ウルトラマンゼロ サーヴァント(完結)

□File7
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翌日、朝日が顔に差し込み、サイトは目を覚ました。
「ふわぁ〜…」
ギーシュは隣のベッドでいびきを上げて寝ている。
「寝ると品がないなこいつ…」
すると、扉から誰かがノックしてきた。サイトが扉を開けると、そこにワルドが立っていた。
「おはよう使い魔君」
「なんすか?」
「君はガンダールヴだそうだね」
「え?」
聞き覚えのない単語に、サイトは首をかしげる。ガンダールヴとは、一体何のことだろう。
「おや、まだ知らなかったのかい」
意外そうにワルドは言った。
「まあ、知らないなら構わないさ」
「こんな話だけではないでしょう?何か用事があってここに来たん
でしょ」
「察しがいいね。僕と手合わせ願いたい。ルイズから聞いてる。平民でありながらギーシュ君を圧倒したその力を見てみたい」
「どこでやるんですか?」
「この宿は昔アルビオンの侵攻に備えるための砦だった。中庭には練兵場がある。そこで勝負だ」
背を向けるワルドに、サイトはデルフを背負って着いていった。

着いた場所は、少し広めの練兵場だった。
「かつてある国の王フィリップ三世が兵士を育てるために建設した場所だ。兵士たちはその王への恩に報いるために日々鍛練を行っていた。
でも、時には下らない理由で剣をとることもあったそうだ。例えば、女を取り合ったりね」
たんたんと昔の話を話すワルド。
「結局なに言いたいのかわからないんすけど、どうぞ構えてください」
デルフを手に取るサイト。
「そう焦るな。まず介添人が必要だ」
その介添人がやって来た。ルイズだった。
「ルイズ?」
「どういうこと?来いってきてみれば…二人で何をする気なの?」
「彼の力を試そうと思ってね」
ワルドは懐から杖を取り出した。
「バカなことはやめて!そんなことやってる場合じゃないでしょう!?」
「そうだね…でも強いか弱いか気になると、どうにもならなくなるのさ。貴族と言うものは」
「やめてよ二人とも!!」
二人の耳にルイズの声は聞こえてなかった。
サイトはワルドに向けて剣を振りあげた。だがワルドは難なくそれを受け止め、今度はワルドがサイトに攻撃してきた。
まさに蝶のように舞い蜂のように刺すような攻撃だった。
(速い!!)
この速さについていけないと悟ったサイトは一度距離を置いた。
「どうした?息が上がっているようだが」
「なんでえあいつ魔法を使わねぇのか?」
「お前が錆びてっから、なめられてんだ。多分…」
確かに、さっきの攻撃を避けるのに体力を使った。息が上がってるのを隠しきれないほどに。
「ただ魔法を唱えることがメイジの戦い方じゃない。杖を剣のように扱いつつ詠唱を完成させる。軍人の基本さ」
「なら、これでどうだ!」
サイトは剣を風車のように回転させてワルドに接近した。
「アイデアは悪くないな。君は確かに素早い。ただの平民とは思えないよ。さすがは伝説の使い魔…しかし…」
ワルドはサイトの後ろに回り込み、杖でサイトを攻撃した。
「うわ!?」
「だが速いだけで動きは素人…隙だらけだ」
サイトはその後も攻撃するがワルドは難なくかわしていく。
「ただ剣を振ってはメイジには勝てない…つまり、君ではルイズを守れない。それどころか、誰もね」
そしてワルドはサイトに風の魔法エアハンマーで攻撃した。
「うわあ!?」
サイトは風の衝撃波で壁に激突し、デルフを落としてしまう。
「勝負ありだ」
立ち上がろうとした時には、ワルドは目の前で杖を突きつけていた。
「サイト!」
心配になってルイズはサイトに駆け寄った。
「わかっただろうルイズ。彼では君を守れない」
「そんな言い方しなくても…」
「とりあえず彼を一人にしておこう」
ワルドとルイズは去って行った。
「いやぁ負けちまったな」
デルフは悔しさを紛らわすように言った。
「まあ恥じることはないぜ。あいつ多分スクウェアクラスのメイジだ。って相棒?まだ話は…」
「…」
サイトはデルフになにも言わないまま、彼を鞘にしまい込んだ。真面目に訓練しておけば、なんて言い訳を考えていた訳ではない。
(誰も守れないだと…?)
ワルドのあの発言はかえってサイトの心に意地っ張りに近い炎を灯すことになった。

夕刻。船が出る数分前の時間となった。
「そろそろ出発だ。桟橋へ行こう」
「サイト…けがは?」
心配そうに尋ねるルイズに、サイトは何事もなかったように振る舞う。
「なんともないよ。気にすんな」
サイトたちは宿を出たその時、巨大な石の巨人が彼らの前に姿を現した。
「なっ、何!?」
「ゴーレム!?」
「くっ…」
キュルケ、ギーシュ、タバサは驚愕する。その巨大なゴーレムは、どうやらサイトたちを標的にしているらしい。
「先に行って」
タバサはサイト・ワルド・ルイズの三人に言った。
「行けって、タバサはどうするんだよ!?」
「足止めする。今のうちに」
「はあ、しょうがないわね。私も残ろうかしら。ギーシュ、あんたも残るのよ」
「え、僕もかい!?」
キュルケも胸元から杖を取り出し、残る姿勢を見せた。
「よくよく考えたら、私たちはアルビオンに何しにいくのかわからないし。ほら、さっさと行きなさい!」
「あ、ありがとう!」
ルイズは少し言いにくそうにも、キュルケに礼を言った。
「勘違いしないことね。私はダーリンのために頑張るんですから!」
「わかった。死ぬなよ!」
サイトとワルドはルイズを連れて先へ行った。
「子爵…なんか怪しい…」
タバサは意味深なことをボソッと呟いた。
「おいキュルケ!何か手はあるんだろ!」
「落ち着きなさいギーシュ!まずはあんたはワルキューレであいつを牽制、そして錬金であいつを油まみれにした後あたしとタバサであいつを焼き払う!」
「りっ了解!」
「さあ、おっ始めるわよ!」
気合いを入れた三人は、謎のゴーレムに杖を向けた。
「まさか、ここで学院の生徒に手を出すなんて…気が重いね…」
その時、誰にも気づかれない高い場所から、ゴーレムを操ってる女メイジ『土くれのフーケ』がキュルケたちの姿を見下ろしていた。
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