アンリミテッドデザイア(完結)

□Strikers/#0
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かつてはるか昔から闇の勢力の手によって狂わされた星、エメラダ星。見た目は緑も多く残り、独自の魔法文化を備えた世界だったが、その闇の勢力の意図によって上層部は腐った者たちが集まり、人間と多種族の対立が6000年間もの間蓄積していて、改善の余地が見当たらなかった。
しかし15年前に、今では英雄とたたえられている光の戦士『ウルトラマンゼロ』『ウルトラマンノア』と仲間たちの活躍によって、各国の上層部の悪政は崩れ、闇の勢力が消え去ると同時に今では旧貴族と平民、エルフをはじめとした多種族とは平等と定めた法律が制定、努力し優秀となった人材が王族とともに政務をおこない、多種族との貿易も始まったことで世界はさらに豊かな方へ向かった。
そしてつい最近まで流通していなかった機械が、異世界のゲートを通じて流れ込んだ地球の飛行機械を元に開発され、一般の生活にも溶け込み始めていた。

そしてここに、あの戦いから世界を守った英雄を両親に持つ一人の少年がいた。
彼の名は『ソラ・クロサキ』。15年前に世界を救った戦士の一人、ウルトラマンノアこと黒崎シュウヘイと、戦いの後彼と再会して結ばれたティファニア・ウエストウッドの子である。顔は父親似だが、髪の色と目は母ゆずり。性格は常に強く厳しく敵に容赦しない父と純粋なまでに慈愛に満ちた母、二人のそれを足して二で割ったようだ。

王立魔法研究所の地下ダクト。そこには今まで機械とは無縁だった世界のものとは思えない巨大なコンピュータが設置されていた。
「第一段階、第二段階終了。各部異常なし」
「クロサキ博士、準備完了いたしました」
多くの白衣を着こんだ研究員がその機械の周りで書類を運び、PCのキーボードを叩いたりしている。『STAND BY』と文字が表示されたPCの一つの前に、ソラがいた。
「よし、はじめろ」
研究員の一人である、丸いメガネをかけた女性に言い、彼女はキーボードのスイッチを押した。
「この日が来たね。ソラ」
隣にいるのは、ウルトラマンゼロこと平賀サイトと高凪ハルナの子である『アキ』。黒の長いポニーテールの女の子で、ソラの助手として故郷を離れてここにいる。
「ああ、俺たちの研究成果…『クリシス』の稼働」
目の前の巨大コンピュータ『クリシス』に電光が灯り、機械音とともに稼働を開始した。
このクリシスと呼ばれる巨大な次世代コンピュータは、ソラがジェイとアキをはじめとした多くの研究員たちとともに、このエメラダ星に侵略を図った異星人や異世界のゲートから流れ着いた地球の飛行機械のデータをもとに設計し、開発したものだ。
実はこの開発に関して、発案したのはソラだが開発設計に関してはジェイが大いに活躍していたのだ。まだ15年しか、機械と無縁の世界だったこの星に、新たな文明の礎を築きあげたのである。
開発の目的は、主に怪獣災害の回避、この世界におけるネットワークの完成などだ。
「頼むぞ、クリシス」
祈るように、アキとは反対側でソラの隣にいる男『ジェイ』は呟いた。
ウィイイイイイン!と電光が強まるごとに機械音がさらに大きくなっていった。
が、その時だった、突如クリシスからまるで落雷のごとき電撃が発生、クリシスを包み込んだ。
『変換速度制御不能!変換速度制御不能!』
「何!?」
ソラでさえこの事態には予想外だった。
「すぐに異常(バグ)の原因を探れ!クリシスが機能停止する前に!」
「イエッサー!」
ソラは周りにいる研究員に命令を下す。だが、他の男性研究員がソラに通達する。
「だめです!プロテクトが追い付けず、制御できません!」
「くそ…いったい何が起こったんだ!」
悔しさと焦りで机を拳で突くソラ。
と、その時だった。キーボードに触れていた彼の手を伝うように、電撃が彼の頭の方へと流れ込みだした。
「っぐああ!!」
その電撃を受け、ソラは床に崩れ落ちた。
「ソラ!」
すぐ近くにいたアキは心配になって、電撃で意識を失ってしまった彼を支えた。
意識が遠のく寸前、彼は見た。
青い模様をその身に刻み、こちらをゆっくり振り向く青いウルトラマンの姿を…。

