ウルトラマンゼロ サーヴァント(完結)

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浮遊大陸アルビオン
「白の国」の異名で他国に知れ渡っている国だ。
その国の空から、トリステインの森に向かって、神秘的な紅の光が飛来した。その光は森の中に消え、その輝きのおさまった場所に突然大きめの小屋が現れた。
その小屋の真正面にハルケギニアでは珍しい、整った顔立ちに黒髪の青年が、短剣に似たアイテムを握りしめ、それを見つめていた。
「俺に…何を望む?」

『一体どこで何を遊んでる!?』
テレパシーでの、レオからの通信にゼロ(サイト)は頭に頭痛を感じる。
『し、仕方ないだろ!怪獣が出てきたんだ。だったら対処するのは当然だろ!』
『確かにそうだが、なぜ戻ってこようとしない!?』
『ま、まあいいじゃんか!もしかしたらこの星に怪獣がまたでるかもしれないし、しばらくこの星の防衛に当たるから。んじゃ、そういうことで!』
『こら、待てゼロ!』
丸く納めるゼロに説教を食らわせようとしたレオだったが、ゼロは
軽く無視して通信を切った。
「ふう、普段から楽じゃないよな…ウルトラマンも使い魔も。
帰り道がわからないなんて言えねーし…」
サイトは額の汗を拭く。同化した影響なのか、知らず知らず、レオに殺されるのでは?という恐れを抱くようになってしまったとか。
「シエスタ、今日も飯頼むよ!」
今日も学院に平和な朝が訪れ、サイトは朝食を食べに食堂に入ってきた。だが…
「あれ?いないのか?」
いつもならすぐ目につく場所にいるのに、シエスタの姿が見当たらない。
「おう我らの剣!どうした?」
「あっマルトーさん」
マルトーは食堂の料理長を勤めている。サイトのことは彼がギーシュに決闘で勝利して以来気に入っている。怪獣を相手に体を張った姿にも惚れたと本人は言っていた。
「あの、シエスタ知りませんか?」
「ん?シエスタから聞いてないのか?」
マルトーは説明した。シエスタは実は今朝、モット伯爵の使用人と
して雇われたため、学院を出たのだ。
難しい知識に疎いため意味はわからないが、「妾」としてらしい。
「そんな…」
「所詮平民は貴族に勝てないのさ。さあ仕事だ仕事」
マルトーはそのまま去っていった。
「シエスタ…」

ルイズの部屋。
ルイズは髪をとかし、サイトは窓拭きをしている。
「モット伯爵は王宮勅使の方よ。私は偉ぶってて好きじゃないけど」
「でもなんたってシエスタがそんなとこに…」
「考えられることと言ったら、妾は「そいつの女」になれってこと」
サイトは思わず絶句した。女にとっては、それはなんとも酷い話だ。
「じゃあシエスタは好きでもないのに、そいつの女になるってのか!?」
「貴族の間じゃよくある話よ。仕方ないわ」
「そんなの…あんまりじゃないか!自分の意思を、どれだけ無視されてるんだよ、この世界の平民たちは…」
「落ち着きなさいよサイト。あんた傷がやっと治ったばかりなのよ。使い魔は主の世話しっかりしないといけないんだから、シエスタのことは諦めなさい」
「…………」
サイトは窓から夕日を眺める。

学院のホールの噴水で、モンモランシーとギーシュは隣り合わせで座っていた。ギーシュに至っては、手作りの指輪をプレゼントしている。アホな感じの割には(酷いじゃないか!)手先の器用さは見事だ。
「ミスリルの指輪ね、素敵じゃない。
でもこれで浮気の件はなしってわけじゃないでしょ?」
ジト目でモンモランシーはギーシュを睨む。
「わ…わかっているさ。これで君が許すと」
そこにサイトが走ってきた。
「ギーシュ」
「ん?サイトじゃないか。どうしたんだい?」
「ちょっと聞きたいことがある。取り込み中悪いけど、いいか?」

「あの犬、どこへいったのかしら?」
サイトの姿が見当たらないのでルイズは廊下を歩き回りながら彼を探していた。
「まさかツェルプストーにうつつを抜かしてるんじゃないでしょうね…」
プライドの高いルイズにとって何かをとられること、それもキュル
ケの家系ツェルプストー家にとられるのはかなり屈辱だった。
「私が何?」
噂をすれば影、キュルケがやって来た。
「キュルケ?ちょうどよかったわ。サイトはどこか知らないかしら?」
「あら、一緒じゃなかった?まさか、ついに見捨てられたのかしら?」
フフッ…とからかうように笑うキュルケ。
「だとしたらダーリンはフリーね。今のうちにうばっちゃおうかしら?」
「ふざけないでよ!あんたに渡すものなんか石ころ一つないわ!」
「あ〜ら?ゼロのルイズがいっぱしの口をきくじゃない?ウルトラマン『ゼロ』とは大違いよね〜。だってウルトラマンゼロは無敵のゼロなのに対し、あなたは胸も魔法もゼロだもの」
「何ですって…?」
「何よ?」
バチバチバチ!と目線上に火花を散らす二人。
するとギーシュが、二人の様子にちょっぴり怖がりながらも割り込
んできた。
「か…彼ならさっき見かけたよ。モット伯爵の屋敷の道のりを聞き
出してきたけど何をするつもりだろう?」
ルイズはそれを聞いてギョッ!となる。
「モット伯爵ですって!?」

