半を見殺しにしたのだ。
玄野と岸本は無言だった。だが、ジンと加藤は内心悔やんでいた。こんな嫌な奴でも助けるべきだったのに、結局彼を死なせてしまった。もう少し早く決心すれば、西の対応がどうであれ助けることができたはず。これでは多くの人を見殺しにした西となんら変わらない。
しばらくの沈黙を遮ったのは…
「イイイイイイイイイーーー!!!!!!」
田中星人の金属音だった。その衝撃波で加藤が飛ばされてしまう。
「ぐあ!」
「か、加藤!」
「なんで!?田中星人なら…」
たったいま倒したはずだ。
「いや、まだ別にいたんです!田中星人たちが!」
その田中星人は一体、いや全部で三体いた。三体の田中星人はジンたちを襲おうと襲いかかってきた。
「玄野さん下がって!ハアッ!」
ジンの唸りを上げた拳が一体の田中星人に炸裂、殴られた田中星人は近くの家の庭に突っ込んだ。
しかし、まだ他にも田中星人がいる。二体の田中星人が岸本を睨みながら彼女にに迫ってくる。
「いやっ…来ないで!」
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