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□File5
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「っく!」
ジュリオは痛みで胸を押さえながらその場で膝を着いた。どうしてかわからなかった。ゴモラと同じ痛みが、自分の体に走り出したのか。
今ゴモラは胸元をタイラントのかぎ爪でひっかかれた。その通りに自分の胸も斬られたような痛みが走った。
「まさか知らなかったのか?本気を出して戦ったレイオニクスはよ、怪獣の痛みをその身に味わうのさ。つまり、負けた方は、あの世行き〜」
「なに…?」
グランデの一言に、ジュリオは動揺した。つまりゴモラが万一死ぬことになれば、自分も命を落とすことになる。なんて危険な戦いを
仕掛けてくるのだ。あいつだって死ぬかもしれないのに。
「なにビビってんだよ。それくらいスリルがないと面白くないだろ。ま、安心しなさい。今の俺はただの傭兵。雇い主の言った通りお前を行かして連れて行けばいいんだからよ」
ピン、とグランデはピアスを鳴らした。殺し合いさえ楽しむ戦闘狂。いかにも危険な香りを漂わせている。
「ゴモラ、超振動波!!」
ジュリオの命令通り、ゴモラは頭の角にエネルギーを溜め、それを光線に変えて放出した。
光線がタイラントに迫っていく。だが、危機が迫っているこの状況でグランデは平然としていた。
「タイラント、たっぷり吸ってやれ」
次の瞬間、ジュリオは目を疑った。タイラントの腹に、超振動波が吸い取られていってる。しかもタイラントは全然余裕の様子だ。
以前グレイと戦ったときも、彼のゴルザの光線を余裕で吸収したタイラントを飼いならした男。やはり強かった。放ち終えても、タイラントは全くのノーダメージだった。
「すこーし痛かったが、これくらいじゃあ俺は倒せませんよ〜。タイラント!」
「ギエエエエ!」
タイラントは高らかに吠えながらゴモラに突撃する。ゴモラだけでは不安だ。そう思ったジュリオはバトルナイザーを掲げ、新たに『放電竜エレキング』を呼び寄せた。
「そんな面白い怪獣持ってんならとっとと出しとけよ」
「いけえええええ!!」
手を振りかざすと、エレキングとリトラ、そしてゴモラは共にタイラントに向かって走り出した。
「三体か、ちと分が悪いな。なら…」
グランデは少し危機を感じたのか、バトルナイザーを掲げた。新たに紫色の光のカードが飛び出し、もう一体の怪獣となった。
『どくろ怪獣レッドキング』。
「レッドキング、相手してやれ」
「ギュオオオオオ!」
レッドキングはキングコングのように胸をバタバタ叩き、タイラントに加勢した。

一方、サイトをただ待っているだけではルイズが危険と感じたハルナたち仲間たちは、オストラント号に搭乗、ガリアの首都リュティスの南東の岩山にあると言われた秘密基地へと向かっていた。
もうガリアへ侵攻できる理由もあるため、許可を取って目的地へ進路をとった。
「サイトがまだ帰ってきてないけど、僕たちだけで大丈夫なの?」
マリコルヌは弱気なことを言う。この中でサイトが最も頼れるのだが、肝心の彼無しでガリアに向かって大丈夫なのか?
「何を言ってるの?サイトがいなかったとしても、ルイズを助けることくらいできるはずよ」
喝をいれるようにキュルケが言う。続いてオストラント号を操縦しているコルベールが言った。
「私たちの目的はあくまでミス・ヴァリエールの救出。戦いに向かうのではない。もし怪獣や敵の刺客が来ても全速力で逃げる」
「いつまでもサイトに頼っているだけのままでいるわけにはいかない。私たちだけでもルイズを助ける」
いつもの物静かな声の裏に強い意志を秘めたタバサの言葉に、オストラント号に乗っている仲間たちは、一斉に頷いた。
「じゃあルイズたちは、俺がいない間にガリアにルイズを助けに?」
サイマとの決戦を制し、アクイレイアの隊舎に戻るや否や、サイトはウェールズとアンリエッタからすでにハルナたちが出発したことを聞いた。
「確かにこうしてる間に、ミス・ヴァリエールに万が一のことが起こる可能性があるが、少しことを急ぎ過ぎている気がする」
「おそらく、少しでもあなたに頼らないようにと、思ったのでしょう」
心配そうにウェールズとアンリエッタが言う。
サイトはウルトラマンとしてこの世界に多大に貢献していた。だが彼らもただ強者に頼っているだけの怠け者であり続けるのを拒んだのだ。
「彼女たちもさすがに敵陣で暴れるようなことはないと思うが、僕も行くべきだと思う。サイト君、君は?」
「もちろん、行きます!仲間を放っておいたままにできない!」
サイトがそう強く言うと、ウェールズも同意の意志で頷いた。民を救うのもまた王族の務め、何より以前まだ無力だった自分の命を救った恩人へ少しでも近づくために。
直後、二人は光につつかれて大空へ飛び立った。
「始祖ブリミル…あの殿方たちにあなたのご加護があらんことを」
二人を見送ったアンリエッタは無事を祈って始祖に祈りをささげた。

数時間後、ハルナたちを乗せたオストラント号は、リュティス南東の岩山付近を飛行していた。そこに着いたとき、甲板から見えた景色の中に、とても目立って見えた建物を発見した。空を貫きそうな高い塔に、それを支えているように存在しているドーム。
「見たことない建物ね。屋敷とかお城といったようなものには見えないわ」
建物を傍観してモンモランシーが感想を言った。
「あそこから強いエネルギー反応が多数あります。きっとあそこがサイマの言っていた、秘密基地のはず」
ハルナは機械を使っていないが、肌であの建物から強い気配を感じ取っていた。
「よし、コルベール先生。あの建物から少し離れた場所にオストラント号を降ろしてください」
「うむ、了解した」
ギーシュに言われた通り、コルベールはオストラント号を着陸させ2741
た。
もたもたしてる間にルイズに何が起こるかわからない。すぐ地上に降りてハルナたちは留守をギムリとマリコルヌに任せ、怪しげな建物に接近した。
「ねえ、あれって…」
ふと、レイナールは空に指をさした。空から何か青くて大きなものが飛来してくる。眼鏡をかけていたこともあってか、遠くのものを意図版目視できたタバサが真っ先に呟いた。
「ペン…ドラゴン?」
彼女の言うとおり、ペンドラゴンが自分たちのいる方へ近づいて来ていた。
「くあ…」
ジュリオは気づいた時にはボロボロだった。ゴモラたちも傷つき、もう戦意喪失と言っても過言ではなかった。
ネオバトルナイザーに三体の怪獣たちが戻ると、グランデがあきれ返った顔でこちらに近づいて来た。
「お前に少しでも期待した俺が間抜けだったみたいだなあ。まあいいさ」
彼はジュリオの胸ぐらをつかむと、彼の腹を膝で蹴って、彼の意識を奪い去った。
(く、僕は…こんなところで倒れてるわけには…)
彼が倒れると、グレイやサイマの時と同じように、ガーゴイルが三体ほど降りてきた。
「約束は守るんだろ、シェフィールドさんよ?こいつら拉致ったら『いいもの』をくれるってよ」
ジュリオを抱え、さらに彼のバトルナイザーを没収したガーゴイルたちに、グランデはさっきまで飽き飽きしたような顔から一変して満足げに尋ねていた。
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