ウルトラマンアグル 英雄の子と魔導師たち(完結)

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「私、どうしたらいいのかな…?」
公園のベンチに座り込み、これからどうするか悩んでいたなのはとユーノ。二人が座るベンチの傍らにはソラが立っていた。
ジュエルシードのこと、フェイトのこと、怪獣…。それらは時空管理局が全権をもつそうだ。つまり、自分たちが無理に首を突っ込む必要等ないということだ。
だが、それで本当にいいのだろうか。
以前学校でアリサたちと将来どうするか話した時、親の経営する翠屋を継ぐことも悪くないとは思っていたが、自分のやりたいことは別にあることをなんとなくながらも気づいていた。困った人を助ける、それはなのはが心のどこかで願っていたことでもあった。
「なのは…」
「ユーノ君はどうするの?」
「僕は、管理局に協力するつもりだよ。ジュエルシードがこの世界で引き起こしたことは僕が原因だ。今度こそ責任もって、僕がなんとかしておきたいんだ」
ジュエルシードは、元はユーノが発掘し、誤ってこの世界に落としたもの。知らないフリ等できない。
「でも、家族は…?」
家族が心配しているのではと思ったなのは。するとユーノは首を横に振った。
「実は、僕には物心ついた時にはもう親はいなかった。一族のみんなが僕を育ててくれたから、彼らが僕の家族かな。でも心配ないよ。若干放任主義なんだ」
「そうなの…じゃあ、ソラさんは?ソラさんはお父さんとお母さんいらっしゃるんじゃ…」
「…」
親のことを指摘され、ソラは顔を一瞬曇らせた。
「あ、あの…」
「俺はまだ親のすねをかじる君とは違って自分の足で歩かないといけない。もう俺は子供でいることなどできはしない。
それに俺は好きで君たちと一緒にいるんだ。気にすることはない。
それはそうと、君はどうなんだ?もし管理局と行くことになるのなら、親御さんになにか言わなければならないだろう?」
「……」
「不安かな?」
「はい…」
それはそうだろう、とソラは思った。管理局につけば、きっと彼女が思っている以上に危険が降りかかること間違いなしだ。もしかしたら死ぬことだってあるかもしれない。
「ソラさんがもし、私の立場だったらどうします?」
ソラに尋ねてみるが、返ってきた答えは逆になのはを困惑させるものであった。
「そんなこと俺に聞いてどうするんだ?もし俺が『俺だったら管理局に参加する』と言えば君はそうしてくれるのか?」
「……」
確かに、ソラの言っていることは間違いではない。彼が選んだ道に行ったところで、それは自分が選んだわけではない。流されて決めた、意志のない選択だ。
「以前にも言ったが、どうするのか選ぶのはほかでもない君自身だ。俺に聞いたとことで、君自身が望む答えなど得られない。俺は高町なのはじゃないんだ。答えは、君の中にしかない」
「…」
「本当はわかるんじゃないか?俺にはもう、君がどうしたいのか分かる気がするんだが」
「なのは…別に無理しなくてもいいんだ。本当は僕が自分で…」
ユーノは無理をして、なのはが協力する道を行くことが辛かった。彼女はお人好しだから自分のために魔導士になってくれた。それが正しかったと言うには、考えなければならないことがある。
だが、なのははユーノの口を人差し指で押さえた。
「それ以上言ったら怒っちゃうよ」
「…」
「私、決めた。管理局に参加する。最初はお手伝いでユーノ君を助けるつもりだったけど、今は私の意思でジュエルシードを集めて、フェイトちゃんを助けたいんだ」
彼女の決意に満ちた表情を見て、ソラは静かに笑った。
「なら、さっさと親に行って来い。しばらく家を空けることになるんだからな」
「はい!」
ソラに激励され、張り切るなのははユーノを肩に乗せ、本来の運動音痴っぷりを思わせないほどの足取りで家族が待つ家へ駆け出していった。
「…本当なら、俺が尋ねたいさ。『君ならどうしたんだ』ってな…」
『マスター…』
なのはを見送るソラは、一人ぽつりと呟き、アグレイターは思いつめたように主人の顔を鏡のようにその青いクリスタルに映し出してた。
「父上、母上…俺はあなたたちのようになれるのだろうか…」

「というわけで、しばらく家に帰って来れなくなりました…」
家に戻り、なのはは出迎えてきてくれた母、桃子にユーノの正体や魔法のこと等を上手く隠し、数刻家に帰れなくなることを告白した。
「心配かけることになると思うけど…」
「それはもう…」
母なのだから、まだ9歳の娘が数日も家にいなくなることを心配するのは当然だ。
「いつだって心配よ。けどね…」
両手でなのはの頬に触れ、柔らかく微笑んだ。
「あなたが自分で決めて、本当にしたいことなら…お母さんは止めない」
「お母さん…」
「行ってらっしゃい。そしてちゃんと帰ってくるのよ?」
「うん!」

