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□最終回2
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エメラダ星に帰ってきた彼女が訪れた場所。森に囲まれ、自然に満ちあふれた小さな村の跡。
旧ウエストウッド村だった。レコンキスタが自分たちを狙ったことがきっかけで、ネクサスに変身した彼の手によって子どもたちとマチルダとウェールズと共にトリステインに逃亡して以来戻る機会がなかなか無かった。いや、一度この場所に彼がいるのではと思って来た(あの時は小屋に詰め込まれたため、テファの小屋だけあとも形もなかった)のだが、そう簡単に見つけられるはずもなかった。
テファは草がすっかり生い茂ってしまっていた切り株の椅子に腰掛けた。いくつか建物は残っているがもう誰も住んできない。子どもたちの住んでいた小屋の中はすっかり草木と埃でまみれていた。
自分の住んでいた小屋が建っていた場所の地面を、そっと身をかがめながら見つめる。
庭はすっかり芝で覆われていた。この場所で召喚のゲートより彼を呼び出し、そこから自分と彼の時間が始まった。
あの時のことが、彼と過ごした日々が昨日のことのように思えた。

もう一度ここでサモンサーヴァントを行えば、彼に出会えるだろうか。あの戦いのあと、ルイズからサモンサーヴァントで使い魔は、愛か運命といったものが関係するらしい。
だが無理な話である。既に使い魔を召喚したら、使い魔か主人である自分が死なない限り新たに使い魔を召喚できない。もしサモンサーヴァントのゲートが作り出されたら…。
(考えたくもない。いえ、そうじゃない。彼は約束してくれたから…)
でも、今日もやはり彼はいないようだ。明日はまたアンリエッタたちと公務に、また孤児院で待ってる子どもたちの面倒を見なくてはならない。もう帰ろう、そう思った時だった。

彼女の目の前に、突然光の鏡のようなものが姿を現した。
ただ目を見開き、驚くテファ。まるで、あの時のようだった。

彼が初めて自分の前に現れたときのような…。

世界扉もサモンサーヴァントも使っていないのに、どういうことなのだろう。驚く彼女を他所に、ゲートの中から光に包まれた、翼を持った等身大の銀色の戦士が歩いて出てきた。
翼は消滅し、彼女にとって馴染み深い姿をした戦士に変わると、彼は片膝を着き、光が消えると同時に黒い髪をした一人の青年の姿に変わった。
「ぐ…」
立ち上がってこちらを見る青年。本人は慣れないシチュエーションのためか、照れくさそうに右手の指先で頬を軽く掻いていた。その時の彼女は目を見開き、その顔を決して見間違えなかった。彼女はまだ気がついていなかったが、この時の彼は片目の瞳がザギと同じ赤目に染まっていた。
「…遅く、なったな。あのあともザギと戦っていて、奴の力を全て取り込む形で勝ったんだが、次元を数えきれないくらい飛び越えたせいでエネルギーがもうからっきしになって…」
彼はテファに言葉をかけながら歩み寄り、右手の薬指に着けていたシャジャルの指輪を手渡した。あの戦いの終盤の約束通り…。
だが最後まで青年は言葉を発することができなかった。テファが彼の胸に飛び込んできたのだ。大粒の涙を流しながら。そして、彼をがっちり抱きしめて離そうとしなかった。
「て…、テファ?」
「…もう、どこにも行かない?」
「…行きたくても、しばらくは無理だな。ここに帰るまでのあの時からずっと世界を渡る度にノアとザギ…両方のエネルギーを多く使ってきた。今ので最後だったからしばらく変身することもできない」
「よかった…」
涙を拭き取り、彼女は顔を上げて待ち望んでいた彼…シュウヘイの顔を満面の笑みで見つめた。
「…おかえりなさい、シュウ」
「…ただいま、テファ」

彼女の英雄はこうして帰ってきた。
そして、世界を混沌に陥れ続けてきた冥王は二度とその姿を現すこともなくなった。
神秘の巨人との同化・虚無魔法による肉体のウルティノイド化が積み重なって、彼は永遠の時を生きることになってしまったが、彼と共にある少女が老いて逝くまでの間、彼女の側に居続け、決して忘れることはなかったという。


俺たちは生きる。たとえ昨日までの平和を失い、立ちすくんだとしても。
俺たちは生きている。何度も傷つき、何度も倒れたりしても。
俺たちは生きていく。君は、一人ではないから…。


−NEXUS−
それは決して断ち切れない魂の絆




ウルトラマンゼロ サーヴァント
THE END
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