創作新選組

□いとゆふ
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!死にネタ注意!


「…あっちいなぁ。」

永倉が腕で額の汗をぐいと拭う。

「お前といると温度が高くなるぜ。」
「なんだとこら。」

左之助に言われ、むきになる。

「こんな暑さだ。誰といたって変わんねえよ…。」
「まぁ、俺が新八といたいだけなんだけどな。」
ぼそり、左之が呟く。
「嬉しいこと言ってくれるじゃねえか!」

がはは、と笑う。が。
それにしても、暑い。

「あ、二人ともここにいたのかぁ。」
「平助ぇ!」
縁側からひょっこりと顔を出した藤堂。

「西瓜があるんだってよ!一緒に食おうぜ!」

そう言って、にっこりと笑いながら二人の手を引く。

そして、皆と一緒に西瓜を食った。

冷たくて、甘くて、それはもう最高だった。
だって皆がいたから。

近藤さんに土方さんに伊東さん。
山南さんに総司に斎藤に、源さんに谷さんに左之と平助。
他にも、松原に武田に鈴木。
幹部たちが集まって、そりゃもう楽しかったさ。

けれど今はどうだ。


だんだんと、皆がいなくなって。


近藤さんたちの意見と合わなくなったから、

新選組を離隊して、

左之と一緒に靖兵隊(せいへいたい)を作って。


一緒に笑いあってた頃が酷く懐かしいと思う。


俺と左之と平助の三人で騒いでる時が一番楽しかったかも知れねぇなぁ。

一緒に酒を飲むと、左之はすぐ腹躍りを始めるし一文字傷の自慢話でうるせえし。

平助は泣き上戸だからなぁ。酒が入ると直ぐ泣くんだよ、あいつ。


一一ぐらあり、ぐらり。


俺も酔ってんのかなぁ。
揺れて揺れて仕方がねぇや。

おまけに視界がぼやけてきた。
おかげでおめえらの顔が、よく見えねぇ。


ゆうらり、ゆらり。
ゆらゆら、ゆらあり。

ひとりひとり、消えていく。
ひとつひとつ、大切なものが。

ゆらゆらと揺れる視界。
糸遊(いとゆう)のように、色のない炎が地面の上でゆれ動く。
どんどんとゆれ動き、ぼうっとする。

あぁ、やけに暑いなぁ。
額を伝う、汗を、拭う。


『お前といると温度が高くなるぜ。』

そう言って、笑うお前がいる。

『まぁ、俺が新八といたいだけなんだけどな。』

笑いかけてくる、大切な、俺の仲間。

走馬灯のように駆け抜けた、俺たちの時間。

あぁ、楽しかったなぁ。

目の前にいる左之に笑いかけて、俺は呟く。

一一今、そっちに行くからよ。一一


ゆうらり、ゆらり。


炎のようにゆらめくそれは、俺の大切な思い出たち。

そっと、目を閉じた。


恐怖なんて感じない。
だってまた、皆に逢えるんだからなぁ。



いとゆふ。

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