ウルトラマンゼロ サーヴァント(完結)

□File6
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アンリエッタからの依頼でアルビオンへ向かう一行。サイトとギーシュは必死でワルドのグリフォンを追いかけていた。
「もう半日以上走りっぱなしなのにペースが落ちない…」
「きっちー…」
サイトはグリフォンに乗っているワルドとルイズを見た。見るからにワルドはルイズにベタベタ触っている。
(もしかしてあいつ…ロリコン!?)
全身に寒気が走る。全国のロリコンの方には申し訳ないが、サイト
は怪獣以上にワルドのことを恐ろしく感じた。
「ププ…」
そのサイトを横目で見ていたギーシュは突然笑いだした。
「なんだよギーシュ、気持ちわりーな」
「もしかして君、妬いてるのかい?」
「は?」
なんのこっちゃ?とサイトは首を傾げた。
「なんだ、違うのかい?てっきり君はルイズが好きだと思ってたのに…」
期待外れの返答にギーシュはがっかりした。もし図星を突くことができたら、一発からかってやったのに。
「おい誤解だっつうの。あいつと会ってからまだ日が浅すぎだ。そ
れに俺にはちゃんとした彼女が…」
「なにい!?いつの間に…」
「びっくりしすぎだろ…ったく…」
ギーシュの反応に少し蒸し返すサイトだったが、その彼女、ハルナはどうしているのだろう…
(元気でいるかな…)
以前、一緒に出掛けた時もあった。
確か、日の暮れた帰り道で…
『ハルナは、将来はどうするんだ?』
『私?そうだね…平賀君と一緒じゃダメかな?』
『俺と一緒?』
『平賀君って、防衛軍に入るのが夢なんでしょ?私も、一緒に行けたらいいなって』
『…俺のは、漠然とした夢みたいなもんさ』
自信のないように言うものの、夕日を見つめながら彼は言った。
『三年前、ウルトラマンメビウスが怪獣や侵略者を倒した時、誰もが喜んでいた。自分たちの平穏な生活が戻ってくるから』
『いいことじゃない。どうかしたの?』
『…俺の場合はさ、悲しくもあった』
『え?』
悲しいとはどういうことなのだろうか?侵略者が倒れ、平和が戻ったことに何か不満があるのか。この時のハルナにはわからなかった。
『侵略者だって、元々悪い奴だった訳じゃない。きっと事情とか、昔のこととかで悪に染まる奴だっている。怪獣は人と話せないから仕方ないかもしれないけど、善人になれないまま死んでいく侵略者たちを見ていると、まるで平和のための生け贄に見える』
『平賀君…』
『だから俺、見たいんだ。侵略者だった奴も、侵略された奴も手と手を繋いで、なんのわがたまりもなく日を過ごす景色を』
ギュッ!と拳を握るサイトに、彼女は優しく手を添えた。
『大丈夫、平賀君ならきっと』
「必ず帰るよ…」
サイトは小声で呟いた。

しばらくして、双月が空にはっきり映るほどの時間となった。
サイトたちは今、岩山に囲まれた場所にいる。
「この山道の先がラ・ロシェールの港街だ」
「一息つけるとほっとするなあ…」
痛そうに腰を擦るギーシュ。
「しかし、なんで港街が山の中にあるんだよ。確か、アルビオンってのに行くには、船に乗る必要があるんだろ?」
確かに、この辺りには海はおろか、船が必要な湖もない。なぜこんな山奥に?
