アンリミテッドデザイア(完結)

□#5
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憐地とソラ。本来なら憐地がソラを見つけたことで二人は元いた世界に返されるはずだったのだが、残念なことに今のところ二人が住んでいた『エメラダ星』の位置は特定しきれていない。それにソラは「ここでなすべきことがある」という理由で、ミッドに残ることになり、憐地も彼を探した身であるため共に残ることになった。

翌日の訓練場。
「どりゃあああ!!」
今回はミッドチルダ首都『クラナガン』から離れた場所にある廃都市にて訓練が行われた。今日からは憐地もフォワード陣と共に特訓である。
「地砕掌!」
バリアジャケットを身に着け、地をも砕く勢いの拳をなのはにぶつける憐地。対するなのはは咄嗟に突き出した右手から魔力障壁『プロテクション』を発動し、その鉄拳を防ぐ。
即座に反撃に転じようとしたなのはだが、その時オレンジ色の魔力弾が、憐地に攻撃を加えさせまいと飛び出し、それに反応したなのははそれを回避した。今のはティアナがクロスミラージュで撃ちこんできた魔力弾だ。魔力弾の飛んできた方向に目をやると、廃ビルの窓に隠れているティアナの姿があった。そこへ手から魔力弾を放つなのはだが、その魔力弾が当たる前にティアナの姿が消えた。
(なるほど、幻術ね)
なのはは少し笑みを浮かべて納得した。彼女は幻術も得意で、隠密的な行動にも適している。あたかも幻術の分身に撃たせていたかのように見せかけるとは見事である。
その時の彼女たちが気づいてなかった。

「おー、やっとるやっとる」
六課の作戦室。そこには現場の状況を分析、支持するチーム『ロングアーチ』の局員たちと、六課の部隊長で彼女たちロングアーチのリーダーでもあるはやてがモニターからなのはたちの訓練を見ていた。
「日に日に成長しとるのがよーわかるわ」
それをともに見ているのは、ソラと、なのはと共に訓練を受けているエリオ・キャロのチーム・ライトニングのリーダー、フェイトにシグナム、ヴィータ、そしてリイン。
「大丈夫かな、けがしなければいいんだけど…」
「テスタロッサ、そう心配することもないだろう。あいつらの成長はお前も見てきたのではなかったか?」
シグナムはライトニング2、後輩たちの成長もしっかり見てきている。一見彼女の方が年上に見えるが、上司であるフェイトに向けて安心させるように言う。
「そういえば、憐地の奴どこの部隊に入るつもりだ?」
ヴィータが一つになったことを告げた。確かに、今のところ彼の所属するチームは未定のままだ。はやてもどうしようか悩んでいるところである。
「そうやな、そろそろ決めとかないとあかんもんな」
「…?」
その時、ソラはモニターを見ていると、目を細めた。
「どうしたの?」
不思議に思ってフェイトが声をかけてみた。
「…何かいないか?その…クラゲのような…」
「「「「クラゲ?」」」」
なぜクラゲ?フェイトとはやてとヴィータとリインは首を傾げる。
とその時だった。ロングアーチのメンバーの一人であるオペレーターが大声を出した。
「廃都市上空に、謎のワームホールが出現しています!」
「なんやて!?」
「…」
シグナムはさらにソラへの視線を鋭くした。この中の面子は歴戦の戦士でもある。なのにその誰もが気づいていなかったというのに、戦士でもないたかが研究者の若者がなぜいち早く気づけたのだ?

