ウルトラマンアグル 英雄の子と魔導師たち(完結)

□#8
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「…!」
時空管理局。いくつもの次元の世界を管理し、取り締まる組織。悪くないタイミングだろうが、少し面倒なことにもなる予感だ。
(あいつが『クロノ』か。本当に黒いな…ってそんなこと言ってる場合はないか)
アグルは自身の両腕をクロスし、青く発光し小さくなって、森の木々の下で元のソラの姿に戻っていった。
アルフはクロノが言った『時空管理局』という言葉に反応する。
(ついに管理局まで…くそ!)
彼女は空に上がり、橙色の魔力球をクロノに向かって放つ。
「まずは武装の解除を……っ!」
なのはとフェイトに話しかけているクロノはその魔力弾に気付き、咄嗟に青い円形のバリアを展開する。硝煙が舞い上がった隙に、フェイトは飛び上がってジュエルシードに手を伸ばした。が、硝煙の中から数本の青い刃が放たれ、フェイトの手を掠めた。
「あっ……!」
「フェイト!」
狼形態のアルフは、かろうじて落下してくるフェイトをその背中に受け止めた。
クロノは追い討ちをかけ様とデバイスを向けるが、フェイト達とクロノの間になのはが割って入る。
「やめて!撃たないで!」
必死に訴えるなのはを見て、少し動揺しながらもクロノはデバイスを下げる。すでにアルフはフェイトを抱えて去っていってしまった。ユーノもなのはの肩に乗り、クロノは目の前に出現したモニターに向かって話す。
『クロノ、お疲れ様』
「すみません艦長。もう一人の方は逃がしてしまいました……」
クロノは、『艦長』と呼んだエメラルドグリーンの髪の女性に頭を下げた。だが、モニターに映る女性は全く不機嫌そうな顔をせず笑顔で手をヒラヒラと振っている。まるで授業参観で息子を見守りに来た母親のようだ。
『う〜ん…まぁ良いわ。ロストロギアの暴走が防がれただけでもよしとしましょう。それより、ちょっとお話を聞きたいから、そこの三人の子達をアースラまで案内してあげてくれる?』
「三人?」
見たところ、二人だけのようにしか見えないが…。辺りを見渡すクロノと共に、なのはは地上に視線を向けた、気づけば、ウルトラマンの姿がもう居なくなっている。フェイトと戦っている間にどこかへ行ってしまったのか?
もしここにいるなら彼と話をしたい。
すると、公園の森の中から人影が見えた。それも金髪の青年、紛れもなくソラだ。
「ねえ!待って!」
なのはがすぐに彼の元に降りて彼を引き止める。
「三人って…彼のことなのか?」
クロノは地上に降りたなのはの向かう先にいる青年を見て呟いた。
「あ、あの…」
少し緊張気味のなのは。
「その…また助けてくれて…」
礼を言おうとしたのだが、ソラが人差し指で口を閉ざす仕草を見せた。
「俺に感謝してるなら、喋ったらダメだ」
「で、でも…」
「あの、すまないが…」
話が進まない状況にしびれを切らしたのか、クロノがソラとなのはの元に降りて来た。そんな彼に、少し呆れた様子でソラは顔を覆った。
「真面目なのはいいが、空気を少し読んで欲しいな。まだ話の途中だったんだが」
「…!!」
クロノはソラの一言で言葉を失った。
「に、にゃはは…」
『は、はは…』
なのはとユーノはつい苦笑いしてしまった。
その後クロノが転送してきた場所の真下に案内され、なのは・ユーノ・ソラの三人は『次元航行船アースラ』の中へと転送された。

クロノを先頭にソラ、なのは、ユーノがアースラ内を歩いている。
アースラの内部は、まるでロボットアニメに登場する宇宙戦艦のようで、とても地球の技術とは言い難い構造を成していた。そんな道の環境になのはは戸惑いを隠せない。
(ユーノ君、時空管理局って?)
念話で素朴な疑問をユーノに尋ねてみる。
(…僕が住む『ミッドチルダ』が中心になって作られた…次元世界間に干渉するような出来事や、魔法のリスクを管理する組織さ)
(な、なんかよくわかんない…)
まだ9歳のなのはには難しい話だった。ほかの次元世界の話なんて理解するには何年かかかりそうだ。どう説明しようか迷うユーノ。そんな彼に助け舟を出すようにソラが念話で話しかけてきた。
(簡単に言えば、一種の警察みたいなものだ)
(おまわりさん…?なんか、イメージ沸かないなぁ…)
それはそうだ。地球の、それも日本の警察と比べたら明らかに決定的な違いが多発しそうだ。ともあれ、事件を解決するという点は同じだろうから、なのははそこで納得する。
(警察か…俺の父の親友がそうだったと聞いているが…)
ソラはアグレイターのクリスタルをじっと見つめた。
「あぁ、君。いつまでもその格好じゃ窮屈だろう? バリアジャケットは解除して良いよ」
「ふぇっ!?あ、はい……」
なのはは突然の事に驚きつつも、レイジングハートを元の赤い宝玉に戻し、自身もバリアジャケットから学校の制服に変わる。
続けてクロノは、ユーノに視線を向ける。
「君も、元の姿に戻っても良いんじゃないか?」
『あぁ、そうですね。ずっとこの姿で居たから、忘れてました……』
「「?」」
きょとんとするなのはと他所に、ユーノの体が眩く発光した。
するとどうだろう。ユーノの体が大きくなり、人間の少年サイズに変化し、二足歩行で立ち上がったではないか。ゆっくり身を起こし、ユーノはなのは達の方を向く。
「なのはにこの姿を見せるのは、久しぶりになるのかな……?って、あれ…なのは?」
ユーノはなのはの様子がおかしいことに気がつく。目が点になって、ただ震える人差し指をユーノに向けている。
そしてやっと発した声が…。
「ふええええええええええええええええええ!!!!?」
驚愕のあまりの叫び声
「…なのは、最初に出会った時ってこの姿じゃ…」
「ううん!最初からフェレットだったよ!」
そう言われて記憶の糸をたどるユーノ。彼女と出会った時から今までのことを思い返す。
ポク、ポク、ポク…
チーン!
「あ!そうだった!この姿は初めてだったね」
「だよね!びっくりした…」
「そうか…はは」
急にソラが薄く笑い出し、なのはとユーノは不思議そうにソラを見る。
「通りで、温泉地に来ていた時女湯の方から逃げ出してきたわけだ」
それを言われなのはとユーノの顔が凄まじく真っ赤になった。なのはは知らなかったとはいえ清らかな乙女の素肌を同年代の男の子に見せてしまっていた。ユーノはきっとそれを見ないよう必死に耐えていたに違いない。これ以上行ったらユーノがかわいそうなのでどうか淫獣とか言わないであげて。
すると、クロノがわざとらしく咳払いをした。
「そろそろ良いか? 艦長を待たせているしな……」