「君はアルビオン知らないのかい?」
ギーシュは意外そうな顔をした。
「知らん。ここの常識と俺の常識を一緒にしてもらっては困る…」
すると、突然サイトたちに松明がたくさん飛んできた。
「うわ!」
ビックリしたサイトとギーシュは馬から落ちてしまう。
「なんだ?」
「奇襲よ!気を付けて!」
ルイズの声で二人は岩山の上を見上げる。そこにはたくさんの兵がいた。チェルノボーグの監獄から脱獄してきた囚人たちである。彼らはサイトたちに向けて弓矢を放ってきた。
「わあ!」
しかし、二人を守るように竜巻がまき起こった。ワルドの魔法である。
「大丈夫か二人とも!?」
「だっ、大丈夫です!!」
ワルドの言葉にギーシュが答える。
「戦う気がないなら岩陰に隠れていろ!」
隠れろと言われたくらいで下がれない。サイトはデルフを抜いた。
「俺たちも行くぞデルフ!」
「おお!やっと出番だぜ!」
デルフを握った瞬間、サイトのルーンが輝いた。勢いよく走って崖の上を登り、囚人たちを峰打ちで攻撃する。
「おらあ!」
バシッ!とまず一人が倒れ、一人また一人とサイトは倒していく。
「ぐわ!」「ぎゃあ!」
「ワルキューレ!行け!」
ギーシュもワルキューレで囚人たちを攻撃した。
その頃のワルドはサイトの戦いぶりをじっと見ていた。特に、左手のルーンを。
(あの左手のルーン、やはり…)
その時、空から凄まじい突風が囚人たちを襲った。その風が吹いて来た空に、一匹の竜が空を羽ばたいている。
「竜だ!」「矢を放て!」
矢を放つ囚人たち。だが囚人たちはその強すぎる突風で次々と倒されていった。
「風の呪文にあの幻獣…」
ルイズの顔が引きつっていた。浮かぶのは、どう考えてもあの『二人以外』考えられない。
「知り合いかい?」
ルイズはコクッと頷いた。
「お待たせ〜」
その竜に乗っていたのはキュルケとタバサだった。もちろん竜はタバサの使い魔シルフィードだ。
キュルケは制服姿だったが、タバサはナイトキャップを被った寝間着姿だった。
「何しに来たのよキュルケ!」
「朝方あんたたちが馬に乗って出かけるのを見たから急いでタバサを起こしてきたのよ」
(こく…)
「お忍びの任務なのに…」
額を押さえ、肩を落とすルイズ。どこまでもまとわりつくか、と苦虫を噛むように頭を爛れた。
「それにしてもお髭のあなた、素敵な方ね。微熱は、いかがかしら?」
キュルケはワルドの方に歩み寄り、色気を出して体を押し付ける。
そのキュルケにルイズはヤカンのように顔を怒りで赤く染めたが、ワルドは興味なさそうに押し退けた。
「あらん?」
「済まない。助けはありがたいが近づかないでくれ」
「え、え?どうして!?私が好きって言ってるのに!」
さすがのキュルケも想像だにしてない事態に動揺を隠せずにいた。
「見ろよサイト、キュルケの奴かなり動揺してる」
ギーシュはひそひそとサイトに耳打ちした。彼もこの事態は予測できなかったことがうかがえる。
「だったら理由を言ってよ!」
「理由かい?僕はルイズの婚約者だからさ」
ワルドはルイズを抱き寄せていった。
「婚約者?ルイズ、あなた婚約者なんていたの!?」
「えっと、親が勝手に決めたこで…」
「だったら先に言いなさいよ。恥かいたじゃない」
恥ずかしげにもじもじとルイズは答えた。キュルケはおもしろく無さそうな表情を浮かべる。
「この男がルイズの婚約者ねえ…」
キュルケはもう一度ワルドの顔を見る。そんなキュルケに、不思議そうな目でタバサは尋ねてきた。
「どうしたの?」
「あの男…見た目はイケてるけど中身はダメみたい。なんか目が冷たいもの。まるで情熱を知らない氷ね。あたしは心に火を灯してくれるような人がいいのよ」
キュルケはさっきの様子から百八十度切り替え、サイトの方を向いた。
「本当はね、ダーリンが心配だったのよ」
キュルケは豊満な胸を押し付けてサイトに抱きつく。
「…うそつけ」
ボソッとサイトは赤くなって言った。
「あらあら、妬きもちなんて…ダーリンったらかわいい」
「おい!やめろって!///」
「ちょっとキュルケ!!私の使い魔にまた手を…」
そのルイズを遮るように、暗い影がサイトたちを覆った。頭上に現れたそれを見あげるギーシュは、思わず腰を抜かしてしまう。
「かっ…怪獣!?」
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