創作新選組

□椿
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※言葉遣いが滅茶苦茶。


赤ぁい赤い、椿の花。
艶(あで)やかに赤いその色は芸妓の紅のよう。
冷たい風に煽られ、穏やかに揺れる。

「椿の花は美しゅうどすなぁ。」

彼女の言葉を思い出す。
彼女は酷く赤が似合う女であった。
紅も着物も簪も、全てが真あっ赤。

そんな彼女のために、椿を一輪やったら大層喜んでいた。

「この椿、なんだか鍬次郎さまに似ておられます。」

凛としていて美しゅうところが、えろう似てはりますわ。
ああ、そんなこと、見た目だけで決め付けている。

「次はいつ、お逢い出来るのでっしゃろか。」

また、近い内に。そっけなく答え、彼女に背を向けたのがつい先日。

格子の中でしか生きられない彼女たちは、美しいものだけを手にしていれば良い。

醜い行く末を、見せてはいけない。


知っているかい?
俺は椿の花が大嫌いなんだ。

ぼとりと花が落ちるその姿はまるで首を刎ねられた人間のようで。

生々しい赤は血の色を表しているようで。


「…こんな姿、貴女にだけは見られたくないものよ。」
自嘲気味に笑う。

武士として腹を切ることは許されなかった。



振り上げられた刀にそっと目を伏せた。



ぼとりと赤が落っこちた。
ぐしゃり、と誰かが踏んでった。

誰もたった一輪のその花に、目を向ける者などいなかった。


(人の血で真っ赤に染まった俺は、)
(彼女の言う通り、椿の花にそっくりだ。)


(ああ、椿の花が落ちてしもうた。)
(美しゅうけど、最後は無惨に散っていくんどすなぁ。)

あの方は、まだ来んのやろか。


朱色の格子の中で彼の者を待つ彼女は、落ちた椿の花にそっと触れた。


椿。

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