「ソラ、大丈夫かい?」
ジェイの声を聴き、その声で目を覚ましたソラはよろよろと立ち上がった。
「ああ…」
立ち上がったソラを見て、アキとジェイは安心して笑顔をこぼした。が、すぐにその表情は硬くなる。
「ねぇ、あれを見て」
アキが指さす。
指をさされた、クリシスと多くのケーブルでつながっているコンピュータの画面に怪しげな古代文字のような文字が表示されていたのだ。
「なんだ、この文字…?ハルケギニアのものでも、エルフが使っているものでもない…」
研究員の一人であるエルフの男性が不思議そうに見ている。
「…ベ・ル・カ…」
突然ジェイが奇妙なことを呟きだした。
「ジェイ?」
ソラがジェイの顔をのぞき見る。
「え、あ…どうしたんだ?」
気が付いたように、少々あわてた様子でジェイはソラに尋ねる。
「あんた、なにか呟いていたようだが、何を言ってたんだ?」
「いや、何て読むのかなって…思っただけだよ」
「クリシス、翻訳できる?」
アキがマイクを通してクリシスに命令を下してみる。
すると、その怪しい古代文字の下に、ハルケギニアの文字でこう表示された。
『近未来、異界より破滅をもたらす者、無限の欲望の手により復活せん。古代の力をカギとし、全宇宙を飲み込み、完全なる破滅をもたらす。無限の欲望は対価にすべてを手に入れ、その望みをかなえん』
「破滅をもたらす者…無限の欲望…?」
このクリシスが表示したこの文字、一体どこの文字だ?それに、破滅をもたらすものと無限欲望とはいったい…?
「クリシス、破滅をもたらす者と無限の欲望とはなんだ!?異常気象、天変地異?それとも、『ヤプール』のような超悪質星人のことか!?」
マイクからクリシスにそう尋ねるが、クリシスはこう答えた。
『No、すべてを破滅させる存在』
全部違っていた。ならば、今の単語の意味は一体なんなのだ。
「各員、各セクション、自然環境、経済、その他の全ジャンルのデータを集成!この答を導きだし絞り込むんだ!」
研究員たちはただちに用意された何台ものコンピュータのキーボードを叩きだす。
ソラも、アキやジェイと同じように自分の目の前に設置されたコンピュータとにらみ合った。
(父たちが守ってきたこの世界どころか、すべてが滅亡してしまうというのか…そんなこと!)
それ以降、この謎の文章の解読を急いだものの、何時間にわたってなおその答え…滅亡の回避から逃れる手も、この破滅をもたらす者と無限の欲望の意味は不明だった。

誰もが、解けない謎の前に諦めかけていた。と、その時だった。
「ソラ、変わったぞ」
ジェイが、コンピュータの前で悔しげにうずくまるソラの肩を叩く。
「何!?」
ハッ!となってソラ、そしてアキやほかの研究員たちはジェイの方へ注目する。
ジェイのPCの画面に、新たに文章が記されていた。
『宇宙破滅の回避手段。削除項目「(ここに最も適当な項目を入力せよ)」』
破滅を回避できる方法…。
「ためしにいろいろ文字を入力してみたが、この単語しか受け付けられなかったんだ」
「何を受け付けた?」
ジェイはキーボードのキーを複数叩き、最後にエンターキーを押した。その入力された単語は、自分たちにとって信じがたい、そして受け入れがたいものだった。
『削除項目「全知的生命体」』
「『全知的生命体』…!」
全員が騒然となった。
「このままじゃ、人類も世界も、すべてが無に還る…」

クリシスが表した、すべての知的生命体の滅亡と宇宙の破滅。そしてそれを『古代の力』と呼ばれるもので導く無限の欲望。
もしこれらが事実だとすれば、自分たちにできることとはなんだろうか。
(どうずればいい…どうすれば…)
こうなった自分に責任はある。
英雄の子だともてはやされ、国の王族としても将来を有望視され、彼は強いプレッシャーを抱いていた。でも自分には父や母のような特別な力など持っていない。魔法も他人より才能があるくらいで、宇宙規模のことにとても対応しきれない。
前兆といえるものは幼いころから知っている。いまだこの星で暴れてしまう怪獣だ。このクリシスが示した破滅の時が訪れた時、兵士ではない自分に一体何ができるのか考え物だ。現に今日、あの「怪獣」を助けることができなかった。
きっとその時が訪れたら、自分は何もできないままなのかもしれない。
「くそ!俺に…父さんのような力さえあれば…」
すると、PCのディスプレイから音が聞こえてきた。ディスプレイに目を向けると、そこには奇妙な単語がアルファベットで並んでいた。

『AGUL』

「あ・ぐ・る…アグル?」
なんだ、この聞いたこともない単語は?
いや、待てよ…
俺はこの言葉をどこかで…

とその時だった。
突如PCの画面から青い光が輝きだし、彼の姿を包み込んでいった。
「うわああああああああああああああああ!!!!!」

これは、かつて一人の光の戦士としての記憶を失い、平穏を取り戻した彼の新たな物語から五年前に当たる…。

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