翌日、アースラ…。
新顔の紹介ということで、ソラ・なのは・ユーノ(人間形態)は会議室にて集められた。目の前に何人もの管理局員の並ぶ光景に、電光掲示板の前の椅子に座っていたなのはとユーノは緊張して固まってしまっている。
「では本日をもって、本館の任務『ジュエルシード回収』にて特例として、問題のロストロギアの発見者であり、結界魔導士でもある…」
リンディがユーノを見、対するユーノは椅子から立ち上がって自己紹介した。
「ユーノ・スクライアです!」
「それから彼の協力者でもある現地の魔導士さん」
続いてなのはも立ち上がって自己紹介した。
「た、高町なのはです!」
「そして、怪獣分析のアナライザーとして最後の…」
最後にソラに視線を向けるリンディ。
「ソラ・クロサキと言います。以後お見知りおきを」
さすがに、一番年上でこういった場に慣れているのか、緊張感も見せることなくソラは自己紹介した。
「臨時局員として、彼らも事態にあたってくれます」
「よろしくお願いします!」
こうしてソラ・なのは・ユーノの三人は管理局に属することとなった。

それから10日過ぎた。フェイトもジュエルシードも見つかっていない。たまにジュエルシードの反応が見つかることもあったが、現場に駆けつけた時には垂に何者かによって回収されたあとというケースも多発した。
その間、ソラはどういうわけかアースラ内に用意された部屋に閉じこもっていた。気になったなのはが彼の部屋の前に行くと、何やら怪しい金属音が聞こえてきた。邪魔しては悪いか…と想い、知らないフリをしたとか。

「ダメ…ですか」
フェイトが見つかっていないか、アースラのブリッジでオペレーターをしている女性、エイミィに尋ねるなのはだが、エイミィは両手を広げて頷いた。
「ええ、そのフェイトって子にとって私たち管理局は天敵だから仕方ないよ」
現在なのはやソラ、そして管理局が回収したジュエルシードは8個、フェイトたちはプレシアに渡したものも含めて5つ、まだ未発見のジュエルシードは8つ。
地上はあらかた調査されて、残った場所は海やその付近の海岸になった。
「フェイトちゃん…」
「…」
なのはがフェイトのことで気になっている中、ソラはもう一つ気がかりにしていることがあった。
以前からソラに接近していたあのマントの男のことだ。
(奇妙だ。以前は毎度のことのように出てきたわりに…)
何か裏で企んでいるのか?どう思っていた矢先だった。
アースラの艦内に緊急事態の警報が鳴り響いた。
「エイミィ、何が起こっているのかモニターに出して!」
「はい!」
リンディの命令でエイミィはデスクのキーボードのキーを叩き、電子モニターに表示した。映像に移された場所は海岸。その上を一羽の巨大な怪鳥が飛び回っていた。
「怪獣…」
クロノがモニターに映る怪鳥を睨む。そんな彼を諌めるようにソラが口を開いた。
「そう目くじらを立てるな」
「何を悠長に…怪獣が現れたんだぞ!」
「『友好怪鳥リドリアス』。珍しく人間には害をなさないタイプの怪獣だ。性格はとても穏やかで人懐っこい。気をつければ大きな迷惑を起こすことなんかないさ」
「そうなんだ…なんかかわいいかも」
人に仇なすことなく、寧ろ仲良くすることを好む怪獣にどこか惹かれたなのは。こうしてモニターで見ると大きいだけの可愛い鳥のように見えていたようだ。
だが、目くじらを立てるなと言っていたソラの目が、だんだん細くなっていた。
「…?」
リドリアスが、なにか苦しんでいるようにも見える。飛び方がかなり奇妙だ。まるで空の上で何かの毒に犯されてしまったかのように、宙で体をくねらせている。
「艦長、怪獣の体内に二個のジュエルシードの反応があります!」
「あの怪獣、誤って飲み込んでしまっていたというの?」
エイミィの報告を聞き、リンディは顎に手を当てる。
「これじゃ平和的にいかないか…リンディ提督、直接私を現場に転送していただけますか?」
ソラが出動許可を求めた。それに続いてなのはも挙手する。
「私も行かせてください!」
「…わかりました。出動を許可します」
「僕が現場まで送ります」
ユーノの足元に魔法陣が展開され、ソラとなのはは彼と共にリドリアスのいる場所へ転送された。

