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あのアカシックレコードのコピーをガルト星人に見せつけられた時、彼はその記録の意味を信じたくなかった。
あの記録の系統樹はドラゴン、鳥、動物の絵が彫り込まれ、そして一番上に人の形をしたマークが三つ刻まれていた。ひとつは人間、ひとつは耳の尖った人形の種族、そしてもう一つは翼の生えた人間。これはそれぞれ人間、エルフ、翼人を表しているようだ。記録に刻まれた種族のマークは、最終的にその三つの種族に続くよう線で上に続くように結ばれていた。だが、てっぺんの人間・エルフ・翼人から上には線は伸びておらず、途切れてしまっていた。これはその種族の滅びを表している。
代わりに伸びていたのは、まるで途中から割り込んでいた、系統樹に記された動物たちと線で結ばれていない人間が三つの種族の上に伸びていた。
系統樹の途中から現れた別の人間、おそらくこれがルイズたちの祖先に当たるブリミル一族だ。そしてエルフや翼人と同じ高さに位置し、系統樹の正しい系列にいた人間、こっちがヴァリヤーグなのだ。
あの6000年前の世界で、サーシャはまるで別の種族のようにヴァリヤーグのことを呼称していたことをみると、あの時はまだエルフとヴァリヤーグ、そしてブリミル一族はさほど顔なじみでは無かったかもしれない。だが、あの時代で起こった事件で、今の時代にまで響く溝が出来上がった。
ともあれ、これでわかったことがある。
ブリミルはこの星の人間ではなかったということだ。
「……………」
サイトは迷い始めた。ガルト星人にああは言ったが、このまま真実を追求する必要があるのか。
いや、ともあれこの事実を突き止めなくてはならない。目を閉じ、彼はウルトラ念力を利用して大気中に漂うミュー粒子を探知し始めた。目には映らないが、これならきっと見つかるはずだ。
「あっちか」
彼が見た方向、そこはネフテスとガリアの方角だった。
「いや、その前にみんなのところに戻ってみるか。ハルナには特に伝えておかないと」
「サイトはまだ戻らないのか?」
サイトは先日から姿を見せていない。置き手紙さえも残さず姿を消したサイトを探そうと、ルイズ・ハルナ・ギーシュ・キュルケ・モンモランシー・マリコルヌ・ギムリ・レイナール・シエスタが総出で彼を捜索した。
だが、翌日になっても彼を見つけるどころか、彼は戻っても来なかった。
「一体どうして失踪したの?」
彼がこの学院から去る理由になんの覚えもない。ルイズは首をかしげながら考えてみたが、浮かぶはずもなかった。
「まさかメイド、最近サイトが構ってくれないからってどこかに監禁したんじゃないでしょうね?」
ジト目でシエスタを見るルイズだが、それをシエスタは断固否定した。
「私、ミス・ヴァリエールのように非情になれませんよ!!」
「ルイズの乱暴かつわがままな態度に愛想が尽きたとか、ハルナのあまりのアプローチにウザったらしくなったとか」
マリコルヌがわざと笑みを浮かべながらくだらない冗談をいうと、ルイズのパンチとハルナの蹴りが見事にクリーンヒット、見事に吹っ飛んで昏倒した。
「冗談を言ってる場合じゃないわよ。あのサイトがこんな前触れもなく姿を消したからには、何かを掴んだ可能性があるってことじゃないか?」
冷静にレイナールは言う。続いてキュルケが言った。
「でも、あのサイトが掴んだ事ってなんなのかしら?」
「さあ、やっぱりジョゼフに憑依していたっていう、ヤプールっていう奴みたいな宇宙人の隠れ家を見つけた、とか…」
「ならなおさら一人でいくべきじゃないと思うな。あいつは『いつか人間は正しい心を忘れないままウルトラマンに追いつくようになれきゃ、成長は望めない』って訓練の際に言ったことがある。一度放った言葉を簡単に切り捨てるような奴じゃないはずだ」
ギムリがモンモランシーの挙げた仮説を否定した。
「じゃあ、ギムリはサイトがなにを掴んだのかわかるの?」
「いや、そこまではわからないな…」
キュルケに言われ、流石にそこまで浮かんでいなかったことを告げた。
「あれ…?」
ハルナが学院の門から誰かがやってくるのが目に入った。あの黒髪と青と白のパーカー。間違いなくサイトだった。
「平賀君!どこ行ってたの?」
「ご、ごめん。ちょっと隠れて特訓みたいな…」
テへへ、と頭の後ろを掻いて笑うサイト。
「急に居なくなったから心配したじゃない。全く人騒がせな使い魔ね」
ふくれっ面でルイズはサイトを睨んだ。
ふと、サイトが自分の腕に巻いていたビデオシーバーに目を向けた。着信音がなっている。蓋を開いて画面を確認すると、アンリエッタの慌てたような顔が映った。
『みなさん、聞こえますか!?』
「姫様?何かあったんですか?」
『それが、ふくろう便に入った情報によると、二日前にロマリアの方で巨大なゴーレムが現れ、被害が多発したそうです!そこで直ちに聖下は今一度皆さんに集まっていただきたいと!』
巨大なゴーレムがやっと危機から脱したばかりのロマリアに出現、被害が多発していると聞いた彼らは非常に驚いた顔になった。
(まさか…)
嫌な予感がサイトの脳裏に浮かんだ。まさか、ヴァリヤーグが…?

