短篇

□君の残像に溺れて融解
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“あの男は死にました。”

だから俺が、貴女を慰めて差し上げます。
なんて堂々巡りな巫山戯(ふざけ)た話。

「必ず、戻ってきます。」

そう言った俺の言葉を、貴女は忘れてしまったのですか。
いいや、あの男に誑かされたのだ。
三年間、貴女に会えなかった間に。
時は波乱の世。
戦に出るため、愛しい悠李(ゆうり)に別れを告げた。
必ず帰って来ると。
涙で目を腫らしながらも、手を振ってくれたではないか。

けれど、たったの三年が過ぎただけで。
悠李の隣には、知らない男の姿が。

眩暈頭痛吐き気憎悪憎悪憎悪。

何故、なぜ、どうして。

お前の居場所は、俺の隣だろう。
悠李の目には白い布が巻かれていて。
あぁ、目が見えなくなってしまったのか。
だから、あの男を俺と間違えているのだな。
貴女にこちらを見てもらいたくて、名を呼んだのに、振り向いてはくれなかった。

だから、俺は、そのあと。

悠李の隣にいた男を消したんだ。

男が一人でいる時を見計らった。

知らない、しらない、こんなおとこ。


ゆうりのおとこは、おれただひとりなのだから。


(…悠李…。)

大好きな貴女の手を取る。

(悠李。)

美しい貴女の髪を撫でる。

(ゆうり。)

その手を頬に滑らせ。

(…ゆーりぃ。)

紅い唇に、そっと触れた、


なのに、

ど、うして、

おれはあなたにふれられない、の?


覗き込んだ鏡には自分の姿は何一つとして映らなかった。



「…悠李、大丈夫よ。」

その女の家には、愛しい男が殺されたことを知り、泣くことしか出来ない悠李を慰める友人の姿があった。

「あなたは一人じゃないから。もう泣かないで…?」


(椿一あの男一は死んだのだ、と聞かされた時は)
(頭が真っ白になったけれど。)
(貴方が戻って来た時は夢かと思ったの。)
(なのに、死体が見付かったって。)
(私は一体何を信じればいいのです。)

「戦に出掛けて言ったあの男、やっぱり悠李を騙していたのね。」

あの男が戦に向かって二年経ったある日。
あの男から、死んだと聞かされていた椿は、私の元にやって来た。

そして椿はこう言った。


『あの男が死にました。』



(だから言ったでしょう。)
あの男は死んだのです。
(死ぬべき人だった。)
なんと巫山戯た
(堂々巡りな)
話でしょう。



一一一一一一一
ぬーん。なんだこれは。
補足がないと伝わらない話ですね。

以下補足。
戦に出掛けた男(略:戦男)は、女(悠李)に一目惚れをした。
けれど女(悠李)は椿(のちに死んだことにされる)と相思相愛だった。
戦男はそれを知り、なんとか二人を離させようとし、椿を殺そうと試みる。
だがしかし椿は瀕死の大怪我を負い、結局死には至らなかった。
戦男は悠李と仲良く暮らしていたが、ついに戦男は戦に出陣。
その間に椿は大怪我から復活。
そして悠李に会いに行き感動の再会を果たす。

戦男が鏡に映らなかったのは、椿が殺したのか戦で亡くなったのかは不明。ご想像にお任せします。

補足長ぇ…!
ぬーん。意味わかんない。


素敵なお題をありがとうございます。
水葬

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