「キェエエエエ!!!!!」
リドリアスの暴れ様はさらにひどくなっていた。頭の中にまでジュエルシードの力という名の毒が回り始めているのかもしれない。しかも苦しさのあまり猛スピードで激しく飛び回りながら海の方へ口から光弾を連発している。
「リドリアスさん、苦しそう…」
苦しんでいるリドリアスを、なのははつらそうな目で見た。
「まずいことになったな。あの状態で街に来たら被害は大きいぞ」
「ソラさん!早くウルトラマンに変身…」
ユーノがソラに変身を促すがソラは首を横に振った。
「いや、今回はその必要がないかもしれない」
「「え!?」」
どういうことだ。こんな時に変身しないなんて、彼は一体何を考えているのだ。と、彼はどこからか、マイク付きのスカウターと手持ちサイズの携帯機械、そしてもう一つ重火器に似た形の鉄器具を取り出した。危惧の中に、弾丸のような形をした機械がある。
「いくらリドリアスでも、あの異常状態の怪獣にまともな言葉は通じない。かと言って、いつも力技で解決するのは好ましくない。なのはは砲撃魔法でユーノが展開する結界にやつを誘い込め。つまりユーノ、君が次にすることは分かっているな?」
「は、はい!」
すぐユーノは辺りに結界を展開する。なのはは中へ飛び上がって先回りし、ユーノが展開する結界からだいぶ離れている場所と飛び回っていたリドリアスに魔力の礫を、わざと避けられる様に撃った。
「怖かったらごめんね…アクセルシューター!」
危険を感じたリドリアスは反転してなのはの魔力弾を回避し、ユーノのいる結界の中へと飛び込んでいった。
すると、ソラは肩にさっきの重火器型の機械を肩に担ぎ出す。スカウターのレンズでリドリアスをしっかり狙い、引き金を引いた。弾丸はリドリアスの耳辺りに突き刺さると、パカッと花が開いたような形に変形した。
一体あんな機械をリドリアスに刺してどうする気なのだろうか?ユーノと、戻ってきたなのははただ見つめていた。すると、手に携帯機械を持ち、それのアンテナを伸ばした彼はカチッとスイッチを押した瞬間、意味不明な言葉を口にし出した。
「オープンワンアセンブラ。スタート・トゥ・コマンド、214200C5X…エンタ」
「「?????」」
無論こんな封じと文字の羅列のような言葉をこの二人が理解できるはずもない。
が、その意味不明な言葉が彼の口から発せられた瞬間、リドリアスの様子に変化が見られた。
さっきまで荒れ狂うように飛んでいたというのに、動きが段々大人しくなっていった。
「コマンド3429FRオブジェクト00、エンタ。リドリアス、落ち着け。しっかり意識を持っておくんだ」
リドリアスに刺さった機械がカラータイマーのように赤いランプを点滅させると、リドリアスの飛行速度が至って普通の航空機程度のものにまで減速した。
「すごい…」
まさか、怪獣に言葉を送っておとなしくさせるとは…。空いた口がふさがらない。
「感心するのはあとだ。なのは、今のうちに封印魔法だ」
「あ、は、はい!」
凄い光景のあまりぼーっとしていたなのははすぐレイジングハートをシーリングフォームに変形させ、コアをリドリアスの方に向ける。あとはリドリアスが止めるだけだ。
「15895GQ、エンタ。そのままじっとしているんだ。今からお前の中の異物を取り除く」
リドリアスに止まるよう命令を出すと、リドリアスはソラに言われた通り地上に降りた。
「ジュエルシード、封…」
なのはが封印魔法の桜色の光線を放とうとしたその時だった。
「ギィイイイイイイイイィイィィィ!!!」
突然リドリアスの体を、怪しげな光が包み込み、苦しみ出したリドリアスから離れていった。その怪しい光は、リドリアスと瓜二つながらも、邪悪さとい凶悪さを兼ね揃えた怪獣
『カオスリドリアス』の姿となる。カオスリドリアスは誕生した直後、己の心を支配する破壊衝動のまま街に向けて光弾を放ち出した。
「リドリアスさんが、もう一羽!!?」
「ジュエルシードの力で、『カオスヘッダー』無しでカオス化した奴が生まれたというのか…」
と、その時だった。三人にクロノからの念話通信が入った。
『大変だ!例のフェイト・テスタロッサが海に沈んでいたジュエルシードを強制発動させた!』
「「!?」」
なのはとユーノは驚愕のあまり目を見開いた。なぜフェイトがそんなことを?
『おそらく海に沈んだ6つのジュエルシードの位置を特定するためにわざと発動させたんだ。下手をすれば、結界でも防げないほどの被害が出るかもしれない!』
「6つ!?」

「な、なんてことしてるのあの子たちは!!」
一方、アースラのモニターでフェイトを見たエイミィは、彼女の行動に驚愕した。
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