アンリミテッドデザイア(完結)

□#4
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ソラを連れ、隊舎に戻ったフェイトたちライトニング部隊。
迎えに来たヴァイスのヘリで機動六課隊舎の前に、ヴァイスと共にソラ・フェイト・エリオ・キャロが降りる。
「ようこそ、機動六課へ」
フェイトが笑顔で言う。もう立つことができるくらいは回復していた。
「ここが機動六課とやらか」
「ええ、僕らは普段はここで過ごすんです。ロストロギアのことなど、もしものことがあったら出動して回収…といった具合です」
エリオが大まかに機動六課のことを説明する。
「じゃ、俺はヘリをかたづけてきますんで、フェイト隊長は先にどうぞ」
再びヘリに乗り込んだヴァイスはフェイトに言った。
「うん、今日もありがとう、ヴァイス」
彼女が礼を言うと、ヴァイスは敬礼をして去って行った。
「それじゃ、私が案内します」

六課の中は思った以上に広かった。基地としては申し分ないスペースを誇り、多くの六課に所属する局員たちがあちこちにいた。溜めこんだ書類を片付けている者、食堂の飯を平らげている者(実はスバルである。ティアナは隣で食欲が失せてうんざりとした表情になっている)など、個性的な面々が目立っていた。

はやてはリインと共に部隊長室でソラたちを待っていた。
「八神部隊長、フェイト・テスタロッサ執務官およびライトニング部隊、ただいま帰還しました」
部隊長室に入ったフェイト・エリオ・キャロははやてに敬礼すると、彼女とリインも敬礼をして返す。
「ご苦労様です。で、そこの彼が…」
はやてがこちらに視線を向けてきたことに気づき、ソラも敬礼して自己紹介した。
「初めまして、私はソラ・クロサキと申します。以後お見知りおきを」
「私は時空管理局本局・古代遺失物管理機動六課・部隊長の八神はやてといいます。こちらこそよろしくお願いします」
「私ははやてちゃんの『ユニゾンデバイス』であるリインフォース・ツヴァイです。よろしくなのです」
差し出された彼女たちの手を、彼はしっかりと握った。
「服装はボロボロやからどんな人かと思ったけど、憐地君よりも礼儀や常識をわきまえてくれとるみたいで安心したわ〜」
「!?」
少し安心したようにはやてが言った『憐地』という名前を聞いてソラは少し目を見開いた。
まさか、あのアホまでここにいるのか?と心の中で驚きの声を上げていた。
「はやて…ちょっと失礼だよ…」
フェイトはソラが不快に思ってないかを危惧してはやてに言う。
「いえ、いいんですよ。テスタロッサ執務官」
首を横に振ってソラは気に留めてないと言った。
「ま、とにかく…うちの部下がお世話になったみたいですから、部隊長として礼を言います。ありがとうございました」
「当然のことをしたまでです。それに、私は彼女に治癒魔法をかけただけです。特に大きなことなんてしてません」
「ご謙遜なさって。ま、それよかクロサキさん」
「なんでしょう?」
「あなたの世界が見つかるまで、あなたの身柄はこの機動六課で保護することになります」
「衣食住と最低限の生活は約束しますよ〜」
「…ありがとうございます」
実は、行方をくらましてからまともな場所で衣食住をこなしていなかったソラ。ここでそれが欠けることなくできるのならこれほどうれしいことはない。本人としてももう野宿生活にはかなり飽き飽きしていた頃だ。
と、ここでさらにもう一組が部隊長室に入ってきた。
シグナムと、憐地の二人である。
(げ!)
今の心の声、実はソラである。明らかに嫌そうな顔になっている彼に、エリオとキャロはどうしたんだろうかと彼の顔を見ていた。
「ただ今戻りました。主はやて」
かつての闇の書の主であるはやて、今でも彼女を主としてあがめているシグナムは彼女に敬礼する。はやても、シグナムに敬礼を返した。
「ご苦労様シグナム、憐地君はどれくらい出来上がったん?」
「ええ、もう私よりも高町の教導を受けてもよいころだと思います」
「わかった。そんならなのはちゃんにも伝えとく」
「了解し…」
「この野郎おおおおおおおおおおおお!!!」
「ぶ!?」
と、突如憐地がソラに向かって飛び蹴りを放ち、ソラの顔面を蹴り飛ばした。思い切り蹴り飛ばされソラはガラス窓に頭をぶつけてしまう。
「ちょ…憐地君なにしよるん!?」
仰天するはやてをよそに、憐地は床に崩れ落ちたソラの胸倉を掴む。
「てめえというやつは…四年間も一体どこをほっつき歩いてやがったんだごらあああああ!!!!」
なぜだろう。パンチを目にも止まらない程の速度で連打している彼からはギャグ漫画でよく見かけるような、ほとばしる涙と男の魂の咆哮がとどろく。
エリオは口がぽかんと空き、シグナムとリインも開いた口がふさがらない。キャロは憐地の剣幕におびえたのかエリオの後ろに隠れている。
「お、落ち着いて!」
フェイトがあわてて彼を止めようと彼の肩を掴む。
「止めないでくれフェイトちゃん!こいつのせいで俺は…四年もの間女と仕事を両立させた華やかなリア充生活送れたはずなのにいいいい!!!!」
ソラの首を絞め、そのままぶんぶんぶん!と彼の体を揺さぶる。ぶっちゃけいていることは馬鹿者くさいが、相当本人は四年間、ソラを探すことだけで苦しんでいたようだ。
「え、えっとその言い方だと、憐地さんとソラさんは、お知り合いなんですか?」
「ああ。ったく、相変わらずアホ丸出しで面倒な奴だ」
「たしかに…ってえ!?」
エリオはバッ!と背後を振りかえると、そこには憐地の不純な凹殴りを受けていたはずのソラが立っていた。エリオの声に気が付いたのか、憐地は背後を振り返ってソラを見る。まさかと思って自分が殴っていた方のソラを見ると、それはそらではなく、へのもへじの顔の人形だった。
(い、いつの間に入れ替わったんだ…?)
憐地とソラ以外、誰もが同時にハモってしまいそうなほどそう思った。
「人をコケにしやがって…おかげで俺は四年間も女の子とデートできなかったんだぞおおおおおお!!!わかってんのかこらあ!?」
「見苦しい。それに情けないからいい加減泣き止め。それと、後ろでお前の好きな美人のレディたちが怖い顔で睨んでるが」
ソラが自分の胸倉を掴む憐地に言う。そう言われた憐地は、背後から不穏な空気を察知した。空気が重くて振り向こうにも振り向けない。ただ、自分の肩を握りつぶしてしまいそうなくらい手に力を入れているシグナムの、殺意が沸きそうな声が聞こえた。憐地の顔からだらだらと冷や汗が流れ落ちる。
「主の御前だ。わきまえろ…」
「は、はい…」
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