ウルトラマンアグル 英雄の子と魔導師たち(完結)

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アースラに帰還後…。
ブリッジにて、少し目くじらを立てているクロノがなのはとユーノを見下ろしていた。
「勝手にジュエルシードを半分に…それに危険な場だったにもか関わらず無茶を…」
「ご、ごめんなさい…」
「そう突っかかるな。この子がいなければ手に入れたジュエルシードはひとつもなかったかもしれない」
1テンポ遅れてブリッジにやってきたソラがクロノを止めるように言った。
「ソラさん」
なのはがソラの方を向く。
「そういうあなたはどこに行ってたんです?」
クロノがソラに尋ねる。同じタイミングでなのはと共に向かった彼は一体どこで油を売っていたのだ?
「さっきの戦闘にいたリドリアスの元にな」
「あ、そう言えば…リドリアスさんはどうしたんですか!?」
詰め寄るようになのはがソラに尋ねると、彼は首を横に振った。
「ダメだった。カオスリドリアスから受けた首の傷の出血が激しくて、もう治療して逃げしてやろうと思っていたのだが…」
「「…」」
自分たちを守ってくれたあのリドリアスは助からなかったようだ。ソラの話彼すると、リドリアスは人間に友好的で優しい怪獣のはずなのに、どうしてその優しい怪獣が死ななければならないのか。やるせない気持ちでいっぱいになった。
重い空気を何とかしようと、リンディが話を進めた。
「…しんみりしたいところかもしれないけど、話を進めてよろしいかしら?今回の事件の大元に着いて掴んだことがあるの」
「エイミィ、出して」
「はい」
クロノに言われ、エイミィはモニターに一人の女性の姿を映し出した。映し出されたのは、フェイトの母プレシアだった。それを見てソラの顔が険しくなった。
「プレシア・テスタロッサ…僕らと同じ『ミッドチルダ』の出身の魔導士。元は次元飛行エネルギーの開発者だったんだが、ある違法研究の事故で放逐された人物」
「テスタロッサって…」
聞き覚えのある単語…だとしたら…。
「フェイトちゃんのお母さん…?」
「…」
ソラはモニターに映るプレシアを睨んでいた。
(彼女は、一体誰とつながってるんだ?この世界に怪獣等一匹も出てこないはずだった。プレシアは知っているような口ぶりだった。『奴』以外に、誰が…?)

時の庭園の拷問部屋…。
ムチの音が響き、フェイトはまた傷だらけの状態で倒れていた。プレシアは母とは思えぬ冷ややかな眼差しで彼女をも見下ろしていた。
「前よりも数が更に減ってる。あなたそんなに…母さんを悲しませたいの?」
「ごめんなさい、母さん…」
かすれた声で母に謝るフェイト。プレシアはそんな彼女から背を向けて歩き出した。
「最後のチャンスよ。あの白い魔導士…あの子から残りのジュエルシードすべて奪ってきなさい」
「…待って」
床に這い蹲り、痛む体を起こしてフェイトはプレシアを引き止めた。
「何?母さんに不満でもあるのかしら?」
「…『アリシア』って、誰なんですか?」
そう尋ねられたプレシアの足取りが、止まった。
「私は…本当に母さんの娘なんですか?」
プレシアはフェイトの元へ折り返し、身をかがめて彼女の顎を軽く掴んだ。
「あなたが知る必要なんかないわ。あなたはただ、母さんの言うことを聞けばいいの。母さんの望みを叶えるために。
あなたならできると信じてるわ。私の可愛いフェイト」
うまくはぐらかし、プレシアは『信じている』という言葉とは正反対に冷たい口調でフェイトに言い残し、歩き去っていった。
廊下に出ると、プレシアはフェイトが尋ねた、あのアリシアが待っていた。
「ダメじゃないアリシア。あの『人形』に余計なちょっかいをだしたら」
「ごめんね。でも、なんだかムカつくもの。私と同じ顔なのに、母さんの望み通りに動けない出来損ない」
とてもフェイトと同じ顔には思えない冷たい笑みを浮かべるアリシア。
「しばらくの辛抱よ。私たちの手を煩わせずに済むには、あの人形が必要なのよ」
「わかってる。私たちの望みを叶えるためには、あの人形が集めるジュエルシード、それで開かれるあの場所が…『アルザハード』が必要だってことも」
「お願いねアリシア。あなたも悟られないよう『あの連中』を使って…」
「うん、邪魔物であるあいつを始末することね」

アースラのソラの自室。
「うん…」
机に積み上がった器具と、リドリアスにつけていた機械を睨むソラ。
「まだ不足しているな。怪獣にうまく人の言葉を付ける翻訳機能にもう少し…」
彼はそこで言葉を切らした。確かにリドリアスの目を覚まさせることはできた。だが、最後に助けられず死なせてしまっては意味がない。自分の非力さを呪った。
(せっかくウルトラマンになれたのに、なんてザマだ…)
自分の右手に装備されたアグレイターを見て、さらに顔が歪み出した。
「失ってばかりだ…あのときからいつも…」
机を拳で叩き、今にも小動物をにらみ殺してしまいそうな顔つきになっていた。
「ソラさん、入ります…」
ここでなのはとユーノが彼を訪ねて入ってきた。
「…!」
彼女たちの来訪と自分の顔が酷くなっていることに気がついて平常心を取り戻したソラは、なのはたちの方に向き直った。
「…どうしたんだ?」
「聞きたいことがあって…お邪魔でしたか?」
申し訳なさそうにうつむくなのは。
「いいさ、ちょうど休憩するつもりだった。座るといい」
彼の部屋は中央にテーブルが置いていて、机の上には器具や部品の山が積み上がっていること以外は片付いていた。入口で靴を脱いで上がったなのはとユーノは中央のテーブルの傍らに座った。
「あの、何をしていたんですか?なんか机の上…」
ユーノが気になる様子でソラの机の上の山を見る。
「ああ、少し散らかってしまったな。先日リドリアスに使った機械に改良を加えてみたんだ」
「改良…?どんな改良を施そうとしていたんですか?」
興味深そうに机の上に積み上がった機械やコードを見るユーノ。
(男の子って、こういうのが好きなのかな…?)
そう思いながらもなのはも機械の山を見る。こんな怪獣よりも小さな機械が巨大なリドリアスに効果を及ぼしたとはとても信じがたく感じていた。
「そうだな。例えば…脳細胞の破壊」
「「………え?」」
今なんと仰ったんですかこの人は?
「怪獣の頭にセットし、怪音波を脳に与えてじわじわと嬲り殺す。ちなみに対人用…つまり人間でさえも効くように作っている。さらには洗脳効果も与え、セットした敵をこちら側につけて厄介な敵を闇討ちできるように…ふふふふふふ」
いつの間にかソラの顔にかけられていたメガネが怪しく光り、なのはとユーノは段々顔を青くしていった。
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