夜、サイトはモット伯爵の屋敷前にたどり着いた。しかし、予想以上の距離にはキツさを感じざるを得ない。
「あのギザ野郎…歩いて一時間なんて聞いてねえぞ。」
サイトはゼイゼイ言いながら一息ついた。だが、そこで見張りの兵士に見つかってしまう。
「貴様!ここでなにをしている!?」
「ああ…あの…」

モット伯爵の部屋では、椅子に偉そうに座る伯爵と、その隣で茶を注ぐシエスタがいた。
「どうだ?ここでの仕事には慣れたか?」
「はい…」
シエスタの表情はどこか悲しげに見えた。
「わかっていると思うが、私はお前をただの使用人として雇ったわけではない」
モット伯爵はシエスタの匂いを嗅ぎだし、おかしなところまでベタベタ触りだす。
「……」
今すぐ逆らいたいところだが相手は魔法を使う貴族。無力な自分にはどうしようもない。
その時、兵士の声が扉の方から聞こえてきた。
「伯爵様。サイトと名乗るものが面会を求めています。」
「サイト?聞かぬ名前だな」
(サイト?まさか…)
その名で彼女の脳裏に真っ先に浮かんだのは、貴族の男に奇跡的な勝利を得た青年だった。

「なんだ、誰かと思えば平民ではないか」
モット伯爵は面会用の部屋に入って、サイトを見たとたんに卿が削がれたようにため息をついた。
「お前たち、下がれ」
「「はっ」」
衛兵は伯爵に向けて敬礼すると、言われた通り面会部屋を後にした。
「わざわざ平民が出向くとは、何のようだ?」
「頼みます。シエスタを返してください!」
そのサイトの言葉を聞いた伯爵は鼻でふっ、と笑う。
「バカを申すな。あやつは私の使用人だ。何をしようが主の自由だ。たとえ、その身を弄んでいてもな」
わざとらしく手招きする伯爵の姿に、サイトは怒りで身を震わせていく。
「そんな…汚ないぞ!シエスタが逆らえないからって!」
「そうだ小僧。お前にシエスタを返してやってもいい」
「え?」
一瞬伯爵の言葉を疑った。一体どういう風の吹き回しだ。
「ただし条件がある」
「条件?」
「至って単純だ。ウルトラマンゼロを私の前に引き渡せ」
サイトはそれを聞いて顔をしかめた。なんとなく理由はわかるが、敢えて尋ねてみた。
「何のために…?」
「簡単に言えば、戦争の兵器だ。
すでにウルトラマンの噂は王宮にまで行き届いておる。あれほどの力、利用したい者は必ず現れるものだ」
「へえ…それは大層なことだ。でもな、これは言わせてもらうよ」
サイトはパーカーの左手の袖を捲ってブレスレットを露にすると、ブレスレットから眼鏡型変身アイテム『ウルトラゼロアイ』が飛び出してきた。
「『兵器なんかになる気はない』ってね」
伯爵はウルトラゼロアイを見た瞬間、
「ふふふ…わははははははは!!!!!!」
大声で笑いだした。
(な、なんだよ。シエスタを助けるためとは言え、どうせバラすな
ら正体をかっこよくバラそうと思ってたのに…)
「やっぱり来たか、ウルトラマンゼロ」
「なっ…!?」
サイトは驚きを隠せなかった。すでに伯爵は自分の正体を知ってた
のか?
いや、違う。
「貴族に化けて、貴様の仲間を餌に誘き寄せて正解だった。
『冥王』の命令だ。お前を消してやろう…」
伯爵の姿が、みるみるうちにドロッ!溶けていき、溶けた金属の塊
になっていく。
そして、その塊は巨大化し、『金属生命体アパテー』となった。
「怪獣…だったのか!?」
アパテーの巨大な体が屋敷より飛び出したせいで、屋敷は崩れだした。
「く…シエスタ!」
シエスタがおそらく中にいる。急いで救出しなければ彼女は瓦礫に
埋まってしまう。
一旦アパテーから離れ、階段を降りると、使用人の部屋の外にある
廊下で倒れてるシエスタを発見した。瓦礫が頭に当たってしまい、
気絶している。
「逃げろ!化け物だあ!」
アパテーの姿を見た衛兵たちは一目散に逃げ出していた。
サイトはシエスタは門の辺りに来たところで降ろし、ウルトラゼロアイを目に装着した。
「デュア!」
装着した瞬間、彼の顔は銀のマスクに覆われ、肌は青と赤の模様に
変化し、胸元辺りにはプロテクターが形成された。
そして巨大化、ウルトラマンゼロへの変身が完了した。
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