創作新選組

□袋小路
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周りはいつの間にか真っ暗で。

握った刀は、ずっしりと酷く重く感じた。

月明かりに照らされて見えるのは、倒れて真っ赤な液体を出している痩せこけた塊。


  貴方が殺したんですよ?
違う、違う。
  だってその証拠に、ほら。
そんな、はずがない。
だって、僕の刀には、血がついていないもの。
  じゃあ、誰が殺したというの?
僕じゃない、僕じゃあないんだ。


ぐるぐるぐると視界が回り、気持ちが悪い。


僕は人を斬った?
これで、いいの?
あってるの?
  駄々をこねるのはやめなさい。


頭の奥から聞こえてくる、酷い耳鳴り。

うっ、と声を上げ、口を手で塞ぐ。

「血の匂いに当てられたのか。」

振り向くと、浅葱色の羽織を羽織った土方さん。

「何も気にするこたァねぇよ。…これがお前の姿なんだからよォ。」

そう呟いて、塊を刀でつつく土方さんの顔は、にぃと笑っていて。

ごろり、と塊が動いた。

ぎょろり、と目玉がこちらを向いた。


「うわあああああああああ」


がばり、と起き上がる。

辺りを見渡すと、さっきと同じで暗かった。

「総司、気がついたか。」

酷くうなされていたんだぜ、 そういって心配そうに僕の顔を覗き込む土方さん。
その表情は、先程の顔とは全く違っていて安堵した。

あれは、夢か。

「あの、僕は一体…」
「池田屋で倒れたんだ。…覚えてねぇか?」

あぁ、そう言えば。

嫌な夢が頭を過った。
あの塊は、僕が殺した人間なんかじゃなくって。

僕だったのだ。


本当に、これで良いのだろうか。
人を斬り続けることの恐怖。


耳の奥で、くすり、と笑った声がした。


僕は、どうすれば良いのだろう。


代償、地の果てまで。
決して逃げられぬ袋小路。
あぁ、なんと馬鹿馬鹿しい御伽草子だろうか!


袋小路。

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