その二日前…。
「ダメです、ボス。グレイと連絡が取れません」
ペンドラゴンでは、ヒュウガたちがグレイと連絡を試みたが、彼からの返信は未だにない。
「一体どこに消えたんだ?それにあの丸い円は…」
クマノがまだグレイからの返信がこないことを伝える。あの円の中にグレイが吸い取られて、時間がだいぶ経つ。どこへ行ったかもわからないため、うかつに整備を終わらせたばかりのペンドラゴンを発進させる事などできない。
「困ったな…」
とオキが頭を悩ませた時だった。バイオセンサーに強大なエネルギー反応が複数探知された。
「この反応…ゴルザのものと同じです!」
「じゃあ、この反応の元にあいつがあるのか!」
「よし、ペンドラゴン発進!グレイを追うぞ!」
「「了解!!」」
ヒュウガの命令でオキとクマノは直ちに操縦席に移動、ペンドラゴンは反応を探知したポイントに急行した。
ロマリアでは、アンリエッタの言うとおり謎の巨大ゴーレムが現れ、アクイレイアの街を荒らしていた。
謎のゴーレムは凄まじく破壊力のある光線で建物を貫き、街を火の海にしていく。
無論街の人たちはそのゴーレムから必死に逃げ出している。『地上人に告ぐ。直ちに隠蔽している証拠を開示せよ。さもなくば、我々は宇宙正義を掲げ、実力を持ってこれを全宇宙に公開する』
電子音でそのゴーレムは、まるで『従わなければ殺す』と脅しているような言葉を発している。すると、そのゴーレムの前に二体の怪獣が空からドズン!と降りてきた。
グレイの超古代怪獣ゴルザと、ジュリオの古代怪獣ゴモラの二体だ。
「約束は守るよね?」
ゴルザの手の平の上から、グレイはゴモラの角に腰掛けているジュリオに視線を向ける。
「僕だって約束を破るほど卑劣じゃないさ」
「あ、そ。じゃあ、行くとしますか」
グレイが気合を入れるようにバトルナイザーを掲げた時、彼の額が紫色に光った。その輝きの元が、あのシェフィールドと同じミョズニトニルンのルーンが刻まれていた。
二人は自分の怪獣の邪魔にならないよう、少し離れた建物の屋上に飛び乗った。
目の前にいるゴーレム、それはゴーレムという次元のものではない。
れっきとしたロボット怪獣だった。
『機械獣スカウトバーサーク』。
「ギギギ…!」
スカウトバーサークがこちらに接近してきた。それをゴルザが正面に蹴りつけたが、お返しにスカウトバーサークがゴルザを蹴り返す。
ジャブを繰り出すゴモラだが、それを受け止め、スカウトバーサークはゴモラを殴り返した。
だが、ここで負けるような二体ではなかった。繰り出されたスカウトバーサークの両腕の攻撃をそれぞれ一本ずつ受け止め、ローリングアタックでスカウトバーサークを突き飛ばした。
体勢を整えたスカウトバーサークは、エネルギー弾を連続発射するが、ここで別の乱入者が参上した。
「ワイバーンミサイル、発射!」
「「了解!」」
ペンドラゴンに乗る、グレイの仲間ZAPクルーたちだ。ヒュウガが怒鳴ると同時に、クマノがトリガースイッチを押すと、ペンドラゴンから無数のミサイルが飛び出してスカウトバーサークのエネルギー弾を相殺した。
「みんな、来てくれたのか…」
仲間たちがこんな場所にまで来てくれたと思ってなかった彼は思わず感激してしまう。
『グレイ、今は戦闘中だろ?感動の再会は後にして、奴を!』
ZAP専用通信デバイス『リサーチシーバー』からヒュウガの声が聞こえてきた。それを聞いたグレイは「了解!」といい、不本意ながらも共に戦っているジュリオに視線を向けた。
「止めだけど、いいよね?」
「無論だよ」
二人はバトルナイザーを掲げて力を込めると、二人のヴィンダールヴとミュズニトニルンのルーンが光り、その力が怪獣たちの方に流れ込んでいく。
「超振動波!」「超音波光線!」
ゴモラとゴルザは同時にスカウトバーサークに向かって必殺光線を発射、スカウトバーサークはモロに光線を受けてしまう、大爆発を起こして機能停止した。
これが二日前に起こったロマリアでの戦いである。
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