「我が乞うは、疾風の翼。若き槍騎士に、駆け抜ける力を」
ついにフリードの真の姿をコントロールできるようになったキャロは、変身したフリードの背中に搭乗、同じように背中に乗っていて、たった今飛び降りたエリオに補助魔法をかける。
『ブーストアップ・アクセラレーション!』
ケリュケイオンから桃色の光がはなたれ、エリオの持っていたストラーダに光が灯る。エリオの足元の魔法陣が煌き、ストラーダのブーストが火を噴く。
「あの!かなり加速が付いちゃうから気をつけて!」
「大丈夫!スピードだけが取り柄だから!」
エリオはキャロに微笑みかけると、落下先のなのはを見降ろす。なのははティアナの二つの弾丸とフリードの炎を避けるので必死だ。そしてそのなのはが、エリオの存在に気づいた。
「エリオ、今!!」
「いっけぇぇぇええええ!!」
槍を構え、ストラーダが煌く。打ち出すと同時に、エリオは物凄いスピードでなのはに突進した。二人が激突し、爆風が舞う。エリオはそこから弾き飛ばされた。
そのままビルに着地するも、勢いを殺しきれずに止まることはなかった。
「エリオ君!!」
キャロが声を上げる。爆風が晴れた後には、なのはが立っていた。
『スバル、次はあんたの番よ!憐地さんも、スバルとタッグで!』
『了解!』
別の廃ビルの窓際に隠れていた本物のティアナからの念話を受け取り、ウィングロードを渡って走ってきたスバルと、背後から挟み撃ちを仕掛けるに向かうが、その時だった。
「わぷ!?」
突然スバルは自分の顔を両手で覆った。同時に、彼女の異常に気が付いた憐地も立ち止まる。
「どうしたんだ、スバルちゃん!?」
『ちょっとスバル、なにやってんの!?』
このタイミングで立ち止まったスバルに対し、念話でティアナが怒鳴る。
「だって、急に目に砂が…」
目を開けた時の彼女の目から、大量の涙が出ている。しかも涙には砂が少し含まれていた。
「砂って、目にゴミが入ったとで…」
どうせ身にゴミでも入っただけだろうと思っていたティアナだったが、彼女も違和感に気が付く。自分の手に、天井から砂が、砂時計の砂のように流れ落ちてきている。
「!ティアナ!」
なのはが急に大声を出した。すぐにそこの廃ビルから出ろ。その意味をいち早く理解したティアナは窓から飛び降りて廃ビルから脱出。
そして、彼女のいた廃ビルは屋上から崩壊、たちまち瓦礫の山となった。
「い、一体何が!?」
エリオはただ訳も分からず動揺している。キャロも不安そうな顔でその場で固まってしまっていた。
だが、ティアナのいた廃ビルだけではなかった。突如として廃ビルが次々と崩れ落ちていくではないか。
「全員一時退避!」
なのはが直ちに皆に伝え、フォワード陣はすぐ空へと飛行、廃ビル群から近かったハイウェイの上に避難した。
「こちらスターズ1、ロングアーチ応答して!」
なのはが電子モニターを出現し、六課作戦室のチーム『ロングアーチ』に連絡を入れた。

「こちらロングアーチ!スターズ1、現状を報告せよ!」
はやてが部隊長らしく、モニターに映るなのはに報告を促す。
『訓練中、廃ビルが謎の倒壊を遂げました!敵の姿は確認できず。解析をお願いします!』
「了解!ロングアーチ、直ちに解析を開始せよ!」
はやての指示で、ロンギアーチのメンバーは直ちにキーボードのキーを叩きだした。目に見えない敵…その正体はなんなのか。

ハイウェイ上にて待機したなのは・スバル・ティアナ・エリオ・キャロ・憐地。崩れ去って行った廃ビルのあった場所は、建物が粉塵化したことで出来上がった砂の山がいくつも出来上がっていた。まさに砂漠地帯である。
「ねぇ、なにかいない?」
スバルが砂漠化したビルの上空を指さす。すると、そこに半透明の、巨大なクラゲのようなものの姿が見えてきた。
「もしかして、あれがビルを倒壊させた?」
エリオが言う。
『こちらロングアーチ、こちらでも敵の姿を確認しました』
ここではやてからの返信が入った。
「指示をお願いします」
『攻撃の許可を与えます。気を付けて』
「了解、各自戦闘態勢に入って!」
「「「「「「了解!」」」」」」
なのはがフォワード陣全員に戦闘態勢に入るよう指示をし、フォワード陣も敬礼して了解の意を示す。

「ドクター、言われた通りワームホールを出現させたました。奴らもやってきたようです」
一方、まだ倒壊していない廃ビル群のはずれに、体のラインがくっきりしている青いスーツを身に着け、右目に岩体を装備した銀髪の小柄な少女が屋上にいた。電子モニター越しで誰かに報告している。
『ご苦労だったね「チンク」。後はこちらから彼らの動きを解析するだけだ』
そのモニターにて、以前『ウーノ』とい呼ばれた女性と話していた男…『ドクター』と話している。
「でも、なんでわざわざこんな回りくどいやり方で?」
首を傾げる少女。
『戦闘機人としては完成だが、私としてはまだ君たち全員未完成だからね』
「管理局の連中ならば、今の私たちの状態でも十分倒せるはずだと思いますが?」
『敵は、管理局だけじゃないさ』
「…」
敵は管理局だけじゃない。それは、なんとなくながらも彼女は予想した。
やはりあの、ウルトラマンとかいう巨人のことだろうか。
『さ、そろそろ戻りたまえ。これから動き出す妹たちのためにね』
「…了解」
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