「失礼します。艦長、連れてきました」
なのは達はその部屋を見た。その部屋は一面、和で統一された空間が広がっていた。ししおどしまで設置されている。重要な次元航行船にこうも持ち込んでいいものか疑問だ。
畳の上で、クロノの母にして艦長である女性リンディ・ハラオウンが正座して待っていた。
しかもどうだろう。なんとリンディは自分ようの緑茶の入った湯呑に角砂糖を入れ、スプーンでかき混ぜているではないか。
(緑茶に砂糖…?)
(和の使い方を明らかに間違えている…)
なのはとソラは正直、彼女の風変わり(?)な味覚というか和の見方というか、それらを疑った。つまりドン引きだ。
「どうぞ。3人共座って、楽にしてくださいね」
「し、失礼します…」
靴を脱いで三人は畳の上に上がる。
「まず、お名前から聞きましょうか。まずは、女の子からいいかしら?」
リンディはなのはの方を向いて自己紹介を願い出た。名指しされ、なのはまさっきのリンディの珍な光景で解けていた緊張感がまた出てしまうが、しっかりと正座してリンディに自己紹介した。
「た、高町なのはです!」
「なのはさん、ね。じゃあ次は君」
「ユーノ・スクライアと言います」
「じゃあ最後に、そこのお兄さん」
「ソラ・クロサキです」
「え?」
なのはが突然驚いたような声を上げた。首をかしげながらソラはなのはを見る。
「どうかしたのか?」
「あ、いえ…その…ソラ、さんて日本人だったんですか?」
「金髪に青い目だったから、こんな日本人くさい名前だとは思わなかったってところか?」
「あ、はい…」
「父親が日本人で、母が異国の人だったからな。ま、それだけだよ」
「もういいかな?そろそろ話を次に進めたいんだが…」
今はプライベート話をしている時ではないので、クロノが話を次に進めようと一言ソラたちに言う。
「では、どういう理由であなたたちはロストロギアに触れたのかしら?」
「それは僕からお話します」
それからユーノが説明した。
(済まないがユーノ)
念話で急にソラがユーノに語りかけてきた。
(どうしたんです?)
(君は俺の正体を知っているな?)
正体、そう言われて浮かぶのは、彼があの青い巨人…ウルトラマンだということ。ユーノはほぼ常になのはのそばで見ていたため、ソラが何者なのかはっきりと頭に刻んでいた。
(彼らには教えないでくれ、うまく隠すように)
(え?どうしてです?)
(自分でも思うが、あの力は人から見れば危険なものだ。下手に時空管理局のような技術力に長ける連中に知られてみろ。力の秘密を知ろうと俺を狙う愚か者が出かねない。俺は追われる身になるのはごめんだからな)
ソラは自分の力を重宝してもいるが、同時に危険視していた。管理局に力にこだわる強欲な輩がいるかもしれない以上、クロノやリンディを通してその秘密を知られないようにユーノに進言したのだ。
(わかりました)
自分がとある世界でジュエルシードを発見したところからユーノはクロノとリンディに説明した。うまくユーノがソラの正体がウルトラマンであることを隠しなのはとの出会い、怪獣とウルトラマンの出現、フェイトとの交戦のことを話した。
「それじゃあ、あのロストロギア『ジュエルシード』を発掘したのはあなただったのね」
「ええ、でも運んでいた次元船の事故でこの世界に落としてしまったんです。それで僕が責任をもって回収しようと…」
「まだ幼いのに、立派ね」
リンディはユーノの強い意思を褒めたが、クロノは逆だった。見立てを変えると危険極まりないことなのだから黙っていられなかったようだ。
「無謀だろう!それを承知で君は回収していたのか?」
「あの、ロストロギアってなんですか?」
なのはが手を挙げて質問する。
「なのはさんは、つい最近魔導士になったばかりだから知らなくてもしかないわね。ロストロギアというのは…」
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